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「米国ボーディングスクール出願」今季のトレンドは…
2022年秋に米国のボーディングスクールへの入学を目指す生徒を対象とした出願締め切りが、今年も無事に幕を閉じました。約2年間の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を経た今シーズンは、出願プロセスにも変化が生じています。
まず挙げられるのが、これまで主に留学生やキャンパス訪問が不可能な出願者のための特別措置として用意されていたオンラインでのインタビューが、米国内に住所を持つ現地の生徒も含め、より一般的になったことです。
そのため、オンラインでのインタビューの前にバーチャルキャンパスツアーを組み合わせたり、出願者本人とのインタビューの後に保護者との挨拶の時間を設けるなど、互いをより深く理解するための各学校による配慮が見られました。
もう一つは、SSATやISEEといった共通テストにおける、test-optional の継続です。たとえば、名門10校 “Ten Schools” のうち、これらのスコアの提出を求めたのはたったの3校。その代わりに、追加のエッセイや推薦状の提出を求める学校が目立ちました。
元来、米国のボーディングスクール出願は、学力だけでなく人間力も含めた“holistic approach”を特徴とし、すべてのピースが総合的に審査されます。今シーズンは特に、生徒の人間性や入学後のポテンシャルを測るピースに比重が置かれていることが、強く印象に残りました。
時代の変化とともに、テストにも進化が求められている
同様の事情は、米国大学への出願でも起きています。新型コロナウイルスが発生する前から、SATや ACTといった共通テストは、果たして受験者の真の学力を正確に測れているのか、実は高額な受験対策や複数回の受験料を賄える裕福な家庭と、そうでない家庭を差別する試験になっていないか、という議論に長年にわたって晒されてきました。
そして新型コロナウイルスによる米国内の経済と教育への打撃は、この議論と問題をさらに深めることとなりました。結果、Harvard University や Stanford University、 Columbia University を含めた、全米 1,800以上の大学は test-optional を採用し、また University of California や University of Washington などの難関大学では、審査にあたりSATやACT等の共通テストを一切考慮しないことを決定しています。
ボーディングスクール同様、米国の大学への出願は、成績、エッセイ、推薦状、課外活動の実績など、幅広い特性が考慮されます。SATやACTなど統一テストの結果はあくまでも評価の一部分に過ぎず、test-optional を採用する大学に対しテスト結果を提出しなかったとしても、不利になることはありません。
そんななか、SATを運営する College Board は、米国以外のテストセンターでは2023年から、米国内では2024年から、SATをデジタル化することを発表しました。デジタルネイティブである今の世代の若者にとってより親和性の高い形式を採用することで、出願プロセスにおけるSATの存在意義を高める狙いがあります。
コロナ禍で力強い成長を見せているテスト「DET」
コロナ禍で力強い成長を見せているテストもあります。多くの試験で会場が閉鎖を余儀なくされるなか、Duolingo English Test(DET)は、自宅からオンラインでいつでも受験ができるという手軽さから、人気が高まりました。
2021年の時点で、世界50ヵ国、3000以上の教育機関がDETを受け付けており、Yale University、 Columbia University をはじめとする有名大学や、多くの北米のボーディングスクールも含まれます。
Triple Alphaでは小中高や高等教育機関が TOEFL同様にこのテストを取り扱いはじめることを見込んで、2018年よりお客様にこのテストの受験をお勧めしてきました。
DETは、受験者の回答パターンに応じて、難易度の異なる問題が出題されるコンピューター適応型テスト(CAT)です。
DETではAI(人工知能)による採点アルゴリズムが受験者のスコアを算出することで、従来のテストよりも短い時間で受験者の“リアルな”英語力を測定することを可能にしました。ちなみに、DETの所要時間は約1時間、受験料は49ドルです(2022年2月時点)。
DETでは、従来型のテストで陥りがちな、実力とは関連性の低いテスト対策は通用しません。普段から英語学習に真摯に取り組み、普段の生活のなかで工夫をしながら可能な限り英語漬けの環境を作ることこそが、最も有効な対策となります。
Educational Testing Service(ETS)も2021年、TOEFL Essentials と呼ばれる適応型テストの導入を発表しました。アカデミック英語と一般英語を半々に組み合わせた内容であることから、世界中の教育機関がどの様な形でこのテストを受け入れるかが注目されます。
世界の様相が急速に変化するなか、テストも変化が求められる時代です。受験者にとって手軽に、親和性の高い形式で提供できるかどうかは勿論大切ですが、それ以上に大切なのは各テストの受験テクニックではなく、求められる内容を受験生がきちんと理解できているのか、をテストが精確に測ることができるかどうか、という点に尽きるかもしれません。
「テストのための学び」からの脱出に踏み切る学校も
北米のボーディングスクールでは、“テストのための学び”から脱する動きも見られます。例えば、Phillips Academy Andover では、Advanced Placement(AP)コースの提供を数学、および科学系の科目のみに限定する代わりに、多くの Advanced(上級)レベルのコースを提供しています。
コネチカット州にある Kent School もまた、2021年度から従来のAPコースに代えて、学校独自の Advanced Studies コースを提供することを発表しました。
APは College Board が運営し、高校在学中に大学入門レベルの学習を修了(年度末に行われる所定の試験をパス)することで、大学によっては入学時に単位として認定したり、入学後すぐにより高度な授業を受ける資格を得ることを可能にしています。
元々APは、高校と大学の間で広がる格差に対応するため、1950年代半ばに開始されました。その後、提供コース数、受験者数は年々拡大し、2020/21年度は254万人が38科目のなかからAP試験を受験しています。
そんななか、なぜAPカリキュラムからの脱却に踏み切るボーディングスクールがあるのでしょうか。
それはAPコースの指導となると、どうしてもAP試験に出題される可能性のある内容をすべて網羅するために、より深い探求を伴う学びを不本意にも犠牲にせざるを得ない、つまり指導の内容が試験のための杓子定規なものになりがちであるからです。
教育理論は過去50年間で大きく変化しており、暗記から、問題解決に重点を置いた、より協調的、経験的、学際的な学習へと変化しています。特に難関大学側が求めるのは、APコース合格という実績を持つ生徒ではなく、自分の将来に加え、複雑化する世のなかに向き合って社会的に責任を持って行動できる有能で勤勉な生徒です。
この事実を敏感に察したボーディングスクールでは、テスト対策に時間を割く代わりに、カリキュラムを実社会の問題に結びつけ、生徒が独自のリサーチや深い分析に取り組む機会を増やすことに焦点をおいています。
それは結果として、生徒の知的好奇心とモチベーションを刺激する授業となり、難度の高い学習内容の習得に繋がります。
もはや「複数のAP科目修了」は珍しいことではない
アメリカの高校課程において、複数のAP科目を修了することはもはや決して珍しいことではありません。実際に多くの公立校でAPコースが提供されていますが、現状としてはそれが難関大学進学のための数少ない対応策です。
一方、米国の私立校であるボーディングスクールは、独自の予算と少人数制授業、優秀な教職員と専門的な施設を強みに、自らが時代に即した柔軟で創造的かつ厳格なカリキュラムを提供することができます。
キャップストーンプログラムやシグネチャープログラムに代表される自主的な探求プログラムや研究、Honors や IB(DP)、College-Level または Dual-Credit College コースをはじめとする習熟度や能力、内容別のコースは、すべてお子様の大学出願におけるプロフィール構築と、大学を含めたその先の未来の可能性を広げることに繋がっていきます。
ボーディングスクールは、急速な時代の変化を敏感に察知し、未知の世界で自信をもって生き抜くための準備を提供する理想的な場所として、非常に高いポテンシャルを備えているといえるでしょう。
SAPIX YOZEMI GROUP 国際教育事業本部長
Triple Alpha 代表取締役社長
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