人口減少の局面になり、厳しさが増す不動産投資。今後、どこが投資エリアとして有望なのか。不動産投資には欠かせない要素である「人口」や「不動産取引の現状」などをもとに、検討していく。今回紹介するのは、京浜東北線「川口」駅。

大型商業施設閉店…「川口」で進む再開発は転換期!?

先日、住宅ローン専門会社による「本当に住みやすい街大賞2020」が発表され、第1位にJR京浜東北線「川口」が選ばれた。審査は、住環境、交通利便、教育環境、発展性、コストパフォーマンスの5項目を5段階で評価するというもので、「川口」は、発展性「5」、住環境「4」、交通の利便性「4」、コストパフォーマンス「4」、教育環境「4」だった。

 

なぜ「川口」が「住みやすい街」なのか。評価のポイントとして、以下の5つを挙げている。

 

・再開発が進行中で、今後さらなる街の発展が期待できる

・都心に近いわりに、地価や物件価格がリーズナブル

・都内主要地に乗り換えなしでアクセス可能。バス便も豊富で交通至便

・公園が点在し、ファミリー層が楽しめる住環境

・駅周辺に商業施設が充実

 

このように、居住地として高評価の「川口」だが、投資対象としてはどうなのだろうか。人口動態や不動産取引の状況などから、その可能性について考えてみよう。

 

まず「川口」がどのような街なんか、見ていこう。「川口」駅のある川口市は埼玉県の南端に位置し、荒川を隔てて東京都に接する。川口市が誕生したのは1933年のことで、埼玉県下では川越市についで2番目の市制施行だった。人口は2009年に50万人を突破。埼玉県下ではさいたま市に次いで人口の多い市となっている。

 

川口市役所によると、川口の由来は、旧入間川(現在の荒川)の河口に臨んでいたから、だという。つまり、荒川の河口はその昔、現在の川口付近だったということだ。南北朝時代から室町時代初期に成立したといわれている『義経記』には、治承4 年(1180)、源義経が兄頼朝の挙兵に加わるため、奥州から鎌倉に向かう途中、武蔵国足立郡小川口で兵をあらためたと記されるなど、川口という名称は意外と古い。

 

江戸時代には、日光街道が南北に走り、現在の本町一丁目付近に川口宿がおかれた。川口市の地場産業として鋳物は有名で、戦前には、単独の市で鋳物生産量の日本一を達成している。しかし戦後は東京のベッドタウンとして宅地化が急速に進み、鋳物工場は郊外へと移転。その跡地に、多くの高層マンションが建てられた。

 

そんな川口市の中心となるのが、「川口」駅だ。JR京浜東北線だけが停車する駅で、通勤時間帯の8時台だと「東京」までは30分強、品川まで45分ほどで乗り換えなしでリーチできる。1日の乗車人数は84,531人(2018年)で、埼玉県下では「大宮」、「浦和」に次ぐ規模である。

 

「川口」駅東口エリアには、「そごう川口店」や再開発ビル「キュポ・ラ」、「かわぐちキャスティ」など商業施設が集積。「樹モール」という愛称で親しまれている「川口銀座商店街」は、駅から徒歩2~3分という立地ながら、庶民的な雰囲気が漂う商店街だ。また駅から北へ徒歩10分ほどのところには、サッポロビール埼玉工場の跡地を利用した商業施設「アリオ川口」があり、多くの買い物客でにぎわう。

 

一方、駅西口は、高層マンションが点在する住宅地。駅前の「川口西公園」、通称「リリアパーク」は駅前とは思えないほど緑豊かな公園で、市民の憩いの場になっている。また駅周辺は、「マルエツ」「西友」「オーケー」「業務スーパー」など、大手の格安スーパーが充実しているので、最寄り品の買い物に便利だ。

 

50万都市でありながら、ベッドタウンとしての要素が強い「川口」駅前には、適度に商業施設が集積し、適度にマンションが点在する。ちょうどいいバランスが、「住みやすい」と評価される所以だろうか。

 

そんな「川口」はひとつの転換期を迎えようとしている。長らく、市民に愛されてきた「そごう川口店」が2021年2月に閉店することになったのだ。跡地利用については関係者の間で協議が進められている最中で、まだ具体的には決まっていない。一方「川口銀座商店街」の東側では再開発が決まり、商店街の核店舗となっている「イトーヨーカドー・ザ・プライス川口店」は閉店。2022年に商業施設やオフィスを併設する、29階建てのタワーマンションが誕生する予定だ。

 

再開発が進む「川口」だが、その流れはさらに加速しそうな気配だ。再開発への期待は大きいが、その間、賑わいの核となっていたさまざまな大手チェーン店が閉鎖されることになる。地域間の競争が激しさを増すなか、「川口」が今のポジションを維持できるのか、今後の課題となる。

 

川口駅より東口方面を望む
「川口」駅より東口方面を望む
「川口」駅西口ロータリー
「川口」駅西口ロータリー
荒川から川口市内を望む
荒川から川口市内を望む

再開発で「新規物件の供給」も「人口増加」も続く

「川口」を不動産投資の観点から見ていこう。まず直近の国勢調査によると(図表1)、「川口」駅のある埼玉県川口市の人口は、約57万人。人口増加率は、埼玉県全体で1%なのに対し3.0%と高い水準を示している。年齢構成(図表2)をみてみると、埼玉県の平均と比べて、高齢化率が低く、15歳未満の子どもや、現役世代の比率が高い。特に大規模な再開発が進む「川口」駅周辺では、近年、タワーマンションが増加していることから、ファミリー層の流入が続いていると推測される。

 

出所:平成27年度「国勢調査」より
[図表1]川口市の人口動態 出所:平成27年度「国勢調査」より
出所:平成27年「国勢調査」より
[図表2]川口市の年齢別人口の割合 出所:平成27年「国勢調査」より

 

次に世帯数(図表3)を見ていこう。川口は東京のベッドタウン的要素が強く、東京都心と比較すると15%程度、単身者比率は低い。一方で、埼玉県全体の平均と比較すると単身者比率は高く、東京に隣接し、都心までダイレクトにリーチできるという地の利から、単身者にも選ばれていると考えられる。

 

出所:平成27年「国勢調査」より
[図表3]川口市の世帯数 出所:平成27年「国勢調査」より

 

次に住宅事情を見ていくと、川口市の賃貸住宅における空室率(図表4)は8.2%と、埼玉県全体の平均よりも高い。これは、再開発によりマンション供給が盛んであるがため、空室率が上がっていると考えられる。これは賃貸住宅の建設年の分布(図表5)を見ると明らかで、「川口」駅周辺でマンション開発が盛んになった2000年代に、川口市の賃貸住宅の供給量は高まっている。一方で、築40~50年の賃貸住宅が多いのも、川口市の特徴だ。今後、これらの物件の建替え需要が高まると考えられ、さらにファミリー層を惹きつけることになるだろう。

 

出所:総務省統計局 平成25年「住宅・土地統計調査」より
[図表4]川口市の住宅事情 出所:総務省統計局 平成25年「住宅・土地統計調査」より
出所:総務省統計局 平成25年「住宅・土地統計調査
[図表5]川口市における賃貸物件の築年数の分布 出所:総務省統計局 平成25年「住宅・土地統計調査

 

つづいて、駅周辺に絞って見ていこう。川口市全体では1世帯あたりの人数が2.35人に対して、「川口」駅周辺では1.96人(図表6)と、市内の他エリアと比べても、単身者比率の高いエリアである。

 

出所:平成27年度「国勢調査」より
[図表6]「川口」駅周辺の人口動態 出所:平成27年度「国勢調査」より

 

「川口」駅10分圏内の1K、1DKの平均家賃は、5.9万円。隣駅で都内である「赤羽」は6.99万円。1万円も家賃が安くなるなら…と、「川口」駅周辺で物件を探す単身者層は多いのではないだろうか(平均家賃はいずれも、公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会調べ12月17日時点)。

 

続いて直近の中古マンションの取引から、駅周辺の不動産マーケットの状況を見てみる(図表7)。平均取引価格は2,761円で、平均平米数は58.8㎡と、家族向けのマンションの取り引きの多いエリアである。この地域で不動産投資を考えるなら、ファミリー層を狙い、長く住んでもらえる物件かどうかを見極めることが、安定した賃貸経営の鍵となるだろう。

 

出所:国土交通省 「土地情報総合システム」より作成
[図表7]「川口」駅周辺の中古マンションの取引状況 出所:国土交通省 「土地情報総合システム」より作成

 

川口市の将来人口の推計を見ていこう。国立社会保障・人口問題研究所の推測(図表8)では、2030年596,282人をピークに、人口減少が始まると推測されている。2015年を100とすると、2030年は103、2040年は102という水準なので、将来的にも、安定した賃貸経営がかなうエリアだといえる。

 

出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)」
[図表8]川口市の将来推計人口 出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)」

 

さらに「川口」駅周辺の将来人口推移をメッシュ分析で見ていく(図表9)。黄色~橙で10%以上、緑~黄緑0~10%の人口増加率を表し、青系色で人口減少を表すが、全体的に暖色系、つまり人口増加が見込まれる地域であると予測されている。駅周辺で再開発が進み、その流れは加速度を増している。新規物件の供給が活発になることから、今後も、安定した人口増加が期待されているのだろう。

 

出所:RESASより作成
[図表9]2015年~2040年「川口」エリアの人口増減率 出所:RESASより作成

洪水も、地震も…災害リスクの高い「川口」

このように、「本当に住みやすい街」である「川口」は、再開発の進行により新規物件の供給が進み、今後も安定的な賃貸需要が見込めることからも、投資対象として魅力的なエリアだといえるだろう。

 

しかし、投資対象として考える際、災害リスクを考えることは避けられない。「川口」の場合、駅から南に1kmほどで荒川だ。どうしても、洪水リスクが気になるところだろう。そこで、川口市が発行するハザードマップをチェックしてみる。

 

川口市付近で荒川が氾濫した際、「川口」駅周辺は3~5mの浸水が予測されている。また今年、武蔵小杉や二子玉川の浸水で話題になった「内水氾濫」に対しても、川口市では注意を呼び掛けている。実際、過去の内水氾濫歴を見てみると、駅周辺でも、台風や集中豪雨の際に、床下、床上浸水の被害が報告されている。

 

また東京湾近郊でマグニチュード7クラスの地震が発生した際、市の南部ほど揺れは大きく、「川口」駅周辺は震度6強と想定されている。建物被害予測マップでは駅周辺は建物の倒壊が20~40%、液状化の危険度は「高い」~「極めて高い」となっている。

 

このように、「川口」駅周辺は、決して災害に強いとはいえないエリアである。もちろん災害大国日本では、全国どこでも、災害リスクは付きものだ。自身がどれほどのリスクを許容できるか、十分に考慮して、投資を検討したい。

 

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