ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

昨年9月に国際決済銀行(BIS)が「The rise of zombie firms(ゾンビ企業の台頭)」というレポートを発表するなど、にわかにゾンビ企業が注目を集めている。ゾンビ企業とは、債務の利払いを賄えるだけの営業利益が無い「破たん予備軍」を指しており、特に先進国を中心とした低金利環境によって延命されたと指摘されている。

ゾンビ企業は中小型銘柄に比較的多い

米国の主要な株価指数であるS&P500( 大型株) 、S&P400(中型株)、S&P600(小型株)の3つの株価指数の構成銘柄を対象にゾンビ企業を抽出した(図表1)。結果は大型株では5銘柄のみだったが、中型株では9銘柄、小型株では32銘柄へ増加した。やはり規模の小さい企業ほどゾンビ企業になる傾向がある。

 

※インタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)は営業利益(EBIT)÷支払利息、直近3年間のICR(年次)が連続で1未満の企業(=ゾンビ企業)を抽出
[図表1]ゾンビ企業の銘柄数(指数別) ※インタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)は営業利益(EBIT)÷支払利息、直近3年間のICR(年次)が連続で1未満の企業(=ゾンビ企業)を抽出
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

次にゾンビ企業を業種別で示したものが図表2になる。ゾンビ企業は設備投資や研究開発費の負担が大きい情報技術やヘルスケア、エネルギー・セクターに多いことが分かる。また、(記載はないが)過去10年間のゾンビ企業の平均株価騰落率は、エネルギーセクターがマイナスであったのに対し、情報技術やヘルスケア・セクターではプラスであり、中でも情報技術は上記主要3指数の騰落率を上回るパフォーマンスだった。

 

2019年7月末時点の時価総額比で算出
[図表2]ゾンビ企業の業種別比率(指数別) 2019年7月末時点の時価総額比で算出
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

FRBの利下げはゾンビ企業における利払い負担の軽減につながるが…

FRB(米連邦準備制度理事会)が政策金利を引き下げれば、ゾンビ企業の利払い負担は軽減されることになる。しかし、それは急速な景気悪化が起こらなければ、という条件付きだ。景気が悪化すれば支払利息の減少以上に営業利益が減少するため、ゾンビ企業の業績はますます圧迫される。

 

資産を「守る」「増やす」「次世代に引き継ぐ」
ために必要な「学び」をご提供 >>カメハメハ倶楽部

 

景気悪化が想定される中での利下げは、ゾンビ企業のファンダメンタルズが悪化する警戒シグナルになりうる。

景気の先行き不透明感が高まる局面では優良株に注目

当初、今回のFRBの金融緩和政策は「予防的利下げ」とマーケットは捉えていたが、トランプ政権が対中制裁関税第四弾の発動を表明したことから、予防的利下げのシナリオは後退しつつある。

 

 

景気悪化リスクが現実味を帯びる中で注目されるのは、ゾンビ企業を回避した優良株投資であろう。優良株とは、株主資本利益率(ROE)が高く、負債比率が低く、利益成長が安定している銘柄だ。この優良株中心に構成されるMSCI米国クオリティ株価指数は、一般的なMSCI米国株価指数を上回るパフォーマンスをすでに示している(図表3)。用心に越したことはない。

 

日次、米ドル建て、配当込み、期間:2018年7月31日~2019年8月2日 ※2018年7月末時点を100として指数化 3出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表3]MSCI米国クオリティ株価指数とMSCI米国株価指数 日次、米ドル建て、配当込み、期間:2018年7月31日~2019年8月2日
※2018年7月末時点を100として指数化
3出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米国株式投資戦略に影響も…「ゾンビ企業」に要注意』を参照)。

 

(2019年8月5日)

 

 

田中 純平

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【11/19開催】相続税申告後、
約1割の人が「税務調査」を経験?!
調査の実態と“申告漏れ”を
指摘されないためのポイント

 

【11/19開催】スモールビジネスの
オーナー経営者・リモートワーカー・
フリーランス向け「海外移住+海外法人」の
活用でできる「最強の節税術」

 

【11/23開催】ABBA案件の
成功体験から投資戦略も解説
世界の有名アーティスト
「音楽著作権」へのパッション投資とは

 

【11/24開催】事業譲渡「失敗」の法則
―M&A仲介会社に任せてはいけない理由

 

【11/28開催】地主の方必見!
相続税の「払い過ぎ」を
回避する不動産の評価術

 

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録