東南アジア系の投資家も関係?日本にマンションが増加するワケ

我が国の人口は、平成22年に記録した約1億2800万人をピークに減少し続けています。平成30年には約1億2600万人にまで落ち込み、同年の出生数も、約91万8000人と過去最低の数字となりました。しかし、未曾有の人口減少時代に突入しているにもかかわらず、都心部では「マンションの建設ラッシュ」が止まりません。本記事では、『これからのマンションに必要な50の条件』より一部を抜粋し、人口減少時代にマンションが増加する理由を解説していきます。

人口減少社会でも、マンション建築は止まらない

人口減少社会にあり、量的な不足は解消されたのに、新設着工戸数、特にマンション建築が止まらないのはなぜなのでしょうか。

 

その理由として、固定資産税の関係で「更地にしておくよりも得」と考えて住宅の着工を選択する場合が多くあります。その場合、建てたあとにどうなるかよりも「建てること」が優先されるため、すでに飽和状態のエリアやあまり利便性の良くない土地に物件が建てられるケースも含まれます。節税という名目ではもう一つ、マンションが相続税対策になっている側面もあります。

 

そのほかにも、投資も含めて「建てれば売れるから」という理由があります。もともと日本は他の先進国に比べても新築の戸数が多いといわれています。同じ予算であれば新築を好む傾向にあるため、そもそも中古住宅の流通量自体が少なく、必然的に新築が売れるため次々にまた建てられていくのです。

 

特に今、2020年の東京オリンピックを間近に控えて、五輪需要から新築戸建て・マンションのいずれの場合も物件価格の上昇が見込まれています。また2019年内に行われるとされる消費税の増税や、住宅に関する公的なサポートである「住宅ローン減税」「すまい給付金」「住宅資金贈与の非課税制度」なども追い風になっています。

 

[図表]にある新設マンションの着工戸数を見ると、2009年にリーマンショックの影響でまさしく急激に下がっていますが、その後復調し、わずかな増減を繰り返している状況です。半数以上が首都圏、それに近畿圏が続きますが、地域による割合もほぼ横ばいです。

 

[図表]新設マンション地域別着工戸数の推移 注:マンションとは、鉄筋鉄骨コンクリート造、鉄筋コンクリート造又は鉄骨造の分譲共同住宅をいう。 国土交通省「住宅着工統計」より
[図表]新設マンション地域別着工戸数の推移
注:マンションとは、鉄筋鉄骨コンクリート造、鉄筋コンクリート造又は鉄骨造の分譲共同住宅をいう。
出所:国土交通省「住宅着工統計」より

 

マンションの増加の根拠になるのは、やはり「世帯数の増加」のデータです。特に都市部は人口流入も見られるため、まだまだ需要があるという見方が一般的です。政府も経済対策の一環として新築住宅への金融・税制面での優遇を止めるには至っていません。

 

また社会的な側面ばかりでなく、「住まい観」の変化もあります。かつては「いつかは自分の家を持ちたい」という理想を抱き、戦後に開発された郊外の住宅地などに立派な戸建ての住宅を構えることが人生の最終的な目標であったものです。そのためマンション住まいはそれまでのつなぎと考える人が多かったのですが、今はそうではなくなっています。

 

都心にファミリー層にも対応する高級マンションが増え、人の流れは「都心回帰」の様相を呈しています。長い通勤時間はむしろデメリットととらえられ、かつて人が郊外に向かい中心部が寂れてしまう「ドーナツ化現象」が叫ばれたのが昔のことのようです。

 

量的な充足を叶えた今、人々が住宅に求めるのは立地や利便性です。新しく建てられるマンションには、当然ながら最新の設備が備えられ、耐震性能、セキュリティ対策なども充実しています。

 

こうした設備へのニーズは高齢者のほうが切実です。座布団や敷布団、和式便器よりも体への負担が少ない椅子やベッド、洋式便器の生活が当たり前になり、バリアフリー対策なども含めて「年をとったらバリアフリーの設備やサービスを重視したい」と考える人も増えています。なかには、ときにわずらわしさもある地域の人間関係を離れて、「介護付き」のマンションを選ぶ人も少なくありません。

 

あるいは年齢を問わず、昨今増加の一途であるタワーマンションに憧れを持ち、郊外の自宅をそのままにして都心や駅前にできた最新マンションに移り住む場合もあります。結果的に空き家増加にも加担しているといえますが、マンションを「終の棲家」と考える人も増え、マンションの着工戸数の増加を後押ししています。

背景には、東南アジア系の「外国人投資家」の存在が

マンションでは、投資対象になることで起こる問題も見逃せません。現状では新しいマンションであれば、当然資産価値も高く、その評価は上昇傾向にあります。

 

特に首都圏の湾岸エリアなどでは販売されるとあっという間に完売するケースも多く、そこには中国を中心に東南アジア系の外国人の投資家の存在があります。日本の地価が高騰しても香港やシンガポールなどに比べれば利回りが良いとされ、人気を集めています。管理組合の総会を開けば外国人の姿も多く、意見を聞きたくても「言葉が通じない」ケースさえあります。

 

また最新のタワーマンションに限らず、郊外の物件や団地の空き戸を外国人が購入する場合もあります。外国人が多く暮らす地域では、当然ながら実際に住むために買うことが考えられますが、それ以外にも投資目的の場合があるようです。

 

売る側としては親から相続したものの処理に困っていたり、買い替えを目的にしていたりすることも多く、売れる相手なら誰でも売ってしまいたいと思うのが本音です。

 

一概に外国人だからいけないということはありませんが、管理費や修繕積立金の未払いに発展したり、母国へ帰ってしまい連絡が取れなくなったりする場合も見られ、共同住宅であるマンションでは修繕を含めた今後の管理に影響を及ぼすことになります。

 

こうした問題も含め、マンションの増加の問題は需要の見極めや質の問題がいっそう重要になってくるといえるでしょう。

生和コーポレーション株式会社 設計部副部長
美術学修士
一級建築士
賃貸不動産経営管理士
愛知県立芸術大学大学院非常勤講師 

1965年愛知生まれ。生和コーポレーション株式会社設計部副部長。愛知県立芸術大学大学院卒業後、建築事務所に入社、建築物デザインに携わる。その後生和コーポレーションに入社し、収益不動産の計画、設計、建築を担当。「企画・経営管理力」「豊富な商品力」「ニーズを具現化する技術力」「安定した高入居率」を武器に、ただ収益を上げるためだけではなく、「豊かな生活を送れる街づくり」を考えたマンションを建設している。美術学修士、一級建築士、賃貸不動産経営管理士。愛知県立芸術大学大学院非常勤講師。

著者紹介

愛知工業大学工学部建築学科 愛知工業大学工学部建築学科教授

1958年静岡生まれ。愛知工業大学工学部建築学科教授。同大学を卒業後、東孝光建築研究所、北岡デザイン事務所を経て、1986年「安井秀夫アトリエ」を開設する。インテリアから建築、都市計画と幅広く設計・デザイン活動を展開し、現在では海外でも設計を行っている。研究テーマは建築計画、建築設計、インテリアデザイン、環境デザイン。1997年国際照明デザイナー協会賞、1998年IIDA北米照明学会賞を、海外で受賞。国内でもNashopライティングコンテスト最優秀賞、旭硝子デザインセレクション大賞など、数多くの受賞経験を持ち、国内外で高い評価を受けている。

著者紹介

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