ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

米ロサンゼルスの住宅不動産市場における販売戸数の減少が止まりません。2019年1-3月期は前年同期比26%減少し、前年同期比ベースの減少は4四半期連続となりました。高騰した住宅価格や税制改正が販売戸数低迷の主な要因として挙げられますが、実は中国からの不動産取得額が激減していることも影響しています。

これまで活況を呈してきたロサンゼルスの住宅不動産市場にも陰りが見え始めてきた

米ロサンゼルスの住宅不動産市場における販売戸数は2019年1-3月期1,077戸、前年同期比で26%の減少となり、前年同期比ベースの減少は4四半期連続となりました。

 

この住宅市場低迷の主な要因は、高騰する住宅価格と税制改正です。ロサンゼルスの年収倍率(住宅価格÷世帯年収)は9.0倍であり、全米平均の4.2倍を大きく超える水準にあります(出所:エクイティ・レジデンシャル)。また、トランプ政権による税制改正によって、州税・地方税(SALT)の所得税や固定資産税等控除の上限設定(最大1万ドル)や、住宅ローンの利子控除における元本上限の引き下げ(100万ドル→75万ドル)があったことも、特に都市部の高額住宅不動産に悪影響を及ぼしたと指摘されています。

 

[図表1]ロサンゼルスの販売戸数 四半期、期間:2016年1-3月期~2019年1-3月期 出所:ミラー・サミュエル/ダグラス・エリマン・リアル・エステートのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表1]ロサンゼルスの販売戸数
四半期、期間:2016年1-3月期~2019年1-3月期
出所:ミラー・サミュエル/ダグラス・エリマン・リアル・エステートのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

さらに追い討ちをかけたのが中国からの住宅不動産取得額の激減

中国からの米国住宅不動産の取得額(全米)は、2010年から2017年にかけて年率16%のペースで伸びました。特に中国から人気があった地域はロサンゼルスが位置するカリフォルニア州でした。

 

 

しかし、2018年以降は中国の資本規制が強化されたことに加え、人民元安や米中貿易戦争が激化したことなどが重なり、中国からの米国住宅不動産の取得額は2018年(2017年4月~2018年3月)で前年比マイナス4.1%、2019年(2018年4月~2019年3月)で同マイナス55.9%と激減しました。このため、特にロサンゼルスの住宅不動産市場は中国の影響をより強く受けたと考えられます。

 

[図表2]米国住宅不動産の主要国別取得額 年次、期間:2010年4月~2019年3月、単位:10億ドル ※各年の期間は前年4月~翌年3月まで。「中国」は香港、台湾含む 出所:全米リアルター協会(NAR)のデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表2]米国住宅不動産の主要国別取得額
年次、期間:2010年4月~2019年3月、単位:10億ドル
※各年の期間は前年4月~翌年3月まで。「中国」は香港、台湾含む
出所:全米リアルター協会(NAR)のデータを基にピクテ投信投資顧問作成

米中貿易戦争の影響は製造業だけにとどまらない

米中貿易戦争による影響は製造業が中心であり、非製造業に対してはさほど影響が無いとの見方が、多少なりともあるかと思います。しかし、カリフォルニア州のように中国からの住宅不動産取得額が激減することで、住宅不動産市場が低迷するだけでなく、建設業の落ち込みや逆資産効果による消費悪化等によって、間接的に景気が下振れするリスクがあることは抑えておく必要があると思います。

 

資産を「守る」「増やす」「次世代に引き継ぐ」
ために必要な「学び」をご提供 >>カメハメハ倶楽部

 

[図表3]州別住宅不動産取得割合(中国) 期間:2018年4月~2019年3月
[図表3]州別住宅不動産取得割合(中国)
期間:2018年4月~2019年3月

 

記載された銘柄はあくまでも参考として紹介したものであり、その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米国西海岸の住宅不動産市場にみる米中貿易戦争の盲点とは?』を参照)。

 

(2019年7月19日)

 

 

田中 純平

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

【5/7開催】ABBA案件の成功体験から投資戦略も解説
世界の有名アーティスト「音楽著作権」へのパッション投資とは

 

【5/8開催】使わない理由はない!?
金融資産1億円以上の方だからできる「新NISA」活用術

 

【5/8開催】「相続登記」を放置するとどんなトラブルに?!
2024年4月施行「相続登記の義務化」を専門弁護士がイチから解説

 

【5/9開催】認知症対策だけじゃない!
数世代先の相続まで見据えた資産管理・承継ができる
「家族信託」活用術

 

【5/9開催】「海外法人のつくり方・つかい方」
日本に居ながら自分の「分身」を海外に作るメリットは何か?

 

【5/11開催】相続人の頭を悩ませ続ける
「共有名義不動産」の出口は“売却”だけじゃない!
問題点と最新の解決策を藤宮浩氏が特別解説

 

【5/12開催】良い案件を見つける3つの方策とは?
「日本型オペレーティングリース」投資の基礎講座

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録