「賃貸業」は1ヶ月以上の契約期間が原則だが…
民泊施設として開業するためには、「許認可」を取る必要があるということをお伝えしました。今回から民泊の法律に関してお話しします。
民泊に関する法律は大きく分けて三つあり、そのうちのどれかの許認可を取るため、役所や保健所に手続きする必要があります。手続きについてあなたが全てを理解する必要はなく、専門家にお願いすることができますが、一通りの知識として知っておきましょう。
<民泊をするために必要な三つの法律の種類>
・特区民泊
・民泊新法(住宅宿泊事業法)
・旅館業法
それぞれについて解説していきますが、本記事では「わかりやすさ」を優先しています。法律面をさらに詳しく知りたい方は、拙書『買わない不動産投資ドル箱宿泊所』(みらいパブリッシング)も併せてご確認下さい。
まず前提として、宿泊料を受けて人を宿泊させ営業するための「旅館業法」という法律があり、人を宿泊させるためには、その許認可を取得する必要があります。あなたが利用するホテルや旅館も、みんなこの許認可を取っています。
ちなみに、現行の日本の法律では、原則として賃貸業は1ヶ月以上が決まりです。所有者が賃借人に対して部屋を貸す際、最短でも1ヶ月以上の契約期間で結ばなければいけません。3日間だけ、1週間だけ貸したいというような賃貸借契約をする行為は認められていないのです。そのため、1ヶ月未満でお部屋を貸したい場合(宿泊させたい時も同じ)は、旅館業法という法律に従う必要があります。
民泊を開業する場合の許認可の種類ですが、「旅館業法」を取得する方法の他にも二つの選択肢があります。「旅館業法」という法律があるのに対して、「特別に旅館業許可を免除しますよ」というもので、「特区民泊」と「民泊新法」という法律です。
三つの法律のうちどれを選ぶかによって、初期費用や収益率も変わってきます。比較して、あなたに合ったものを選びましょう。
「旅館業法」の許可を取らなくても民泊が開業できる!
・特区民泊
「特区民泊」は、大阪を初めとする一部地域のみで認められている制度で、「国家戦略特別区域法」に基づく制度を活用した民泊のことです。届け出によって手軽に民泊施設を開業することができます。国家戦略特別区域とは、安倍内閣が日本の成長戦略の柱の一つとして掲げている地域振興と国際競争力の向上を目的として規定された経済特区のことを指します。
ここで覚えて欲しいのは、「特区民泊」ができるエリアであれば「旅館業法」の許可を取らなくても民泊が開業できるということです。
「特区民泊」という制度は、もともと「住宅」としての運用となっています。つまり、「特区民泊」は「賃貸業」であり、「宿泊業」ではありません。先ほど述べたように現行法上、賃貸業は1ヶ月以上からと決められておりますが、それを特別に特区民泊制度では、数日間だけの短期賃貸借を認めているという寸法です。
ゲストごとに賃貸借契約を結びます。部屋を借りる際には大家さんと契約書を結び、あなたが大家なら入居者と結ぶはずです。その契約を全ての滞在ゲストと結びます。
「英語で契約書なんて作れないよ」と思う方にも安心です。外国語の賃貸借契約書の雛形は、国土交通省の「あんしん賃貸支援事業」の一環で作成された「定期賃貸住宅標準契約書」というものがあり、その雛形を活用することができます。
ただし、全国的に特区民泊が行えるエリアはかなり少ないです。たまたまその地域で始められそうなら、ラッキーなのでぜひ活用しましょう。
メリットは、旅館業より簡単に開業できることです。デメリットとしては、旅館業であれば宿泊日数に制限はないところ、特区民泊の場合は最低2泊からしか予約を受けることができません。1泊だけの受け入れはできず、2泊3日以上泊まってくれるゲスト限定です。ただ、旅行客は出張客と違って1泊だけ泊まる人はそもそも少ないので、そんなに気にしなくても大丈夫でしょう。
[特区民泊のポイント]
・できる地域が限られる
・2泊以上からしか泊められない(1泊だけの予約は不可)
・年間の営業日数に縛りはない。365日営業できる
・賃貸業である
・開業費が比較的安く済む