新型コロナ抑制に先んじるベトナム政府…不動産業界への影響は

世界的に猛威を振るっている新型コロナウイルスですが、ベトナムは2003年のSARS流行時の教訓を生かし、うまくコントロールしています。敏速なベトナム政府の対応とともに、ベトナムの不動産業界の今後の動向について、独自調査を交えながら分析・考察します。本記事では、現地で不動産ビジネスを展開する筆者が、加速度的に発展するベトナムの現況とともに、ベトナム不動産市場の見通しを解説します。

ウイルス抑制に俊敏なベトナム政府…SARS制圧を教訓

アメリカやヨーロッパ諸国をはじめ、日本にも深刻な影響を及ぼしている新型コロナウイルスですが、ベトナムをはじめとする東南アジアも大きな影響を受けています。観光や飲食業界はもちろん、不動産業界も例外ではありません。今回は、新型コロナウイルスの蔓延へのベトナム政府の対応のほか、ベトナム不動産市場が受ける影響と今後の見通しをレポートします。

 

まずはベトナム政府の新型コロナウイルスへの対応から見ていきましょう。ベトナム保健省の発表によれば,4月16日現在におけるベトナム国内での新型コロナウイルスの陽性事例は計268名(うち177名は完治退院)、死亡者0名と徹底した検査と隔離を行っており、多いときは7万人強を施設や自宅で強制的に隔離しました。

 

さらにベトナム政府は、4月1日より全国で15日間の社会的隔離措置を取り、同措置の実施以降、新規感染者は減少傾向にあり、フック首相は、15日までの実施を予定していた同措置について、35省を除く大都市部(ハノイ市・ホーチミン市)を含む28省・市に対し更に4月22日まで延長することを決定しました。

 

ベトナム政府の新型コロナウイルスへの対応は早く、旧正月明けの2月初旬には中国、香港、マカオからの中国人および14日以内にこの地域に渡航あるいは経由した外国人の入国も制限しました。空港では入国時に体温チェックを行い、発熱がある場合の入国を拒否するなど、厳しい検疫も行っています。その後、随時感染拡大国を入国制限処置に加えて、3月22日からはすべての外国人の入国拒否を行い(特別の許可がなければ入国できない)、国内では上記の通り社会的隔離措置を実施しています。

 

いまのところ、ベトナムの新型コロナウイルス対応は上手く行っています。ただ、諸外国の状況を見れば一国だけでの問題ではなく、長期的な対応になるということは容易に想像できます。恐らくベトナム政府は、規制をかけたり緩めたりを繰り返しながら経済活動を進めて行くと思われ、評価すべき対応だといえるでしょう。

 

では、なぜベトナム政府はこのような迅速な動きが取れたのでしょうか。それは、2003年のSARSの流行において、院内感染で多くの医療従事者を失った苦い経験があるからです。そのため、未知のウイルスに関しての教訓が現在に生きています。ちなみに、SARSの感染拡大を最も早く制圧したのもベトナムです。

 

もうひとつは、自国や他国の経験を取り入れて実施し、上手くかみ合わない場合はその都度柔軟に変更し、常にアップデートして行くという政府の姿勢があります。法律の急な変更等、戸惑うことも多いのですが、前向きに捉えるならば、よい方向に進めようとの意思が伝わってきます。これは、ほかの政策においても同じことがいえます。しっかりと将来を予測したうえでの対応が、速度は遅いものの、安定的な国の発展の持続を支えています。

 

新型コロナへの対応、ベトナム政府の動きは極めて俊敏だ
ベトナム政府の新型コロナウイルスへの対応は極めて俊敏

旧正月明けに新型コロナの影響が重なり、市場が低迷

ただ、経済的には痛手が続いています。もともとベトナムは、テト(旧正月)明けは市場の動きが悪い時期です。そこに新型コロナウイルスの影響が及び、現在まで低迷が続いています。国内での幅広い業種が社会隔離措置によってやむなく休業を要請され、大きな影響を受けています。とくに観光、飲食含むサービス業等々への影響は深刻です。不動産関連に至っては、ホテル運営やAirbnb事業が大打撃を受けています。

 

以降、すでに影響が出ている不動産事業に関して、これまでの動きを見ながら解説していきましょう。

 

 すでに影響が出ている事業(当社独自調査) 

 

●ホテル運営、Airbnb事業

正式な統計はまだですが、2019年外国人の入国者数は1800万人強に達するなど順調に推移しており、2020年も2050万人を計画していました。しかし、2月初旬の中国からの入国制限や、3月22日からの全外国人の入国制限により、事実上入国停止状態が続いています。なかでも、前年入国者割合が30%と多い中国からの入国を早々に打ち出したことで、早くからホテルやAirbnbは休業を余儀なくされており、甚大な影響を受けています。

 

●賃貸仲介事業

4月に入り、退居と賃料値下が始まっています。事業所の閉鎖・停止による外国人とAirbnb業者の途中退居は増加中(5軒/48軒)です。家賃値引要請として、2ヵ月限定値引10%~15%(7軒/48軒)あり。賃貸の問合せ2月~4月現在で8軒(通常平均30軒/月)あり。

 

●販売仲介事業

新規販売物件の売出活動低下、様子見傾向が強い(ベトナム人・外国人とも)。2月中旬から、ベトナム人からの転売物件(権利売り)、土地建物売出しが増加中。昨年12月時とくらべると、4月現在で10%~30%程度の下落。4月に入り、外国人からの物件転売依頼3件(原価近い物件もあり)。投売り物件狙いによる物件購入希望の問合せ増加中であり、4月に入りすでに6件となっています。

 

●建築工事の遅延

新型コロナウイルスの影響により、ワーカー不足(田舎に留まり都市部に戻らず)が発生。現時点で当初納期より2~4ヵ月の遅れが発生。

状況を読みつつ慎重に探せば、割安物件も可能性あり

国内の回復は早いと思われますが、海外からの入国規制が解除されるまでは、まだまだ影響が続くと思われます。賃貸物件はもちろんですが、販売(転売)物件も増えてくると見ています。状況を読みながらではありますが、転売物件(権利売りや中古)で割安物件が出てくる可能性もあるので、タイミングよく購入できればお得だといえるでしょう。

 

ベトナムは社会主義国ではあるものの、上述したように、自国や他国の経験を柔軟に取り入れながら安定的な成長を遂げてきました。そして今後もその姿勢を保ち続けると思われます。世界的な猛威を振るう新型コロナウイルスではありますが、ベトナムは、自国の被害を最小限にすべく努力しつつ、収束後はすぐに立ち上がれるよう準備をしているのではないでしょうか。筆者はこれまで同様、ベトナムはさまざまな苦難を乗り越えながら発展して行くと予想しています。そして、安定的な国の成長にともなって不動産価値も上がっていくとみています。ベトナムは本当に強い国です。

 

VINA COMPASS Co., Ltd. General Director

沖縄県宮古島生まれ。久留米工業大学を卒業後、トヨタグループ系列の株式会社アイチコーポレーション入社。特殊車両メーカーの営業部門で16年勤務。
2004年、商談で訪れたベトナムホーチミンに魅了され、独立起業、単身にて渡越。 2006年、取引先の製薬会社と合弁で排水処理会社を設立。
国営事業であるホーチミン市病院排水処理事業の入札業者として認証を受け、在籍中235ヶ所の病院排水処理を手掛ける。2012年、合弁会社の株を売却。新たに浄排水処理会社としてSHINY VIETNAM社、不動産・建築会社としてSHINY REAL社を設立。現地企業やベトナム政府事業の実績を活かし、越人コミュニティに入り、浄排水処理事業を手掛ける傍ら、日系大手への環境コンサル支援や、現地最大手の不動産デベロッパー、VINHOMESの日系唯一の販売代理店としてCentral Parkプロジェクトの販売を手掛けた。2018年、SHINY社、合弁解消後、新たに独資でVINA COMPASS社を設立。不動産販売仲介、賃貸仲介、管理運営、内装工事、進出支援コンサル業を手掛ける。特に進出時の事業許可、会社設立時のリスクヘッジ関連を得意としている。

VINA COMPASS社ウェブサイト:http://www.vinacompass.com/

著者紹介

連載ASEAN諸国で最も熱いベトナム――現地から探る不動産投資と事業の可能性

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