ECB新総裁がデジタル通貨に言及

欧州中央銀行（ECB）が、中央銀行が発行するデジタル通貨（CBDC）の可能性を独自に調査していくことが分かった。新たに同銀総裁に就任したChristine Lagarde氏が、総裁として初めて臨んだ欧州議会の公聴会で明かした。

Lagarde氏は、前任していた国連の専門機関IMF（国際通貨基金）の理事の時から、暗号資産やブロックチェーンに好意的な姿勢を示している人物でもある。

公聴会では、お金の未来を語るなかで、新たな技術の導入に言及。リスクに注意を払い、コストやメリットを綿密に分析しなくてはならないと語った。暗号資産のステーブルコインが、大衆のニーズや需要の変化を知らせてくれたと話している。

フェイスブック主導の暗号資産リブラを暗示していると思われるが、こういった新たな技術は、現在の決済システムを混乱させる可能性があり、金融政策や経済の安定性に影響を及ぼし、欧州だけでなくグローバルな問題に発展する可能性があると指摘した。

Lagarde氏はECBの過去の取り組みとして、昨年ローンチした「TIPS」という即時決済システムを例に挙げた。即時決済を望む声に応えたシステムだが、これまで銀行等の金融機関は積極的に採用していない。

また、2016年12月にECBが日本銀行と立ち上げた、分散型台帳技術（DLT）の金融市場インフラへの応用可能性に関する共同調査プロジェクト「プロジェクト・ステラ（Project Stella）」にも言及。変化を促進するには、リスクの見極めや管理を行わなくてはならないと説明し、「ステーブルコインを初めとする技術革新は、効果的な規制や監督を通したリスク管理ができて初めて利用することができる」と、技術の発展と規制のバランスがとれたルールの策定を重要視する姿勢を示した。

ECBの最終的な目標は、より安全で技術力が高く、統一された決済手段をユーロで実現することだという。このことが、ユーロを使う全ての人々に恩恵をもたらし、ユーロの世界的な地位を高めることにつながると語っている。

参考資料：Christine Lagarde: Hearing of the Committee on Economic and Monetary Affairs of the European Parliament

※本記事は、2019年12月4日に「CoinPost」で公開されたものです。