護国寺を中心にした、学校・出版社が集まる文教地区
護国寺は東京23区の中央北より「文京区」に位置しています。「文の京」という名前のとおり、文教施設と住宅街が区の多くを占めています。
「護国寺」の周辺も、寺院や文教施設が多く存在しています。「護国寺」駅を出るとすぐに、駅名の由来「護国寺」の荘厳な門が目に入ります。徳川綱吉の母、桂昌院の願いにより徳川綱吉が創建した護国寺。本堂と月光殿は、重要文化財に指定されています。
駅周辺は基本的にはオフィス街になっており、通り沿いには「講談社」をはじめとした出版社が多く建っています。また、お茶の水女子大をはじめとした教育施設が多い文教地区です。
住環境に目を向けると、文教地区らしい環境が広がっています。駅前に大規模な商業施設や娯楽施設はありませんが、スーパーや飲食店などがあり、日常生活で不便さは感じないでしょう。通り沿いから少し奥に入ると、落ち着いた住宅街が広がっています。治安もよく子育てにも向いた環境で、ファミリーから単身者まで需要の高いエリアです。
複数路線の利用でアクセス良好
「護国寺」では東京メトロ有楽町線を利用することができます。有楽町線の単独駅ですが、徒歩圏内に東京メトロ丸ノ内線も通っており、「新大塚」や「茗荷谷」駅も利用することができます。
東京メトロ有楽町線を利用することで、山手線が通る「池袋」や、「永田町」「有楽町」といった、オフィス・ショッピングエリアに乗り換えなしで行くことが可能です。また、東京メトロ東西線・JR中央線・総武線を通る「飯田橋」も近く、東西線を使えば「大手町」「日本橋」といったビジネスエリア方面や、中央線・総武線を使えば「中野」など郊外のエリアにもアクセスが可能です。
このように、都内の多方面に簡単にアクセスできる「護国寺」は、住みやすさと利便性の両方を兼ね備えた、都会で働く単身者にとって最適なエリアといえるでしょう。
賃料の変動が小さく、安定したエリア
■「護国寺」駅周辺の賃貸市場
「護国寺」駅の賃貸市場を分析していきます。まずは賃料相場と築年数の比較[図表2]です。23区平均と比較すると、賃料相場は23区の3,339円/m2に対し、護国寺は3,856円/m2。築浅物件が多く、都心の人気エリアのため賃料相場はやや高めです。
次に重回帰分析で「築年数」「徒歩分数」「面積」の3つの変数が賃料にどの程度影響を与えているかを分析します。「●徒歩・築年・面積による賃料の重回帰分析結果」[図表2]をみてみると、護国寺駅の単身者物件の月額賃料は「d.切片」の66,745円からスタートし、徒歩1分ごとに「a.徒歩」の1,016円ずつ値下がり、築年数1年ごとに「b.築年」の1,027円ずつ値下がり、面積1m2ごとに「c.面積」の1,777円ずつ値上がることがわかります。
「賃料に対する影響割合の比較」[図表2]から「護国寺」駅の賃貸市場の傾向を分析すると、護国寺は「a.徒歩/d.切片」の影響が大きく出ています。近隣の賃料相場の低いエリアに引っ張られ、駅から離れるごとに賃料相場の差が大きくなっていることが伺えます。また、標準偏差の割合「e.標準偏差/d.切片」は小さく、賃料が変動する可能性の低いエリアといえます。
■護国寺の居住者特性
護国寺の居住者特性をみていきます。まずは単身者世帯の比較です。
東京都ならびに文京区の人口のうち単身者世帯の割合[図表4]をみると、東京都全体で約47%、文京区で約57%です。護国寺の単身者世帯の割合をみてみると60%と単身者世帯の多いエリアです。2010年からの推移をみると、数としては2,000人弱増加しており、そのうちの9割が単身者です。
対象エリア内の居住者の年齢構成[図表5]をみると、男女ともに20~40代までの割合が高く、特に20代、30代の割合は全国平均よりも非常に高いです。この年代で50%近くを占めており、若い単身者層から人気の高いエリアということが数値からも読み取れます。
単身者人口は2035年まで増加を予想
■借家数(供給)、人口(需要)ともに伸びる文京区
住宅・土地統計調査「居住世帯のある借家数の変化」[図表6]によると、2008年から5年の間に23区全体で約190千戸の賃貸物件が増え、同調査による「空き家となっている賃貸住宅数の変化」[図表7]をみると、空き家数も5年の間で全体的に増えています。文京区をみてみると、供給にあたる借家数は5年の間に約39.4%増加、空家数も34.1%増えています。賃貸住宅の供給が高まるなかで、いかに居住者のニーズを捕まえるかが求められるエリアといえます。
エリア別に貸家の住宅着工数[図表8]をみると、東京都と23区の各年の増減は相関していることがグラフから読み取ることができます。文京区の供給傾向も東京都や23区の増減と似たような動きをみせおり、2000年頃から着工数が増加し、2006年以降は低い水準で抑えられていることがわかります。そして、2009年以降はまた増加傾向がうかがえます。
人口の推移[図表9]をみてみると、文京区の人口は年々増加していることがわかります。東京都によると、文京区の人口は2030年以降に徐々に減少を始めますが、単身者数は2035年まで増加傾向と予測されています。護国寺も2010年から単身者数は増加していることから、今後も単身者需要は安定しているエリアといえるでしょう。
◆まとめ
護国寺は東京23区の中央北より「文京区」に位置しています。「護国寺」駅を出るとすぐに、駅名の由来「護国寺」の荘厳な門が目に入ります。駅周辺は基本的にはオフィス街になっており、通り沿いには「講談社」をはじめとした出版社が多く建っています。また、お茶の水女子大をはじめとした教育施設が多い文教地区です。
賃貸市場に目を向けると、標準偏差の割合「e.標準偏差/d.切片」が23区平均よりも低く、賃料が変動する可能性の低いエリアです。また、文京区の単身者数は2030年まで増加傾向と予測されており、護国寺の単身者数も2010年から増加しています。人口の増加=需要の高まりと考えると、護国寺は今後も安定した需要があり、賃貸市場が大きく変動する可能性の少ないエリアと推測できます。
髙木 弘美
リズム株式会社
マーケティング事業部