「出ていけ!」と言われます…賃貸マンション騒音クレームの怪

不動産投資において、最大のリスクは「空室」ではなく「家賃滞納」であるといっても過言ではありません。本記事では、株式会社CFネッツ代表取締役兼CFネッツグループ最高責任者・倉橋隆行氏監修の書籍『賃貸トラブル解決のプロと弁護士がこっそり教える賃貸トラブル解決の手続と方法』(プラチナ出版)より一部を抜粋・編集し、実例とともに「賃貸トラブル」の予防策や解決法を具体的に解説します。

「近隣から『出ていけ』と言われている」

最近、非常に多くなってきたのが騒音に関するトラブルです。

 

【入居後のトラブル①】

これはファミリータイプの分譲マンションの一室から、「近隣から『出ていけ』と言われている」という電話があり、電話で事情を聞いてるだけではよくわからないので現場に行きました。

 

その方は60代の男性で、部屋はすごくきれいに使っていますし、1人で住んでいるので生活音など苦情を言われるような方ではありませんでした。

 

「隣の部屋から何か書面かなにかでそうやって言われているんですか?」と聞くと、

「いや、そういうのじゃなくて、部屋にいると聞こえるんですよ」

「何が聞こえるんですか?」

「『出ていけ』って言われるのが」

「どこから聞こえるんですか?」

「隣の部屋から」

「…」

 

そんなもの、聞こえないだろうと思ったのですが、この方の奥様が実は何年か前に交通事故でお亡くなりになられていて、それから精神的に少し病んでいたようでした。少し被害妄想のような言動が増えて来ていて、多分、そういう声が聞こえてくるのだと思い込んでいたみたいです。

 

その時は、話だけ聞いて帰ってきたのですが、その後、何度も電話をかけて来てはエスカレートしてきており、このままでは自殺でもしかねないと判断し、根気よく話を聞きながら、

 

「隣の人も悪気があって言っているのではないみたいだから、仕方がないので新しい部屋を探しましょう」などとなだめて、引っ越しを促しました。

 

実際に、このようなケースは増えて来ていて、毎年、部屋で自殺する人も多くなってきています。我々としてみれば、部屋で自殺されるとオーナーに迷惑がかかるわけですから、なるべく穏便に退去を促す方法を考えます。このような人に対して強硬に出たところで良いことはありません。また立ち退き交渉をすれば、かなりの費用がかかります。場合によっては、引っ越し費用を当社でもってでも引っ越してもらうということもあるのですが、この人の場合、自分で病院にも行っているし、薬も飲んで症状がそんなに悪くはなっていなかったようでしたので、

 

「じゃ、今度、一緒に部屋を探しましょう」という話をし、物件資料を用意して届けました。

 

何度も物件資料を届けるうち、本人が物件を見つけて出て行ってくれました。この処理で1年半くらいかかり大変でしたが、彼の幻聴は続いてましたし、彼自身も悩んでの相談でしたので「そんなものは聞こえない」とか、「そんな言いがかりを言うのはよしなさい」というような対応だと、さらに病気は悪化し、悪い方向に向かうしかありません。今回は、親身に相談にのりながら、彼の悩みを解消するには、その環境を変えるしかないと思いまいしたので、自らの意思で退去してもらったのです。

 

「上の階がうるさい。寝てると電磁波があてられる」

【入居後のトラブル②】

これもファミリータイプの分譲マンションでのトラブルです。その入居者の息子さんが、

 

「上の階の人がうるさい。寝ていると電磁波があてられる」と言う苦情。電磁波は上の階の人からはあてられないと思いますが、これは精神的な疾患によるもので、不安定になると苦情の電話を入れてきます。もちろん親もわかっており、私が訪問すると平謝りで謝ります。

 

しかたがないので、この息子さんからの苦情は聞くだけ聞いて電話を切るようにしていました。結局、頻度が高まり、その息子さんは施設に入ることになり電話が来なくなりましたが、それまでの間、根気よく話を聞き続けました。私も子どもがおり、その親の気持ちはわかりましたから、平謝りに謝る親御さんを怒るようなことはできませんでした。

 

この仕事をしていると、さまざまなことに出くわしますが、この二つの事例では、よく話を聞いてあげ、誰も傷つけるなく解決した事例です。

 

さて、騒音トラブルというのは、次の二つのパターンがあります。

 

1 実際にうるさいパターン

2 精神的なトラブルを抱えたパターン

 

実際にうるさいパターンというのは、友だちなどを呼んで騒いでしまったというような場合は、注意すれば直りますし、あまりひどい状態の場合は、警察を呼んで対処すれば解決ができます。ところが精神的なトラブルを抱えての騒音による苦情というと、なかなか解決に時間がかかります。

 

よく「隣の家がうるさいんです」などと言ってくる人の90%以上が、その人に原因があるといわれています。したがって、このようなクレームが入った時には、まず、その人が何か精神的なトラブルを抱えているのではないかと疑ってみることにしています。まず詳細な話を聞きながら、精神的に病んでいないかどうかを確認します。どのような時に「うるさい」のか、時間的にはいつごろなのかを聞きながら、まずは「次にうるさいときに連絡をください」というように、いきなり隣近所に注意をしに行くことは避けます。こちらも事実関係が確認できないと注意はできません、というような言い方で一度、持ち帰ります。そして連絡が入り、本当にうるさいときには状況を確認して注意します。

 

また、一度、夜中に若者が騒いでいて注意しても直らなかったこともあります。とにかくいつも夜中なので、近隣住民の人たちも困り果てていて、管理している当社に「何とかしろ」と苦情を言ってきたケースがあります。このような場合は、その近隣の人たちに協力してもらって契約の解除をするしかありません。何月何日の何時何分ごろ、このような迷惑行為があったというメモを取ってもらうのと同時に、警察に通報してもらいます。これを何度も繰り返した結果、直らない場合は内容証明郵便で上記に事情を詳細に書いて、この行為は信頼関係の破壊であるとし、契約解除通知を出して建物明渡請求訴訟を申し立てることになります。

 

裁判の場合、疎明主義といって証拠を明らかにしないと契約解除が認められません。そのためには、このように根気よく、証拠を集める作業も必要となります。

 

また、このような場合、苦情の矛先が自分になってしまうケースがありますので、注意が必要です。たとえば、「あなたの会社が管理している物件なのだから何とかしろ」とか、「こんな入居者を入れたのはおたくの会社なのだから責任をとれ」とか言われる場合があります。その場合は、当社が迷惑をかけているのではなく、あくまでも加害者に責任があるということを伝え、法的手続を取って退去してもらうには、皆さんの協力が必要なのだということを伝えるようにします。

 

これは「協力しなければ解決ができない」といっているのと同じなので、だいたいの人は協力してくれることになります。すると敵は当社ではなく、あくまでも加害者であるという意思が統一できますので、無駄なトラブルに巻き込まれなくて済むようになります。

賃料の滞納者は覚せい剤常習者だった!?

一つ事例を紹介します。

 

やはりファミリータイプのマンションの一室で、オーナーチェンジで管理を引き継いだ物件でしたが、当初より変わった人が住んでいました。賃料もしばしば遅延するし、夜中に大声で怒鳴ったりするようで、隣近所から、いつも苦情が絶えませんでした。

 

この人は繁華街のスナックに勤める40代の女性で、帰宅するのは朝方の4時前後、だいたい休みが水曜日ということだったので、水曜日の夜10時ころに訪問するといることが多く、毎週のように夜中の騒音と賃料の督促を行っていました。

 

担当者がその都度注意をしにいくと、すぐに謝って低姿勢になるので、なかなか契約解除することができませんでした。こちらとしてみれば近所迷惑でもあるし、なるべく出ていってもらいたいのですが、出ていってもらう交渉をしても、なかなか応じてくれませんでした。

 

ところがそうこうしているうちに、だんだん様子がおかしくなってきて、「滞納家賃の取立てにいく」と大声で騒ぐようになり、手が付けられない状態になってしまいました。これは直感的に怪しいと思い、警察に通報しました。すると、案の定、覚せい剤常習者だったようです。

 

この物件はオーナーチェンジで引き継いだ物件ですから、契約書の内容は原則的に従来のものを継承することになります。その条文の中には近隣に迷惑となる行為は禁止事項に書かれてはいるものの、一般的にこれを証明することは難しく、これだけでは契約解除は認められにくいのです。そこで、しばしば賃料の滞納をしていましたので、わざと催告はせずにしばらく放置することにしました。

 

その間も夜中に騒いだりして近隣からの苦情はありましたが、その騒ぐことだけを注意して3ヵ月以上の賃料の滞納を待ちました。

 

結局、この作戦が功を奏しました。内偵捜査を進めていた警察によって、その部屋に強制捜査が行われ、その入居者は逮捕、身柄を拘置所に移されました。こうなるとこちらとしては、手続は進めやすくなります。拘置所の場合、内容証明郵便は必ず受けとってくれるし、夜逃げされることもありません。拘置所の住所で内容証明郵便で契約解除の通知を出し、延滞賃料の支払いと建物明渡しの訴訟を起こしました。

 

結局、その入居者は裁判には出頭せず、裁判官に事情を説明したところ、1週間で契約解除を認める判決を出してくれ、結局、強制執行により建物の明け渡しをしてもらいました。

株式会社CFネッツ代表取締役
兼CFネッツグループ最高責任者 

1958年生まれ。株式会社CFネッツ代表取締役兼CFネッツグループ最高責任者であり、グループ企業18社を率いる現役の実業家。20社を超える起業に携わり、複数の事業再生案件も成功させている。また、自ら渡米して国際ライセンスのCPM(Certified Property Manager)を日本人で初めて取得しており、現IREM‐JAPANの創生に携わり、2002年の会長に就任している。また、1995年には日本で初めてPMマニュアルを出版、プロパティマネジメントの近代化に取り組んでいるPM業界の第一人者でもある。

著者紹介

株式会社CFネッツ
プロパティマネジメント事業部マネージャー 

神奈川県横須賀市出身。専門学校卒業後、IT企業にSEとして6年間勤務。その後、横浜市にある不動産会社にて17年間勤務。2011年8月CFネッツに入社。不動産業界でも経験は20年を超え、特に投資用不動産の資産管理を得意としている。中でも的確なバリューアップ(資産価値向上)提案・空室対策は、多数の投資家オーナーより絶大な支持を得ている。プロパティマネジメント事業部マネージャーとして日々業務に従事し、社員の育成にも力を発揮している。

著者紹介

有限会社シー・エフ・ビル
マネジメントリーダー 

大学卒業後、不動産会社へ入社。分譲マンション販売営業に携わる。その後、賃貸仲介営業を経て、賃貸管理業務に興味を抱き、2011年4月、CFネッツへ入社。CFネッツの管理部門である、シー・エフ・ビルマネジメントでリーダーを務める。保有資格:貸金業務取扱主任者、職業紹介責任者、宅地建物取引士、ビジネス実務与信管理検定。

著者紹介

連載管理会社のプロが実例で教える「賃貸トラブル」の解決ノウハウ

賃貸トラブル解決のプロと弁護士がこっそり教える賃貸トラブル解決の手続と方法

賃貸トラブル解決のプロと弁護士がこっそり教える賃貸トラブル解決の手続と方法

倉橋 隆行 上町 洋 片岡 雄介 世戸 孝司

プラチナ出版

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