全国民泊同業組合連合会 理事・大神麗子氏の著書、『民泊2.0~事業と投資のハザマだからオイシイ』(みらいパブリッシング)から一部を抜粋し、民泊運営のポイントについて見ていきます。

「家主同居型」の民泊施設は消防工事は不要⁉

前回に引き続き、「民泊」運営について、物件のパターン別に戦略を考えていきます(関連記事「令和の民泊女王が教える「民泊」物件パターン別戦略とは?」参照)。

 

♦自宅—空き部屋を有効活用、消防工事が不要なケースも

自宅であれば、ほとんど初期費用をかけずに始められます。新しく物件を用意する必要もないですし、家にある家具をそのまま使えます。自宅として戸建てを所有している方も多いかと思います。自分も住みながら、有料のホームステイのような感覚で営業するのもいいでしょう。

 

所有の戸建てを賃貸に出して収益化したいとなれば、普通に考えて自分たちは出ていく必要があるわけですが、民泊の場合は自分たちも住んだまま、空き部屋のみを個室単位で貸し出すことも可能です。

 

昔は家族で住んでいたけど、子供たちが独り立ちして出て行ったので、その空き部屋を活用する。また、夫婦2人で住むには広くなってしまったので、自分たちは引っ越して、物件を収益化するなどが可能です。

 

うまく活用したい制度として、「民泊新法上では家主同居型の場合に消防設備も不要」という緩和措置があります(客室面積50㎡未満に限り)。通常、宿泊施設を開業する際には消防工事が必要なのですが、これが不要になるのです。

 

つまり、ゼロ円で開業し、全くリスクがない状態で収益を得ていくことが可能です。奥様がご自宅に一日中いらっしゃる、退職後のご両親が家で過ごしていらっしゃる、子供が小さくて外に働きには行けないなど、こういった際にも一石二鳥のビジネスだと思います。

 

「自宅にいながら、普段の生活をしながら稼ぐ」ということが可能です。人それぞれのライフステージで色々な事情がある中、こういった選択肢があると知るだけでも価値があると思っています。

 

デメリットとしては、オーナーが一緒の物件に住んでいることを嫌うゲストもいるということです。ゲストとしては、やはり監視されているような気持ちになってしまうので、同居型物件を避ける人も一定数はいます。

「ゲストハウス型」が単価割れしやすいワケ

♦二世帯住宅型—民泊の宿泊料で実質タダで住めて、国際交流も楽しめる

一階は自分が住んで二回を民泊で回す(またはその逆)、二世帯住宅型もあります。民泊部屋から入る宿泊料で、自分たちはタダで住むという形です。収益化の方法は違いますが、賃貸業で二世帯住宅型を運用するのと近いイメージです。

 

自分も同じ物件に住んでいることでゲストとの国際交流を楽しんだり、外国語の語学力アップに役立てたり、お子様の英会話教育に繋がったりと、いろんなメリットがあります。また、ゲストと会いやすいので良いレビューをもらいやすくなります。手料理を差し入れしたり、機会があれば自宅に招いたりするのも良いでしょう。とても喜ばれます。

 

♦ゲストハウス型—スペースに無駄がなく、収益率を上げられる

ゲストハウスについて、数年前まで日本では馴染みがなかったのですが、近年はかなり増えてきました。イメージ的には、カプセルホテルに近いです。多いのは「ドミトリー」という形態で、二段ベッドがあり、そのベッド一つ分のスペースずつを宿泊者に貸すという形です。

 

ゲストは部屋をまるまる借りるのではなく、自分が寝る場所のみを借りるため、リーズナブルに滞在することができ、予算があまりない旅行者や、若者、バックパッカーなどに人気です。

 

1泊あたり1ベッド2000~3000円くらいで泊まることができます。風呂やトイレや洗面所は共用部に存在し、皆で使用します。自分のスペースはベッドの上だけ。無駄なスペースをなくした機能性重視の構造です。

 

最近では、大手企業が運営するおしゃれなゲストハウスも出てきており、豪華な内装や斬新なデザインで利用者を魅了しています。普段はビジネスホテルを利用している方も、試しに泊まってみて満足されることが多く、リピートされるようです。

 

この手法での開業は、ビルのフロアや広い物件に向いています。せっかくの広い物件を1組のゲストだけにまるまる貸切で販売することになれば、相応の宿泊料を取らないと採算が合わないため宿泊料をかなり高額にする必要がありますが、その額で予約してくれる旅行客を毎日呼び込むのは至難の技です。

 

しかし、1スペースごとに小さく区切って貸し出せば、1人あたりは3000円でも、2段ベッド15台で30人収容なら、満室想定時は1泊あたり9万円の売上げが見込めます。これが1ヶ月31日で、月の売上げが280万円弱になります。ただ、稼働率は当然100%ではないので、稼働率を掛けた額になります。

 

空間を分割することによって利回りを上げていく戦略です。

 

デメリットは、ゲストハウスの場合、ゲストがどうしてもコスパ重視の層になってしまうので、「安さ」を売りにしなければならないことが多く、単価割れしやすいことです。

 

その施設を気に入って予約しているのではなく、「エリアの中で一番安いところで選んだ」というようなゲストが多くなってきます。お金があれば、本当はドミトリーではなく個室に泊まりたい人もいるでしょう。

 

そして、良いレビューをもらうのも難易度が高くなりがちです。人は「値段が高くても気分的に満足した方に良い評価をする」という傾向があります。

 

例としてリッツ・カールトンに泊まった場合、宿泊前に6万円払っていたとしても、豪華な内装に充実したサービスやアメニティ、洗練されたスタッフのもてなしで特別な時間を過ごしたとすれば、宿泊後には高評価のレビューをつけるでしょう。

 

逆の例として1泊2000円のドミトリーに泊まった場合、寝る部分は狭く、周りのゲストの声は聞こえて、内装は最低限。宿泊するだけなのでサービスはありません。2000円で実現できるクオリティには限界があります。2000円と6万円は30倍も違うわけです。

 

宿泊後、どちらに良いレビューをつけるかと言えば…、結果は明らかですね。

 

「安い割には満足!」と感じてくれるゲストもいますが、何か不満足な点があればシビアに評価する人がほとんどでしょう。

 

このように、良いレビューをもらうのが難しくなりがちなのは、「レビュー」というシステムが「人の感情」に頼って成り立っているものであり、コンピュータでコスパを換算して出してくれるものではないためです。本質的に、様々な観点から算出するものではなく、その時のお客さんの気分次第で投稿する性質のものであるということです。

 

私は合理主義な性格なので、正直なところ、個人的にはレビューシステム自体があまり好きではありません。

 

大神麗子氏
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