今回は、2020年のホーチミン不動産市況を展望します。本記事では、現地で不動産ビジネスを展開する筆者が、加速度的に発展するベトナムの現況とともに、ベトナム不動産市場の見通しを解説します。

高成長を維持する見込みだが、一方で不安定要素も

アジアのなかでもとくに勢いのあるベトナムですが、今回は、2020年のホーチミン不動産市況を展望していきます。

 

2019年のベトナムの経済は、前年同様、高い成長を続けています。GDP成長率は7.0%と、前年の7.1%に続き高成長を維持しています。

 

 

JETROビジネス短信によると、ベトナム政府は2019年11月11日付けで、2020年の主要な社会・経済目標の12項目を定めた「2020年社会・経済発展計画」(国会決議85/2019/QH14、11月11日付)を公表しました。GDP成長率目標は6.8%、消費者物価指数(CPI)上昇率目標は4%未満など、2019年の目標とほぼ同水準での設定となりました(図表1参照)。

 

(出所)日本貿易振興機構(ジェトロ) 「2019年および2020年の社会・経済発展計画の国会決議」http://www.vinacompass.com/  https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/12/4eba0ba7c8e05783.html
[図表1]主要な社会・経済発展目標12項目の推移 (出所)日本貿易振興機構(ジェトロ)
「2019年および2020年の社会・経済発展計画の国会決議」

 

同じく、2020年1月14日のJETROビジネス短信によると、ベトナム2019年最新経済成長率は7.0%となり、四半期別の成長率は、第1四半期6.8%、第2四半期6.7%、第3四半期7.5%、第4四半期(推計値)7.0%。産業別では、農林水産業が2.0%(前年比1.8ポイント減)、鉱工業・建設業が前年と同じ8.9%、サービス業が7.3%(0.3ポイント増)となり、上記の2019年のGDP成長率目標値を上回る結果となりました(図表2参照)。

 

(単位:%)  (注)2019年は推計値  (出所)ベトナム統計総局
[図表2]実質GDP成長率と消費者物価指数(CPI)上昇率の推移 (単位:%)
(注)2019年は推計値
(出所)ベトナム統計総局

 

2020年のベトナム経済は、2019年と同等の推移となると予想されていますが、製造業の伸率の鈍化や、豚コレラ、世界経済の不安定要素もあり、自信を持った目標値とはいいがたいように見受けられます。

戸建て・土地の取引に移行する傾向が継続

では、2020年のホーチミン不動産市場はどんな動きになりそうか、予測を行っていきたいと思います。2020年末の総括時にどのくらい予想が的中しているか不安はありますが、現地の空気感を、感じたままお伝えしていきましょう。

 

本連載でもたびたび説明している通り、ベトナムでは外国人(外資企業)による物件購入に条件があり、購入できる物件も限られています。外国人が購入できるのは、主にコンドミニアムですが、そのなかでも外国人販売許可済みのプロジェクトで、なおかつ外国人販売枠は棟の30%までしかありません。そのことから筆者は、外国人の購入条件が変わらない限り、「ベトナム人に人気のない物件」は自動的に「投資には向かない物件」になると判断しています。

 

2019年12月の記事『ベトナムの景気好調とは裏腹…2019年のホーチミン不動産市況』でも述べたように、ホーチミン市の不動産市場は、好調な経済状況下においても物件のタイプによる棲み分けが進んでおり、コンドミニアムより戸建てや土地の取引に移行する傾向が見られます。この動きは2020年にはもっと顕著になるものと予想しています。

 

2018、19年はホーチミン市の規制もあり、コンドミニアムの新規プロジェクト販売許可申請許可の鈍化や、建築中の物件検査などが原因で工事等に遅れが出て、新規供給戸数は約2万8,000戸(予想値)と減少しました。

 

なかでもLuxury(超高級物件)、HigH-end(高級物件)は減少し、Mid-end(中級物件)は増加しました。販売戸数にも約3万戸(予想値)となり、こちらもLuxury、HigH-endは減少し、Mid-endは増加しました。このことから、ベトナム人向けの中級物件に移行していることがわかります。

 

物件の販売価格に関しては、中心地では販売価格が高騰、現在1区及び周辺隣接区では物件の売出価格が1平方メートル当たり3,000米ドル(約33万円)~1万3,000米ドル(約143万円)と高騰しており、ベトナム人投資家からもさすがに上がり過ぎたとの声が多く上がり、当面は市場が落ち着くまで小休止になると推測されます。

 

今後のベトナム人購入者の動きですが、1区及び周辺隣接区での購入者は限られてくるでしょう。以前は転売目的で販売価格の30%まで支払い権利転売を行う購入者も多かったのですが、現在は転売物件も動きが悪い状況であり、余剰資金がない権利転売者は減少しています。

 

一方、住居目的での購入者はMETRO(都市鉄道)沿いや、まだ価格が安めである郊外の戸建や土地の購入へとシフトしています。購入の傾向として、ベトナム人はどちらかというと、コンドミニアムより戸建を好む傾向にありますが、ホーチミン市内の戸建や土地が高騰しているため、販売価格と比較して、コンドミニアムのMid-end以下などを購入するケースが増えてきました。

この1年は、販売価格や将来性等を焦らず吟味すべき

2020年のホーチミン市の不動産状況は、前年と比べて新規での供給戸数は増えると予測しますが、土地価格や建築資材、地盤工事などで販売価格は上昇しています。需要と供給のバランスが少し崩れているなか、在庫を抱える業者も増えてくると予想します。政府が新たに規制緩和し、外国人販売枠を現在の棟の30%から50%に増やすといった対策があれば別ですが、このままでは、デベロッパーもベトナム人投資者も自ずと淘汰され、ホーチミン市以外でのプロジェクトなどに移る可能性もあります。

 

近年の日本を含む海外での不動産セミナーなどは、現地とかけ離れた内容が多く、はずれ物件を掴まされるケースも多く見られます。経済成長が続いているベトナムですが、勧められた物件が期待通りにならない場合も多くあります。後悔しないためにも、必ず現地を視察して自分の目で確認し、現地で購入後の出口戦略までしっかり立てましょう。そこから購入を決断しても決して遅くありません。急かされて焦る必要はないのです。

 

経済が発展成長して行くなかでは致し方ないことではありますが、ベトナムで不動産投資を行うつもりなら、この1年は落ち着いて物件を吟味し、販売価格や立地の見立て(将来性)等を含め、じっくり自分の目で見定めるつもりで取り組むことをお勧めします。

 

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