物件の周辺環境の変化、急な修繕、家賃滞納など数々のリスクが潜む不動産投資。資産形成の手段として注目が集まっているものの、事前にリアルな失敗パターンを知ることは必要不可欠です。そこで本記事では、多くの個人投資家にコンサルティングを行い、不動産投資の方法を提案する、株式会社カクセイの平山智浩氏・渡辺章好氏の共著『失敗例から学ぶ 儲かる不動産投資の極意』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、不動産投資の失敗例を紹介します。

不動産業者の「煽り文句」にまんまと乗せられた

【相談内容】

1年半前にロバート・キヨサキの『金持ち父さん 貧乏父さん』を読んで不動産投資に興味を持ちました。さっそくいくつかセミナーに参加して、複数の業者さんから物件情報をもらうようになりました。

今年の5月頃にオーバーローンで融資可能な名古屋の築浅RC造マンションを紹介されて購入したのですが、そのときに業者さんから「すでに何人か希望者がいるので、購入希望があるならすぐ買付証明を出してください」と言われ、物件を見ることなく決めてしまいました。それまで購入に迷っていて買えなかったことが度々あったので焦っていたのも理由です。

買い付けから融資の審査も無事に通り、念願のマンションオーナーになれたのですが、購入後に見に行ってみると築5年にしては薄汚れていて、エントランスはゴミだらけ。駐車場も雑草が伸びていて粗大ゴミが放置されています。2つある空室のうち1つはカビだらけでボロボロの状態でした。

見ずに購入する人も結構いると聞いていたのですが、物件がこんなにひどい状態というのはわかりませんでした。

 

まさかスラム化しているとは…
まさかスラム化しているとは…

 

◆「買いたい病」にかかった投資家は焦りすぎる

 

これは典型的な「買わされてしまった失敗」です。業者から「購入したいなら、すぐ買い付けを入れてください。早いもの順ですから!」と煽られ、焦って購入して後悔しています。このようにスピードを重視することは、結果的にリスクにつながります。車のスピードを出しすぎたら事故を起こす確率が上がるのと同じです。

 

1億円以上の大きな買い物をするのに、即答を求められるのがそもそも間違っていると思います。たしかに迅速な判断は必要ですが、「買いたい病」にかかってしまって、いろいろなことが冷静に考えられないのであれば、いったんストップすべきでしょう。

 

不動産における失敗の怖いところは、数百万、数千万円の損失になることが珍しくないことです。仮に資金を補塡してリカバリーすることができたとしても、想定もしなかった損失に対して、保有を続けることに不安を抱えてしまう方もいらっしゃいます。また、収支が合わず赤字になったときに、月々の給料から補塡することになりますが、その支払いも何十年も続くとなれば、精神的にも持ちこたえられる人は非常に少ないと思います。

 

持ちこたえれないので売却するとなると、損切りで売ることができればいいですが、状況によってはそれもままなりません。売ることもできず、また物件で稼ぐこともできず、まさに八方ふさがりになってしまうのです。これらの失敗に陥る大きな原因は、物件を見ることもせずに「たぶん大丈夫」と買ってしまうことから起こります。

 

不動産業者からすれば重要事項説明をすれば、法律上は義務が果たせます。「しっかりとした修繕計画を添えたうえで販売しなくてはいけない」という決まりはありませんから、買う側の責任になるのです。

 

やはり、しっかりとお金の勘定をしないといけません。共有部分の清掃や草むしり、リフォームにコストがかかるのは当たり前です。これらの金額をあらかじめ見積もったうえで、しっかりキャッシュフローが出る物件を選びましょう。

 

◆物件は必ず、自分の目で確認する

 

物件の状態を知るには、現地で調査することが必要です。最近は現地へ足を運ばずに買う人も多いですが、それだけリスクが高いものをつかまされる可能性が高くなります。

 

物件を見ない人の理由として、「見てもわからないから」「見ていたら間に合わないから」という投資家の声も聞きます。例えば、六本木ヒルズのひと部屋が売りに出て「2億円で利回り5%出ます!」と言われれば、立地も建物への心配も楽観的に考えられるので、もしかしたら見に行かないかもしれません。

 

そういった区分マンションのオーナーチェンジの物件の場合では、部屋の中に入れませんから、外観だけを見て帰ってくるだけです。それに投資家は建築に関しては素人ですから、配管がどのようになっているのかなどは見てもわかりません。

 

それよりは、管理組合にある書類を確認して、これまで大規模修繕がどれくらいされているのか、今後の計画はどうなっているのか、また修繕積み立てがどれくらい貯まっているのかを確認するのが良いと思います。

 

しかし、アパート・マンションなど一棟物件は必ず自分の目で確認しましょう。少なくとも物件の状態に関しては、現地へ行けばわかるものです。専門的な知識がなくても、共有部にゴミがあふれていないか、スラム化していないか、自転車が放置されていないか、くらいは確認できます。

 

では、いざ現地に行ってみたら駐車場が荒れていて雑草が生い茂っていたとします。ベランダを見ると入居者が置いた放置ゴミが多く、ポストの中を覗くと、それこそ督促状が詰まっている人もいるわけです。このような人が住んでいるのなら、家賃も払っていないかもしれません。こうした懸念に対しては、しっかりと裏を取ってチェックする作業を怠らないことです。

 

特に一棟物件は、どのように管理をされていたのかで、建物の状態が変わるものです。築10年程度にもかかわらず荒んでいる物件はありますし、逆に築50年でも花壇に花が咲き、よく手入れされた物件もあります。外から見れば築年数は経っていても、しっかりと掃除が行き届いていればわかります。共有部の電気もしっかりついて、ポストもキレイに保たれていれば入居希望者にも良い印象を与えます。そういった目に見てわかることこそ、しっかり確認して物件選びの判断材料にしましょう。

失敗例から学ぶ 儲かる不動産投資の極意

失敗例から学ぶ 儲かる不動産投資の極意

平山 智浩・渡辺 章好

幻冬舎メディアコンサルティング

物件の周辺環境の変化、急な修繕、家賃滞納など数々のリスクが潜む不動産投資において、事前にそのリアルな失敗パターンを知ることが不可欠です。多くの個人投資家にコンサルティングを行い、それぞれに合った不動産投資の方法…

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