不動産投資では、物件の購入ばかりに意識が集中し、不動産管理・運営におけるコストを軽視してしまうケースが多く、思わぬ出費で頭を抱えるオーナーも少なくありません。本記事では株式会社SRコーポレーションで不動産コンサルティングを行う高澤啓氏が、賃貸経営で発生する「突発的な出費」について解説します。

頭金以外にかかる「初期コスト」には

不動産投資を始める前は、イニシャルコスト(頭金)のことばかり考えがちで、「頭金0円」で始められるといった謳い文句に乗っかってしまい、不動産投資をしてから「こんなに出費がかかると思ってなかった」といった声をよく聞きます。

 

もちろん販売した業者の説明不足もあるでしょう。しかし、知っておくべき知識として、投資に発生の可能性のある出費は把握しておくべきです。

 

では、はじめに、購入後すぐの話をしましょう。通常融資を利用して不動産投資を始めた場合は、家賃の入金より先にローンの支払いが発生する場合もあります。

 

これはいつのタイミングで所有権が移転したかによって変わるケースも多く、家賃の振込日がいつ締めでいつ入金なのか、そしてローンの初回の支払日がいつなのか、このあたりにタイムラグが発生することが多く、不動産投資を始めてすぐにお金の流れが掴めないでいる投資家の方が多くいます。

 

金融機関や物件引渡タイミングによっては日割り計算の結果、シミュレーションで提示された支払い金額よりも多く引き落としされることもあります。

 

万が一口座にローン支払い分が足りなかった場合は、ローンが引き落としされずに、個人信用情報に傷がついてしまう可能性もあります。

 

こんなことが起きてしまっては、資産形成どころか、個人信用情報に傷をつけかねない状況になってしまいます。

 

そうならないためにも、投資用不動産を契約する前に、物件引き渡し後のお金の流れを事前に確認すること、ローン支払い用の口座には多めにお金を入れておくこと(目安としては家賃2ヵ月分)の2点を覚えておきましょう。

 

つづいては、購入後半年から請求がくる「不動産取得税」です。 これは不動産投資が流れに乗り始めて、投資家が忘れたころにやってくるため、注意が必要です。

 

「不動産取得税」とはどういった税なのかというと、文字通り、「不動産を取得した方にかかる税金」のことです。これは売買で購入した方だけではなく、相続や贈与で不動産を取得した方にも発生します。さらにいうと、すぐに転売して手放したとしても発生します。登記した以上は、必ず発生するので、覚えておきましょう。

 

不動産取得税については細かい計算式や軽減措置などがありますが、原則としては下記計算式にて算出することができます。

 

固定資産税評価額×税率(通常4%)=不動産取得税

※2021年3月31日までは税率は3%

 

また不動産取得税は地方税であり、地域によってルールが異なる場合があります。 おおよそ半年後くらいに納付書が届くと覚えておくと良いでしょう。

 

さらに毎年かかる税金として、「固定資産税」も忘れてはなりません。こちらも地方税のため、管轄によって多少異なりますが、毎年3月ごろに納付書が届き、分割なら4月・7月・12月・2月に分納することができます。

 

突然のコスト発生に、万全を期して
突然のコスト発生に、万全を期して

意外な落とし穴!?「空室」でもコストが発生する

賃貸経営で、空室が発生すると、家賃が入ってこなくてもローンの支払いは発生します。また、空室の間でも区分マンションの場合は「管理費」「修繕積立金」は発生します。

 

余談ですが、よく「管理費って入居者が払うものじゃないのですか?」と質問を受けますが、オーナーが支払う「建物管理費」と入居者が支払う「管理費(共益費)」は大きな違いがあります。入居者が支払う管理費は、あくまでも家賃の一部であり、家賃を安く見せる意味でも使える管理費(共益費)と呼ばれるものです。

 

たとえば、A家賃72,000円(管理費0円)の部屋と、B家賃69,000円(管理費3,000円)の部屋が同時に募集していた場合、Bの部屋の方がネットで賃貸検索する際に家賃6万円台からヒットしやすくなるため、こういった手法を使う賃貸会社は多く存在します。

 

トータルの支払いは変わらないのに、Bのほうがお得に感じますし、多くの目に触れます。賃貸募集のテクニックの一つですが、実際には、敷金礼金などはこの管理費を含めないため、入居者にとってもBのほうがありがたい話になるでしょう。

 

話を戻して、ここでいう「管理費」は建物管理費のことで、管理組合に支払うものなので、空室であっても、入居者がいても支払う必要性があります。「ローンの支払い+管理費・修繕積立金」が空室時には発生するので覚えておきましょう。

 

オーナーとしてできる対策は、「空室の起きやすい物件を買わない(駅から10分以上、内装設備が古すぎる物件など)」こと、「空室時の保証がある会社を選び、空室になっても耐えうる資金を準備(目安は半年分) 」ことなどが挙げられます。

「室内設備」と「共有設備」でかかるコスト

最後に室内設備や、共有設備などにかかるコストです。まず室内設備に関しては、入居者に過失のある破損以外は、基本的にはオーナー負担です。代表的な室内設備について見てみましょう。

 

※2019年7月現在の相場目安であり、正確な数字ではありません
[図表1]主な室内設備編の交換期間目安と費用 2019年7月現在の相場目安

 

ここで重要なことは、おおよそ15年前後でほとんどの設備が寿命を迎えるということです。特に中古物件を購入したオーナーは、室内設備を細かく見ておく必要があるでしょう。

 

また区分ではなく一棟マンション、一棟アパートのオーナーは、これが同時に何部屋も起こりうる費用であることを念頭に置かないといけません。総戸数10戸以上の場合は交換費用や修繕費用が数百万円になる場合もあります。

 

次に共有設備ですが、区分所有マンションの場合は管理組合に修繕積立金を支払っているから関係ないと思い込んでいるオーナーもいるのではないでしょうか。修繕計画通りいけば、ある程度突発的な出費は避けられますが、急な修繕積立金の増額もあるので、注意が必要です。[図表2]は一棟物件の主な共有設備の出費です。

 

※はRC造のマンションを想定。こ数字は2019年7月現在の相場目安
[図表2]一棟物件の主な共有設備の従前時期の目安とコスト ※はRC造のマンションを想定。こ数字は2019年7月現在の相場目安

 

廊下や階段はむき出しのアパートのほうが修繕期間目安は早くなる可能性もあります。 共有設備でも、おおよそ15年前後で寿命が来るものが多くあります。一棟物件のオーナーは特に、15年後を見据えて、最初から準備をしておく必要があるのです。

 

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本連載は、株式会社エワルエージェントが運営するウェブサイト「Estate Luv(エステートラブ)」の記事を転載・再編集したものです。今回の転載記事はこちら

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