契約期間「50年」もの「定期借地権」…評価なんて出せるの?

借地権の一種、「定期借地権」についてご存じでしょうか。文字通り、契約期間が定められた借地権であり、その後の更新はできない制度のことを指します。定期借地権の評価について、様々な議論が交わされています。そこで本記事では、不動産投資アドバイザーでCFPファイナンシャルプランナーの大林弘道氏の著書、『儲ける不動産ビジネス 7つの新規事業アイディア』より一部を抜粋し、投資をはじめとした不動産ビジネスをめぐる課題を解決するための具体的なアイデアを提案していきます。

定期借地権の適正額の算定は難しい

定期借地権設定の権利金相当(50年分地代一括前払いの金額)の適正額はどのくらいと考えるべきでしょうか。

 

普通借地権の地代の場合には、路線価図に借地権割合の記載がありますし、年額の地代が、固定資産税の3倍であるとか、更地価格×期待利回りで求められた額が適当であるといった目安があります。また、税務上「相当の地代」を更地価格の6%としていることを援用して、ある程度のレンジで求められると思われます。

 

一方、定期借地権の場合には算定が難しくなります。事業用定期借地権の場合は、期間が10年、20年と比較的短いことや、借地上建物の想定運用益を期待利回りなどで割戻すことにより、ある程度の指針が出てくると思われますが、一般定期借地権の場合は期間が50年と超長期にわたるため、自宅用の宅地となると運用益の考え方を用いにくいのです。

 

定期所有権が提起された際は、所有権の5割程度が適当な価格とされていましたが、その計算においては国債利回りが4%であるとして計算されており、現在とは異なる環境にありました。

 

これに限らず、50年におよぶ期間、地代を現在価値に割戻すなど大変に複雑な作業となってしまいます。ちなみにこれまでの定期借地権においては、保証金形式となっていることが多く、その価格は更地価格の15~20%になっています。これについては保証金の他に、地代の設定が別途あることや、保証金自体が敷金のような性格を有しているために、事例として採用するのはあまり適当ではないでしょう。

 

総合すると、一般定期借地権の権利金相当(50年分の地代一括前払いの金額)についての価格算定は、マーケットの需給から個別にアプローチするのが適当と考えられます。ちなみに定期借地権付マンションでは通常の所有権マンションにくらべ、7割程度(建物含み)の価格設定にして、割安感を持たせることで定期借地権のデメリットを上回るように考えられているようです。「リースホールド住宅」における価格設定も近傍類地の宅地価格、新築戸建価格とのバランスで個別に設定していくことを考えています(関連記事『法律が変わっていた!? 昔と比べて「コンビニ」が広くなったワケ』参照)。

「定期借地権付マンション」の活用アイデア

このように定期借地権の評価については議論が尽くされているとは言えません。定期借地権付マンションにおいて、今後中古マンションとしての取引が増えていくようだと、残存年数とローン評価の相関など指針が必要となってくるでしょう。今後の不動産業界の課題となっていくと考えますが、「リースホールド住宅」事業が、先行者として価格設定ノウハウを蓄積し、宅地における定期借地権価格のマーケットメイクに影響をあたえるようなところまで活性化できれば、社会的にも意味が出てきます。

 

ところで、同じ視点で考えると「リースホールド住宅」を希望するエンドユーザーが、その取得にあたってローンの利用を検討する場合でも、金融機関の評価が得られにくいと思われます。そこで土地(利用)に対する対価、つまり50年分の地代については、「リースホールド住宅」事業者がブリッジファイナンスをすることを考えています。

 

形式としては、事業者が定期借地権の借地人となり土地所有者に権利金相当(50年分の地代一括前払い金)を支払い、リースホールド住宅を購入することになるエンドユーザーには転・定期借地権として、月払い(または年払い)の地代を支払ってもらうことになります。この際、毎年の地代は50分の1ずつではなく、50分の1プラスアルファで設定し、土地を介した金融として差益を事業の収入としていきます。

 

事業者はハウスメーカーがいいと思っています。「リースホールド住宅」を建設するメーカーが、自社の住宅の販促として定期借地を活用するのが事業の性格としてフィットしますし、先述のブリッジファイナンスができる資金力も兼ね備えているからです。

敷地全体を借地権者全員の「準共有」とするメリット

ゲーテッド住宅とか、セキュリティタウンという言葉があります。一戸建てはマンションに比べて防犯上の懸念があり、これを解決するために一団の分譲住宅地の周囲を高い塀などで囲み、ゲートを設けることで住民以外の出入りを制限して防犯性を高めた住宅地を指します。

 

これを行うためには一定の管理者を配置することが必要となり、その管理費は各戸が按分して負担することになります。国外ではよく見られますが、日本で採用されるとすると、高級分譲住宅地か、敷地が広大で道路や川などで隔離しやすい立地で採用されるのが一般的と言えるでしょう。

 

ところで、広めの土地で事業者が「リースホールド住宅」分譲企画をする場合、「コーポラティブ型土地購入」のように、住戸ごとに敷地を区割りする必要があるのですが、それは必ずしも建築基準法とリンクしていなくてもいいため、区割り方法の自由度が高まることになります。土地所有権の戸建であれば、これを売却するときには、物理的にも独立した土地区画である必要があるし、それが建築基準法の規定を満たしていなければなりません。

 

一方「リースホールド住宅」であれば、分譲する土地の敷地全体を、借地権者全員の準共有としておけば、個々人の不動産資産は、「建物所有権+土地借地権の持分」とすることが可能となるのです。いずれ土地を地主に返還する定期借地権であるからこそできる態様であると考えています。

 

例えば、戸建住宅では必ず駐車場が必要となり、その配置のために区画形状が相当に制限されることになります。建築基準法で定めた敷地の接道義務(2mであることが多い)を満たしながらこれを行うことになるので、どうしても旗竿型の土地が生まれ、その路地状部分が駐車スペースとなります。

 

住宅としての「顔」だけでなく、日常生活でも使い勝手が悪くなる旗竿型の土地は資産評価も落ちてしまいます。建物4棟のミニプロジェクトであれば、まだ収まりのよい区画レイアウトが可能になりますが、それ以上の棟数になると開発道路と言われる道路を築造し、宅地開発をしなければなりません。開発道路は通常、6m以上の幅員が必要となり、敷地が削られてしまいますし、上下水道などの敷設コストも発生します。

 

これが「リースホールド住宅」において、土地は借地権の準共有という形をとるのであれば、駐車スペースだけ切り出して道路側に配置することや、各戸個別の接道義務(2m)も必要なくなるので、自由な区画レイアウトにできる可能性が増えるのです(避難経路や安全条例など、一定の制限があるため、行政との協議は必要と思われます)。

 

駐車場だけではなく、コモンスペースとして分譲住宅購入者のコミュニティ利用の場所、シンボルツリーを配した広場を区画の中央につくれば、各戸、プライバシーに配慮しながらも、採光、通風のとれたレイアウトが可能になるのです。

 

その一環として、分譲地のゲートをつくるのはどうでしょう。ゲートは門である必要はなく、四季の植栽がゆたかなエントランスを考えています。ゆとりがあれば、車寄せを兼ねた駐車場も分譲地のフロントに寄せます。

 

ミニプロジェクトの分譲戸建は、売却が終わってしまうと、その販売事業者も基本的に関与がなくなってしまいますが、「リースホールド住宅」においては、土地は転・定期借地権であり、地代の収受が必要になることから、販売事業者は土地の管理をしていくことになります。これらコモンスペースの管理業務や、セキュリティ業務も併せて行うことは自然であり、収益機会にもなっていくのです。

 

[図表]区画割の自由度が高まる「リースホールド住宅」
[図表]区画割の自由度が高まる「リースホールド住宅」

スター・マイカ・アセット・パートナーズ株式会社代表
不動産投資アドバイザー
CFPファイナンシャルプランナー 

1967年生まれ、岐阜県出身。慶應義塾大学商学部卒業後、三井不動産グループや三菱地所グループを経て、現在はスター・マイカ・アセット・パートナーズ株式会社の代表を務める。不動産仲介や新築分譲戸建ての販売、リフォーム営業、オフィスや商業施設の管理運営、複合施設の開業コンサルに従事。不動産全般にかかわる多様な知識と経験をもつ。宅地建物取引士、ビル経営管理士など多数の資格を持つ。前著に『金融視点で考えるハイブリッド不動産投資法』『節税・年金・相続を考える人のディフェンシブ不動産投資』『資産運用・節税・相続のための新・不動産投資メソッド「じぶんリート®」』(いずれも幻冬舎ルネッサンス刊)がある。

著者紹介

連載新時代を切り開くビジネスアイデアとは? 儲かる「不動産投資」講座

本記事は、筆者の個人的な解釈、見解を踏まえて書かれたもので、情報提供を目的としたものです。各種法規、税制に照らして検証されたものではなく、記載の内容と実際とが異なる場合もございます。筆者ならびに当社関係各社は、これにより生じた損害について一切の責任を負いかねますのでご了承下さいますようお願い申し上げます。

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大林 弘道

幻冬舎

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