米名門大学への登竜門「ボーディングスクール」の教育法とは?

キャンパス内に寮を有し、学業だけでなく、共同生活を通じて社会性の育成までをサポートするボーディングスクール。多様性を重要視する富裕層が、我が子を通わせたいと注目しています。本記事では、SAPIX YOZEMI GROUPの海外事業開発部長・髙宮信乃氏が、その実情について解説します。

米高等教育のはじまりを担った「ハーバード大学」

大学進学準備を目的としたPrep(Preparatory) Schoolと位置付けられる北米のボーディングスクールを語るために、まずはアメリカの高等教育史を紐解いてみましょう。同国の高等教育の嚆矢は1636年に創立されたハーバード大学(Harvard University)ですが、Harvardは元々、清教徒会衆派の指導者を育成する“神”学校でした。当時の大学に期待されたのは宗教的リーダー、すなわちコミュニティの指導者を育成することだったのです。

 

マサチューセッツ(Massachusetts)州ボストン(Boston)近郊のケンブリッジ(Cambridge)で産声を上げた米国の高等教育は、当初、私立大学が主導しました。東海岸の北部に始まり、徐々に南へ西へと大学は広がっていき、ミシシッピ(Mississippi)川まで西進すると、間を飛ばして一気に西海岸に進出します。そして、1891年、カリフォルニア(California)州にスタンフォード大学(Stanford University)が誕生しました。なお、私立大学が手薄な地域では、主に州立大学が高等教育を支えています。

 

このような背景を知ると、Ten Schoolsと呼ばれるボーディングスクールの名門校がニューイングランド(New England)地方・中部大西洋岸(Middle Atlantic)に集中している理由がよく分かります。これらの学校は歴史的・地理的に有名大学と強いつながりを持ち、例えば、フィリップス・エクセター・アカデミー(Phillips Exeter Academy)ならばHarvard、フィリップス・アカデミー・アンドーヴァー(Phillips Academy, Andover)と言えばイェール大学(Yale University)、ローレンスビル・スクール(The Lawrenceville School)ときたらプリンストン大学(Princeton University)といった組み合わせがよく知られています。

 

さて、地域のリーダーの養成機関から発展していった名門大学にボーディングスクールは多くの卒業生を送り込んできました。ボーディングスクールでもリーダーシップ育成のための様々な教育プログラムを提供しており、その特色を挙げるとすれば、寮生活は絶対に外せません。多くの学校が良く言えば自然豊かな、悪く言えば不便な場所にあります。俗世の喧騒から離れて、教職員と寝食を共にしながら、リベラルアーツを学ぶという伝統がこれらの学校にはあります。寮は主に2~4人部屋で、他の寮生と掃除やごみ捨て等の役割分担を決め、共同生活を通じて社会性を育みます。

 

広大なキャンパスには寮をはじめ、校舎、図書館、スポーツ施設など、学校生活に必要なファシリティーが全て揃っています。学校によっては、演劇場や、最先端の技術を導入したラボなどを設けているところもあります。例えば、ニューハンプシャー(New Hampshire)州にあるPhillips Exeter Academyは、ボストン空港(General Edward Lawrence Logan国際空港)から車で2時間ほどかかりますが、271万㎡(東京ドーム58個分)の敷地は日本の大学のキャンパスで最も広い九州大学・伊都キャンパスに匹敵する大きさで、様々な設備がゆったりと配置されています。

少人数教育が主流の「ボーディングスクール」

素晴らしい学習環境を誇るボーディングスクールでは少人数教育が行われています。4学年で100名~200名程度の学校も珍しくありません。1学年270名程度のPhillips Exeter Academyは、日本の高校なら標準サイズですが、ボーディングスクールとしては大規模校に分類されます。

 

学校のサイズには幅がありますが、ボーディングスクールの授業の主流は少人数制のディスカッション・ベース("Discussion-Based" Learning)であり、1930年代にPhillips Exeter Academyで開発されたハークネス(Harkness®)メソッドは特に有名です。ハークネステーブルと呼ばれる楕円形のテーブルを、12人程度の生徒が取り囲み、それぞれのアイディアを議論し、教師は進行役を務めます。意見の多様性、発言の頻度、議論の活性度などの観点から、12人というクラスサイズが最適と同校の元校長より伺っています。
 

ハークネスメソッドを用いての授業の様子(Phillips Exeter Academy)
ハークネスメソッドを用いての授業の様子(Phillips Exeter Academy)

 

討論型授業と日本で一般的な講義型授業を組み合わせている学校もありますが、ハークネスメソッド発祥の地である同校では、理科の実験室にもハークネステーブルが設置されています。実験台とハークネステーブルを往復して、実験し、うまくいかなければクラスメイトと集まって議論して、また実験を行う。その繰り返しによって思考力が磨かれていきます。

 

知識のインプットに主眼を置いた講義型授業と比べると、ボーディングスクールの授業はアウトプットが主体となります。それでは知識不足になるのではないか? 心配ご無用です。ボーディングスクールの寮にはスタディ・ホール(Study Hall)が完備され、生徒たちは毎日2~3時間の自習時間で予習に取り組みます。

 

“Study Hall”はもともと「勉強する場所」を意味しますが、今では「自習そのもの」を指します。学年と成績によって自分の部屋で自習することが認められる場合もあり、"study hall in the library / dining hall / dorms" と表現されますが、そこで大量のテキストを読み込み、次のディスカッションに備えます。アメリカの大学やビジネススクールを含む大学院では、課題図書(リーディング・アサイメント)が多く、予習が大変という話をよく聞きますが、ボーディングスクールでの勉強を経験していれば、それも苦になりません。まさに米名門大学への学問的準備(アカデミック・プレパレーション)を行う登竜門と言えるでしょう。

 

 

SAPIX YOZEMI GROUP 海外事業開発部長
Triple Alpha 副会長
髙宮 信乃

 

SAPIX YOZEMI GROUP 経営管理室 海外事業開発部長
学校法人髙宮学園 代々木ゼミナール評議員 

幼少期をパキスタン、香港、インドネシア、米国、スーダン(現・スーダン共和国、通称北スーダン)、オーストラリアで過ごし、1999年米ニューヨーク大学卒業後、MBAを取得。
アーサーアンダーセン税務事務所、リーマンブラザーズ証券会社を経て、2011年からSAPIX YOZEMI GROUPの幼児教室事業に従事し、2014年に海外進学部門のY-SAPIX Global Campus(YGC)を立ち上げ、ゼネラルマネージャーを務めるほか、株式会社ベストティーチャー副社長、Triple Alpha, Inc.副会長などを兼務。7歳の双子の母。

著者紹介

連載SAPIX YOZEMI GROUPの海外事業開発部長が解説!世界の富裕層が我が子を通わせる「北米ボーディングスクール」の魅力

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