昨今推進されている「働き方改革」。政府主導の「プレミアムフライデー」をはじめ、最近では、日本マイクロソフトが週休3制を掲げたことでも話題になりました。しかし、これらは大企業に限った話であり、「うちの会社には関係ない」と他人事に感じている中小企業経営者もいることでしょう。そこで本記事では、数々の企業でコーポレートファイナンスを通じ新たなスキームを構築してきた株式会社H2オーケストレーターのCEOであり、一般社団法人M&Aテック協会代表理事および公認会計士久禮義継事務所代表である久禮義継氏が、新時代に中小企業が生き残るのに必要な「経営戦略としての働き方改革」を解説します。

「働き方改革」は大企業に限った話ではない

さて、今回から以下の4回にわけて中小企業における「働き方改革」について考えてみます(※)。

個別の施策の詳細までは言及すると深入りしてしまいますので、本連載では基本的に触れないことにします。

 

1.「働き方改革」の重要性

2.「働き方改革」が中小企業を成功に導くためのキモ

3.「働き方改革」において採用される個別施策のフィット感

4.「働き方改革」を推進するうえで必要となる「経営者の意識改革」

 

本記事では、中小企業における「働き方改革」の重要性について解説していきましょう。

 

ご存知のとおり、すでに「働き方改革」という施策自体は一般化しています。大企業はその重要性を強く認識し、猫も杓子も率先して対応を進めていますが、まずは改めて定義を確認しましょう。以下に、厚生労働省ホームページの記載を抜粋します。

 

我が国は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などの状況に直面しています。

こうした中、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることが重要な課題になっています。

「働き方改革」は、この課題の解決のため、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。

 

この定義は、「素晴らしい! 確かにそのとおり!」と誰がどう見ても立派なものです。そして、この定義を読み取ってみると、「働き方改革」を推進することによる果実(メリット)は、会社の規模や従業員数などに関係なく享受できるものといえるでしょう。だから、中小企業もうまく「働き方改革」を推進し、大企業と同じような成果を得ることを試みるべきなのです。

独自の働き方改革導入で、他社との「差別化」をはかる

上述のとおり、中小企業においても「働き方改革」は重要性が高いとともに、うまく活用すれば「経営に追い風を吹かせること」が可能です。

 

加えて、中小企業の場合、「働き方改革」を推進すると、次に示すようなプラス効果がより際立つと考えられることから、積極的に活用していくのが望ましいといえるのではないでしょうか。

 

[図表]「働き方改革」により想定されるプラス効果
[図表]「働き方改革」により想定されるプラス効果

 

他の中小企業に対して違った形での差別化要素となり得る

「差別化」とは、何も製品やサービスの品質・価格といった直接的な要素に限って実現できるものではありません。これは受け手が自由に感じるもの・決めるものであり、種類になんら制約はありません。ですから、中小企業の推進する独自の「働き方改革」そのものによって、ブランド力や信頼性の差別化をはかれる可能性は十分あると考えられます。

 

外部ステークホルダーから好意的に受け止められる

感覚論ですが、中小企業は小回りがきく経営ができる反面、行政が主導する施策や管理体制の構築といった点では対応が遅れがちです。社会的にも話題性が強い「働き方改革」を、中小企業経営者が率先して推進しているイメージを植え付けられれば、それをネガティブに感じるステークホルダーはいないはずです。特に、中小企業の場合は、会社によって「働き方改革」への対応の差が激しいと考えられるため、外部に対するメッセージ性は強いでしょう。

 

従業員のロイヤリティ向上や退職率低下が期待できる

特に中小企業の従業員の退職率は大企業よりも高いという報告があります。繰り返しになりますが、「働き方改革」とは「働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指」すことです。これをうまく活用すれば、従業員のロイヤリティは向上し、従業員の退職率を低下させることが期待できます。

 

以上、いかがでしたでしょうか? 中小企業においても「働き方改革」を推進する意義は大きいです。次回はこの「働き方改革」が、中小企業を成功に導くためのキモについて解説します。

 

 

久禮 義継

株式会社H2 オーケストレーターCEO/公認会計士久禮義継事務所 代表

 

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