本記事では、不動産投資アドバイザーでCFPファイナンシャルプランナーの大林弘道氏の著書、『儲ける不動産ビジネス 7つの新規事業アイディア』より一部を抜粋し、投資をはじめとした不動産ビジネスをめぐる課題を解決するための具体的なアイデアを提案していきます。

「特定空き家」は行政による取壊しが可能となったが…

以前から空き家の増加が社会問題となっています。賃貸用の物件で入居者が見つからない場合の空室も問題になっていますが、誰も住んでいないという意味での空き家が相当あるのです。

 

中には、管理者、所有者と連絡が取れないまま放置され、倒壊や火災の恐れがあるもの(特定空き家)も見られます。特定空き家は、行政による取壊しが可能となりましたが、多額の費用負担が生じる話でもあり、現実的にはそこまでの対応がとられるケースはまだ多くありません。数もそれほど多くはないでしょう。

 

それよりも「特定空き家」予備軍とも言っていい空き家が相当多数控えていると考えられます。

 

たとえば実家を相続したものの老朽化がひどく、自ら使うことも、貸すこともできないといった物件が数多くあるのです。所有者としても、空き家といえども、家屋が存在していれば、居住用物件としての固定資産税の減免(6分の1程度)が受けられるのですが、取壊してしまうと更地となり、固定資産税が上がるというデメリットが生じてしまいます。

 

取壊し費用そのものの負担も小さくなく、どうしても放置してしまうことになります。少子高齢化と都心集中の社会構造においては、今後しっかり取り組まなければならないテーマと言えるでしょう。

 

少し踏み込んだ話となりますが、「リースホールド住宅」を行政で取り組むことで、空き家問題の解消につながらないでしょうか。空き家の敷地に定期借地権を設定、50年分の地代を土地所有者に一括前払いするのです(関連記事『契約期間「50年」もの「定期借地権」…評価なんて出せるの?』参照)。

 

空き家として放置されている土地なので、地代総額は抑えられた金額となることが前提ですが、土地所有者には一定額の経済的利益が舞い込んできます。更地渡しを条件にすることで、古屋の解体費用は土地所有者に負担していただきますが、その原資は一括受取地代となりますので、経済的な持ち出しは発生しません。固定資産税も同様です(行政の取り組みなので固定資産税の計算においては特別な措置を講じることも検討に値します)。

死んでいた不動産に新たな息吹を与えるアイデアとは?

では、ニーズがあるとは言えない空き家の立地に「リースホールド住宅」を建設した場合の活用方法ですが、公営住宅(都営住宅、県営住宅、市営住宅)の代替となるアパートを設営することをイメージしています。

 

世帯年収が低いことが入居の条件となっている、公的サポートの意味合いが強い公営住宅ですが、築後40年以上経過した物件も多く、設備も老朽化した物件には誰も住みたくありません。

 

年金生活の老齢者が公営住宅への入居を検討する場合がありますが、エレベーター無し5階建ての物件はそもそも適当ではありません。もっとも、老朽化した公営住宅は順次リニューアル工事を進めているようですが、多額の費用をかけても入居の応募がないものもあり、費用対効果については疑問が残ります。

 

そんな既存の公営住宅の代わりに、「公的リースホールド住宅」を供給していくことを検討します。建物に関しては極力費用を抑えたいところですが、今は設置、移動に優れたユニットハウスがたくさんあります。ユニットハウスは連結部の可変性に優れ、間取り変更や2階建てへの転用も容易に対応できる製品があります。移動もトレーラーにより、簡単に行えます。

 

何より、空き家の敷地として、死んでいた不動産に新たな息吹が与えられ、これをもとに消費活動が生じることは、エリア経済のカンフル剤にもなるでしょう。面積や道路付けによっては保育園、ケアホームといった福利厚生施設との併用も考えられるのです。

 

一方、既存の公営住宅は敷地が広く、かつ、ゆとりをもって建てられているものがほとんどです。駐車場にいたっては平置きがほとんどで、遊具を備えたミニ公園などがあるくらいです。公的扶助であることを勘案したとしても、その一画地から行政が得られる収入を考えると、有効活用されているとは言いにくい状況です。限られた土地資産が寝ているのです。

 

公的サポートが必要な市民には、老朽化した現在の公営住宅から、住環境と設備にすぐれた「公的リースホールド住宅」を用意し、移ってもらいます。既存の公営住宅は取り壊し、新たに生まれる一団の土地を、行政として活用するほうがよほど有効です。

 

例えばマンション用地として最適であろう公営住宅の敷地は、仮にデベロッパーへ売却するとすれば、地方財政を潤すことができる収入になるとイメージできるのです。

本記事は、筆者の個人的な解釈、見解を踏まえて書かれたもので、情報提供を目的としたものです。各種法規、税制に照らして検証されたものではなく、記載の内容と実際とが異なる場合もございます。筆者ならびに当社関係各社は、これにより生じた損害について一切の責任を負いかねますのでご了承下さいますようお願い申し上げます。

儲ける不動産ビジネス 7つの新規事業アイデア

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大林 弘道

幻冬舎

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