2019年4月以降、順次適用開始されている「働き方改革法」は、「労働時間の削減」、「5日間の有給休暇の消化」、「同一労働同一賃金」などが企業に義務付けられています。しかし、人手不足が常態化した中小企業経営者においては、「働き方改革」に目を向ける余裕などないというのが現実ではないでしょうか。そこで本記事では、数々の企業でコーポレートファイナンスを通じ新たなスキームを構築してきた株式会社H2オーケストレーターのCEOであり、一般社団法人M&Aテック協会代表理事および公認会計士久禮義継事務所代表である久禮義継氏が、新時代に中小企業が生き残るのに必要な「経営戦略としての働き方改革」を解説します。

中小企業の経営者と従業員、一般的な関係性とは?

さて、前回は中小企業における「働き方改革」の重要性について解説しました(関連記事『他人事ではない!中小企業こそ「働き方改革」すべき3つの理由』参照)。今回は「働き方改革」が中小企業経営を成功に導くためのキモになる、ということについて解説したいと思います。

 

まずは、中小企業の特徴の一般的傾向について確認しましょう。これにはさまざまな切り口があると思われます。「働き方改革」は文字通り「ヒト」という経営資源に関する改革ですので、その「ヒト」という面にフォーカスして特徴を整理してみたいと思います。以下[図表]のようにいえるのではないでしょうか。

 

[図表1]中小企業の特徴(ヒトにフォーカスした場合の一般的傾向)
[図表]中小企業の特徴(ヒトにフォーカスした場合の一般的傾向)

 

いかがでしょう。これらに同意してくださる読者の方も多いのではないでしょうか。

社内の混乱を回避させる「トップダウン型」経営者

前述の中小企業の特徴を踏まえた上で、「働き方改革」を通じて中小企業の経営を成功に導くためにはどうすればいいのか? 特に留意すべきポイントは、具体的に次の4点と考えられます。

 

1. 経営者の強みを巧みに利用する

 

2. 一つ一つ階段をのぼる

 

3. 形式に拘泥しない

 

4. 経営者の意識改革

 

それぞれについて解説していきましょう。

 

1.経営者の強みを巧みに利用する

たとえば、ダイバーシティ推進というような個別施策を推進していくと、従業員は動物園のようなカオスの環境下におかれ、社内が混乱に陥ることがあり得ます。その場合、協調的な経営者であれば、社内をうまくコントロールできない可能性があるかもしれません。一方、(比較的ネガティブな文脈で捉えられることが多いですが)トップダウン型の経営者であれば、上記の混乱を回避でき、個別施策が有効に機能する可能性が高くなるのではないでしょうか。

 

2 .一つ一つ階段をのぼる

中小企業では「働き方改革」によって、システマティックな変革を目指すのは多くのリソースが必要であるので現実的ではありません。一度に全部やらず、少しずつ丁寧に進めていき、業績に与える影響と従業員の満足度が連動しているかどうかをモニタリングしていくことが望ましいのです。

 

ただ、朝令暮改は避けたほうがいいでしょう。経営者の朝令暮改(こちらも比較的ネガティブな文脈で捉えられることが多いですが)は小回りが効く事業運営という意味で、実は中小企業独特の長所となることが少なくありません。ただ、「働き方改革」はヒトの人生に多大な影響を与えかねない意思決定になりますので、慎重に物事を進めることが必要です。

 

3. 形式に拘泥しない

「働き方改革」を推進する際の前提として、「人事制度の再設計」といった枠組みの整備が必要という意見が一般的です。しかし、そのような制度設計がきちんと整備されている中小企業は限定的です。

 

中小企業においては、良くも悪くも経営者の「鶴の一声」で諸々の物事が決まりがちです。法制度上求められるものについては対応する必要がありますが、それ以外については神経質になる必要はないでしょう。「働き方改革」はあくまでも冒頭に挙げた目的を達成するための手段であり、見た目を取り繕うのは目的でもなんでもありません。

 

4 .経営者の意識改革

ここにつきましては、最も重要であるとともに、説明すべき内容が多岐にわたるので、今回の「中小企業の働き方改革シリーズ」の最終回(4回目)にまとめて解説することにします。

 

 

久禮 義継

株式会社H2 オーケストレーターCEO/公認会計士久禮義継事務所 代表

 

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