物件の周辺環境の変化、急な修繕、家賃滞納など数々のリスクが潜む不動産投資。資産形成の手段として注目が集まっているものの、事前にリアルな失敗パターンを知ることは必要不可欠です。そこで本記事では、多くの個人投資家にコンサルティングを行い、不動産投資の方法を提案する、株式会社カクセイの平山智浩氏・渡辺章好氏の共著『失敗例から学ぶ 儲かる不動産投資の極意』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、不動産投資の実態を紹介します。

横浜市「坂の上の高台」に物件を購入した事例

【隣地との間の擁壁造り替えに莫大なコスト】

 

神奈川県横浜市の坂の上の高台に上っていく途中に立つ物件を購入しました。まだ築十数年ですが、隣地との間に高低差があり、土砂崩れを防ぐための擁壁1があります。この擁壁は新築時のものではなく、もっと古いもののようです。

 

※1 擁壁(ようへき)・・・崖や盛り土の側面が崩れ落ちるのを防ぐために築く壁を「擁壁」と呼ぶ。建築基準法では高さが2メートルを超える擁壁を造る際には、確認申請を出すことが義務付けられている。

 

何十年もの間、その擁壁を使っており、近隣では、新築の家を古い擁壁の上に建てたりもしています。業者さんの話では、擁壁の造り替えには多額のコストがかかるため、職人の中には表面だけキレイにする技を使うという人もいます。擁壁が崩れたら賠償責任があるのか、そのためにも擁壁を造り直すべきか悩んでいます。

 

坂の町「横浜」
坂の町「横浜」

 

◆高低差のある土地は、地形・ハザードマップで確認を!

 

私たちも相談を受けたことがありますが、横浜といえば坂が多く、高低差のある地形が特徴的です。そのため東京であれば3000万円してもおかしくないような土地が、数百万で買えることもあります。

 

その分、擁壁の問題が多く、買ってから後悔する人もいます。新築当時には建築基準法の許可が下りていた擁壁が、今の法律に照らし合わせると許可が下りないという場合もあり、万が一そうなると多額のコストが必要です。やはり擁壁はリスクが高いのです。

 

擁壁に関しては物件資料に明記されているでしょうし、役所に行けば、地図や、より詳しい図面などで調べることができます。安い物件ならではの注意点です。仮に売買時の重要事項説明書などで、擁壁に関する説明や資料が不足していたということになれば、潜在的なリスクが見えていない可能性もあります、慎重に調査をして、問題が見つかれば、対処方法を考えるべきでしょう。

 

これが地震に関していえば、日本全国すべてが対象エリアとなり、もうなす術がありません。災害は不動産最大のリスクとなり、地震以外ではゲリラ豪雨などの被害があります。これに対する策は、地形を調べること、各行政が出しているハザードマップを確認することです。市役所に電話をして住所を言えば、これまで災害の被害にあっていないか確認することもできます。

 

とにかく情報を一通り集めた上で、投資を行うべきかやめるべきかの判断を行います。やはりバランスの問題で、総合的に東京であれば負えるリスクと、地方であれば負ってはいけないリスクがあるわけです。

 

例えば、東京は2011年の東日本大震災の後、海に近いタワーマンションの人気がなくなりましたが、しかし東京オリンピック開催が決まってからは値段が高騰しています。背景にはアベノミクスや外国人投資家の台頭もありますが、時代の流れ・情報の流れの速さを感じます。ある意味で陳腐化する速度も速く、ぽっと生まれて、ぽっと消えていきます。

 

同じく震災時には千葉県の浦安市では液状化から地盤沈下が起こり問題化しましたが、それでも今は安く売り出されていません。

 

そのような液状化の被害のこともすっかり忘れられています。良いことにしても悪いことにしても、首都圏では風化する速度が速いのが特徴です。これが地方で何か起これば、簡単に地価は取り戻せません。所有物件で起こる孤独死など「告知事項」についても、都会であればあるほど情報の風化は早いです。

法人の経営が悪化…「契約解除」「全室退去」の地獄

【法人一括借り上げの社宅で一斉退去されてしまった】

 

3年前に法人の需要が見込める某地方都市の工業団地のそばにアパートを購入しました。法人が一括借り上げしており、満室で家賃の価格も高いのが決め手となりました。昨年、契約の更新があり安心していたのですが、その会社の経営状態が思わしくないということで、契約解除になってしまいました。一括借り上げなので一斉退去となり、一気に全室が空室となってしまい非常に困っています。

 

◆一社、一校しか需要がないエリアはNG

 

リーマンショックの少し前のタイミング、2006年や2007年に不動産ミニバブルが起きたとき、東京の物件は価格が高いということで、神奈川県の某市内に一棟マンションを買った投資家がいます。郊外とはいえ、駅前の好立地ということで、しばらく入居は問題なかったそうです。

 

しかし、リーマンショックでこの某市に拠点を持っていたIT企業が倒産してしまい、1000人規模の解雇がありました。あっという間に駅前の賃貸需要が落ち込みました。仕方なく家賃を大幅に下げて、入居募集を行ったそうです。

 

このように社宅需要だったエリアが急変することは、これまで何度も起こっています。この投資家は、アベノミクスの効果で市況が良くなるタイミングで売却をしました。値段が上がりむしろ売却益が出て、結果として投資は成功でした。

 

所有時の利回りが予定通り得られなかったとしても、損をせずに売れたので、また一棟物件を別に買うかと思いきや、その人は「もう一棟モノには懲りたから……」と、今度は都心のワンルームマンションを区分で地道に買うスタイルに変更しました。

 

当時、その投資家が購入したのは1億円前後のRC造マンションです。その他に木造の一棟アパートも持っていたのですが、すべて処分して、区分マンションに買い替えています。

 

先ほどのエリアの話に戻ると、大きい拠点の恩恵に預かっているエリアは避けたほうがいいでしょう。東京であれば大企業ばかりでなく、中小企業などさまざまな需要が多くあります。

 

しかし、特定の企業や大学など、その一社、その一校しかない場合の需要は危険です。首都圏の郊外には大学のキャンパスがいくつかあり、それぞれの地域で「学生のアパート需要が見込める!」と言われます。しかし、たかだか大学一校の人数など、都心の普通の駅の利用者からすれば大した数ではありません。

 

その駅周辺の物件がそれだけでもっているのは逆に危ないことです。少子化で大学でさえ、いつ撤退、廃校になるかわからないご時世なのです。

 

同じく企業城下町もリスクといえます。一昔前に九州の方でシャープの工場が撤退したこともありましたし、三重県の亀山工場の例もあります。「シャープの社員が何万人も働いているから安心!」といっても、そこに提携している企業の派遣会社も多くいましたから、今では工場の周りに建てたマンションは閑古鳥が鳴いています。

 

地方で生計を立ててきた開発業者や行政もいろいろ工夫をして、工場誘致を行っていますが、誘致された工場が未来永劫その地で稼働するのかといえば、なんの保証もありません。ご存じのように生産拠点を海外に移したメーカーはたくさんあります。

 

こうした企業の撤退などで被害を受けたのは、多くは農業を主に行ってきて不動産投資にはまったく経験のない地主が、アパートメーカーの巧みな営業トークを鵜呑みにして決断してしまったケースでしょう。

 

投資家には関係ない……そう思われるかもしれませんが、地主が大量に新築を供給すれば相場は崩れ、少ない入居者を奪い合う結果となります。家賃の値下げ合戦、入居条件の緩和競争にもなれば、お互いが疲弊するだけです。

 

しかも大手アパートメーカーのビジネスモデルは拡大志向しかないため、止まることが許されません。九州の某市では、単身向けのハウスメーカーのアパートが乱立した結果、行政による建築確認の指導が入るようになりました。そのように完全に供給過剰に陥っているエリアで投資を行うのはかなり厳しいと判断します。

 

かつてリーマンショック後に「派遣切り」が大きな社会問題となりました。派遣を切られて住むところ働くところを失った非正規労働者がクローズアップされていましたが、その陰には派遣社員に一斉退去されたアパート・マンションが無数にあったはずです。

 

「○○があるから大丈夫!」という謳い文句があるときは、疑う気持ちを持ったほうがいいでしょう。工場がなくても大学がなくても、入居者のいる地域を選ぶことが重要です。また、需給バランスの崩れは、すべての物件タイプに起こっているとは限りません。

 

例えば、大学に依存して供給過多になってしまった地域では、単身者向け物件は余って家賃の価格破壊が起こっていますが、社会人の単身者でゆったり住める部屋、カップルで住める部屋は圧倒的に少ないそうです。そのため30〜40平米の部屋はすぐに満室になっているという話もあります。

失敗例から学ぶ 儲かる不動産投資の極意

失敗例から学ぶ 儲かる不動産投資の極意

平山 智浩・渡辺 章好

幻冬舎メディアコンサルティング

物件の周辺環境の変化、急な修繕、家賃滞納など数々のリスクが潜む不動産投資において、事前にそのリアルな失敗パターンを知ることが不可欠です。多くの個人投資家にコンサルティングを行い、それぞれに合った不動産投資の方法…

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