ホーチミン不動産市場の現状…進展する実需・投機の二極化

ホーチミン市の不動産市場は、当局による法的審査の長期化、ベトナム国家銀行による不動産投資への融資制限により、かつての勢いが弱まりつつあります。しかしその一方で、人口急増による住宅需要の高まりや、現地人による投機目的の売買といった流れもあり、外国人投資家にはなかなか手が出しにくい状況です。本記事では、ホーチミンの不動産市場の現状と、今後想定されるリスク、良質な物件の市場への流入の可能性等を考察します。

当局の法的審査が長引き、不動産市場にも影響

早いもので、2019年も9月となりました。ホーチミン市では、当局の長期にわたる法的審査により、コンドミニアムや土地区画の販売供給が減速傾向となっています。

 

ホーチミン市不動産協会によると、ホーチミン市の不動産市場は2017年3月以降減少しており、2018年の市場規模は2017年と比較して34%減少、2019年第1四半期に、都市計画課によって承認されたプロジェクト数は15件、販売戸数は3,000戸となり、昨年の同時期より67%減少。土地に関しても500区画しか許可が下りず、こちらも大幅に減少しました。総合不動産サービス会社のサヴィルズによると、供給中のアパートの数は、昨年の同時期よりも57%減少したとのことです。

 

さらにベトナム国家銀行(SBV)は、ハイエンドクラスの不動産プロジェクトの資金調達を制限することを理由に、不動産投資のための融資に制限を設けています。

 

専門家は、この状況がこれ以上続くと不動産市場に新たな打撃を与える可能性があり、あらゆる側面から困難に直面する可能性が高く、ベトナム経済への影響が懸念されると警鐘を鳴らしています。GP InvestのNguyen Quoc Hiep議長や不動産関係者は「この制限は不動産市場に影響を与え、冷え込ませている」と述べ、SBVに計画を再考するよう呼びかけました。また、ホーチミン市不動産協会のLe Hoang Chau会長も、現在の不動産市場の課題となっている「不安定で予測不可能な政策により、多くの不動産会社が倒産するリスク」を指摘しました。

中心部周辺の不動産価格は急上昇、バブルのリスクも

一方、ホーチミン市人民委員会の広報によると、2009年以降は人口が急激に増加し、それに伴って住宅需要が高まり、中心部周辺では土地と家の価格が急上昇しています。1区に隣接するBinh Thanh区では、道路に面した立地(車が通行できる道路)では1平米単価5,000USD以上での取引もあり、戸建が30万USD~100万USD(約3,150万円~約10,500万円)で取引されています。中心地より少し離れた東側の9区コンドミニアムの平均価格は、昨年の1平米あたり2,400万VND(約12万円)から2,900万VND(約14.5万円)に、2区では3,500万VND(約17.5万円)から4,000万VND(約20万円)にそれぞれ上昇しました。

 

供給不足と需要高によって価格が押し上げられているとの報道がありましたが、不動産市場を抑制している傍らで供給が減少することで地価が高騰し、市場は再び「バブル」が起こる可能性を秘めているといえます。

 

一部では不動産購入を求めている状況を悪用し、7区、9区、12区では存在しないプロジェクトの土地が売りに出されたり、農地を違法に整備して住宅地として売りに出すなど、多くの詐欺事件も発生しています。とくに外国人はこういった偽装を見破るのが困難だと思われます。とにかく上手い話にはのらず、信用できるデベロッパーの正規な販売物件を購入することをお勧めします。

 

現在のホーチミン不動産市場は、当局が市場を抑えているというのが現状であり、直面している問題解決については、専門家を含む不動産関係者がホーチミン市に解決への努力を求めています。ホーチミン市が住宅規制を合理化すれば、準備が整っている不動産市場は再び動き出し、市場の回復も見込めるでしょう。

 

建設省住宅開発部門のTran Quoc Dai次長は、中国から多くの企業(中国企業及び外資企業)がベトナムへの工場移転を模索していると述べています。その企業の多くが、ホーチミン市及び周辺地区を拠点として検討しており、ホーチミン市のほうは、スムーズな進出に対処するためにサイゴン南部に新たな工業団地を建設し、既存の工業団地と複合し施設を拡大することを検討しているとのことです。これらが不動産市場を後押しし、新たな宿泊施設の需要の急増する可能性についても付け加えています。ホーチミン市の不動産市場を再び回復させるためにも、当局には早急な対応が期待されます。

市場にあふれ出すのは不良債権か、「お得物件」か?

現在の不動産市場へ関わっていて実感するのは、ホーチミン不動産の現状は2極化しているという点です。コンドミニアムや戸建てを住居として購入するベトナム人(特に若い世代)と、投機として考えるベトナム人が存在し、現状では投機目的のベトナム人が多く、わずかな資金で購入権利を確保し、市場に供給される数少ない物件の購入権利を転売する人が急増しています。とくに中心地から離れているミドルクラスの手ごろな物件は、予約の段階で物件が品切れする状態が続いています。

 

これは今までの流れと少し違っているところで、資金ショートすれば市場に不良債権があふれ出すリスクを秘めています。しかし逆に、「お得な物件」が市場にあふれ出す事を期待している投資家もいて、そういう意味でも、今後も不動産市場の注目ポイントとなります。

 

ホーチミン市で購入を検討している外国人投資家にとって、現在は情報を収集しながら慎重に吟味する時期だといえるでしょう。とくにベトナムの不動産市場は外国人への規制があります。上記で述べたようなベトナム人向け不動産市場とは違い、制限された外国人市場があり、また違った視点での判断が必要です。そのためにも現地に精通した専門家から現状をよく聞き、しっかりと理解してから投資を検討することをお勧めします。

 

VINA COMPASS Co., Ltd. General Director

沖縄県宮古島生まれ。久留米工業大学を卒業後、トヨタグループ系列の株式会社アイチコーポレーション入社。特殊車両メーカーの営業部門で16年勤務。
2004年、商談で訪れたベトナムホーチミンに魅了され、独立起業、単身にて渡越。 2006年、取引先の製薬会社と合弁で排水処理会社を設立。
国営事業であるホーチミン市病院排水処理事業の入札業者として認証を受け、在籍中235ヶ所の病院排水処理を手掛ける。2012年、合弁会社の株を売却。新たに浄排水処理会社としてSHINY VIETNAM社、不動産・建築会社としてSHINY REAL社を設立。現地企業やベトナム政府事業の実績を活かし、越人コミュニティに入り、浄排水処理事業を手掛ける傍ら、日系大手への環境コンサル支援や、現地最大手の不動産デベロッパー、VINHOMESの日系唯一の販売代理店としてCentral Parkプロジェクトの販売を手掛けた。2018年、SHINY社、合弁解消後、新たに独資でVINA COMPASS社を設立。不動産販売仲介、賃貸仲介、管理運営、内装工事、進出支援コンサル業を手掛ける。特に進出時の事業許可、会社設立時のリスクヘッジ関連を得意としている。

VINA COMPASS社ウェブサイト:http://www.vinacompass.com/

著者紹介

連載ASEAN諸国で最も熱いベトナム――現地から探る不動産投資と事業の可能性

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