北米ボーディングスクールが“Good Enough”を奨励するワケ Performing ArtsやVisual Artsを通じて、表現力が養われる

キャンパス内に寮を有し、学業だけでなく、共同生活を通じて社会性の育成までをサポートするボーディングスクール。多様性を重要視する富裕層が、我が子を通わせたいと注目しています。本記事では、SAPIX YOZEMI GROUPの海外事業開発部長・髙宮信乃氏が、その実情について解説します。

「自らを表現する機会」が与えられる

前回は、名門大学への進学準備を目的とした北米のボーディングスクールの教育についてご紹介しました。その最大の特徴は、少人数制によるディスカッションベースの授業にあります。生徒は自分の意見やアイディアを積極的に発信して、クラスにContribute(貢献)することが求められ、発言の頻度や質は個々の成績に大きく反映されます。インプット中心の日本とは異なる、アウトプット主体の授業スタイルによって表現力が磨かれることは言うまでもありませんが、北米のボーディングスクールではAcademic Preparation(学問的準備)以外にも様々な場面で自らを表現する機会が与えられます。

 

まず、北米のボーディングスクールにおけるスポーツ事情を見てみましょう。秋・冬・春の季節ごとに、異なる種目への参加を義務付ける学校が一般的で、多彩な種目が複数のレベルで設定されています。

 

例えば、全米1、2位を争う名門校であるフィリップス・エクセター・アカデミー(Phillips Exeter Academy)では、秋にクロスカントリー、フィールドホッケー、アメリカンフットボール(米国ではFootballと呼ぶのが一般的)、サッカー、バレーボール、水球(男子)、冬にバスケットボール、アイスホッケー(米国ではHockeyと呼ぶのが一般的)、スカッシュ、水泳・飛び込み、室内トラック競技、レスリング、春に野球、端艇(ボート)、サイクリング、ゴルフ、ラクロス、ソフトボール、テニス、陸上競技、バレーボール、水球(女子)と、数多くの種目から選択することができます。

 

競技レベルも、トライアウト(入部テスト)が必須となるVarsity (1軍)からJunior Varsity(2軍)、Thirds(3軍)、そしてRecreational(娯楽レベル)に至るまで、細かく分けられていますので、得意なスポーツを活かして大学進学を目指す本格的なアスリートも、趣味として参加したい生徒も、それぞれに適したレベルでの参加が可能です。対外試合もレベル別に組まれるため、1軍以外でも出場機会があり、プログラムに参加する全員が試合を通じて楽しみながら上達を目指すことができます。

 

全校生徒200人の学校に、自前のNHLサイズ(プロ仕様)のアイスホッケーリンク
全校生徒200人の学校に、自前のNHLサイズ(プロ仕様)のアイスホッケーリンク

 

アートの世界はどうでしょうか。この分野は、絵画、陶芸、写真などに代表されるVisual Arts(視覚芸術)と、音楽や演劇と言ったPerforming Arts(舞台芸術)に大別され、両分野の受講を必須としている学校がほとんどです。デジタルカメラ全盛の時代になっても、写真現像用の暗室はいまだに人気のある施設です。

 

音楽の場合、キャンパスに専門の指導者が常駐しており、1対1でのレッスンも頻繁に行われています。演劇では、各校に立派なシアターが設置されており、演者だけでなく照明や音響、大道具の作成など、裏方を含めた様々な分野で活躍できる役割があり、チームワークが育まれます。

 

Walnut Hill School for the ArtsやInterlochen Arts Academy等、特にアートに強いとされるボーディングスクールもありますし、Phillips Exeter Academyと同じく名門10校“Ten Schools”のチョート・ローズマリー・ホール(Choate Rosemary Hall)は、映画『危険な情事』で共演したマイケル・ダグラスとグレン・クローズなど著名な俳優を多数輩出しています。

自らリスクを取って「挑戦」することを奨励

なぜボーディングスクールでは、生徒に勉強以外の様々な分野で自らリスクを取って挑戦することを奨励しているのでしょうか? これについては多くの関係者が、“Diversified Interests and Experiences”(多様な関心と経験)や、自らの意見や感情を言動に移し自己表現することを意味する“Self-Advocacy”の大切さを指摘しています。

 

未経験のスポーツや芸術、そしてコミュニティーサービス(ボランティア活動などを通じた地域貢献)等を通じて、生徒自身がそれまで知り得なかった自らの強みや興味、情熱に気付き、それを表現することによって魅力的な人材への成長に繋がると考えられているのです。

 

様々な活動に取り組む北米のボーディングスクール生の毎日は非常に忙しく、全てのタスクを100%納得するまでやろうとすると、いくら時間があっても足りません。ほどほどの完成度で次の課題に取り組む“Good Enough”の感覚は、一芸を極めることをよしとする日本人には抵抗感があるかもしれませんが、アメリカではマルチタスクをこなすリーダーの素養の一つとされています。

 

限られた時間を有効に使うタイムマネジメント・スキルを含め、自らを律するセルフマネジメント能力を10代から身に付け、幅広い関心を持ち、Self-Advocateができる生徒は、名門大学進学にとどまらず、社会のリーダーとしての活躍が期待されます。

 

 

SAPIX YOZEMI GROUP 海外事業開発部長

Triple Alpha 副会長

髙宮 信乃

 

SAPIX YOZEMI GROUP 経営管理室 海外事業開発部長
学校法人髙宮学園 代々木ゼミナール評議員 

幼少期をパキスタン、香港、インドネシア、米国、スーダン(現・スーダン共和国、通称北スーダン)、オーストラリアで過ごし、1999年米ニューヨーク大学卒業後、MBAを取得。
アーサーアンダーセン税務事務所、リーマンブラザーズ証券会社を経て、2011年からSAPIX YOZEMI GROUPの幼児教室事業に従事し、2014年に海外進学部門のY-SAPIX Global Campus(YGC)を立ち上げ、ゼネラルマネージャーを務めるほか、株式会社ベストティーチャー副社長、Triple Alpha, Inc.副会長などを兼務。7歳の双子の母。

著者紹介

連載SAPIX YOZEMI GROUPの海外事業開発部長が解説!世界の富裕層が我が子を通わせる「北米ボーディングスクール」の魅力

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