※本連載では、公認会計士・米国公認会計士の資格を持ち、数々の企業でコーポレートファイナンスを通じて新たなスキームを構築してきた株式会社H2オーケストレーターCEO、一般社団法人M&Aテック協会代表理事および公認会計士久禮義継事務所代表である久禮義継氏が、新時代に中小企業が生き残るための経営戦略を提案していきます。

「経営コンサルタント」は使わない方がいい⁉

さて、今回は冒頭に少し逆説的なコメントを。

 

中小企業においては、中小企業診断士、◯◯コンサルタントといった専門家から経営面でのサポートを得ている方も多いでしょう(※1)。

※1 今回の連載においては、名称の如何を問わず、企業の戦略検討・立案に一定の助言やサポートなどを行う専門家を「経営コンサルタント」と称することにします。

 

しかしながら、残念なことに、実感としていうと…、

 

「経営コンサルタントを好んで使う会社はかえって成長しません」。

 

なぜなら、経営コンサルタントのサポートを得た場合、次のような負のスパイラルに陥るケースが多いからです[図表1]。

 

[図表1]
[図表1]

 

じゃあ、経営コンサルタントを使わない方がいいんじゃないですか? いえ、そういうわけではありません。彼らは専門家として「うまくハマれば」非常に力強い存在なのです。

中小企業に「うまくハマる」経営コンサルタントの条件

経営コンサルタントという肩書きだからといって誰でもいいわけではありません。以下はさほど奇をてらった内容ではありませんが、注意的に提示しておきます。

 

1、相性がいいこと

所詮人と人のコミュニケーションなので、相性が良くないとアウトプットの質が劣化してしまうリスクがあります。

 

2、長年の経験

できれば長年の経験を有する経営コンサルタントに依頼することが望ましいです。座学は専門書を買えば事足りることです。長年の経験の積み重ねによる知見やノウハウを買うことに意義があります。

 

3、コンサルタントの得意業界とのフィット

それぞれの業界には、特有のしきたり、独特のお作法が存在することが多いです。業界に慣れ親しんでいない経営コンサルタントの場合は、そのような特徴的なポイントをスルーして杓子定規に検討を進めてしまうリスクがあります。できれば、あなたの会社と同一の業界で実務経験を有している方が実務の肌感覚がわかっているので、望ましいでしょう。

 

[図表2]
[図表2]

ゆるーい感じでサポートをお願いすると「ナメられる」

では、最後に経営コンサルタントのサポートを得る場合の正しいステップはどうあるべきなのでしょうか? それは次の通りです。

 

【STEP1】ひたすら自分で考える

ここでは経営コンサルタントを雇いません。 まずは自分で考える。また、考える。さらに、考える。 ギリギリまで自分を追い込むのです。「どうせ専門家がうまく考えてくれるから」という甘いことは決して考えていけません。もし貴方が経営陣であるならば、実務担当者に専門家を雇うことを伝えない方がいいでしょう。

 

【STEP2】自分で戦略仮説を設定する

ここでもまだ経営コンサルタントを雇いません。自社単独で戦略仮説を設定するのです。 極論をいえば、内容が稚拙であっても構いません。STEP1で述べたようにひたすら考えて、一定のアウトプットを捻り出す「思考の見える化」という作業がとっても大切なのです。「思考の見える化」は思ったよりも大変な作業です。この過程で自分に対して新たな学びを醸成し、それがさらなる「思考の深化」を生み出します。

 

【STEP3】経営コンサルタントとのディスカッションを開始する

ここで初めて経営コンサルタントを雇ってディスカッションを始めるのです。 肩書きだけではない優秀な経営コンサルタントは文字通り戦略検討・立案のプロです。そのため、ゆるーい感じでサポートをお願いすると、はっきりいって「ナメられます」。

 

その理由は以下の通りです。

 

実は、経営コンサルタントのインセンティブは金銭的報酬を得ることだけにとどまりません。現場での知見やクライアントとのディスカッションを積み重ねることを通じて経験値を上げることができることにも大きな価値を見出します(ロールプレイングゲームにおいて主人公が戦っていくことによってレベルを上げていくようなものです)。

 

これにより自らの価値を高め、その繰り返しがさらに価値を高めるというこの正の連鎖(スパイラル)を築きます。逆をいえば、「生煮えの状態」でぶつかると、彼らは経験値という対価が期待できないと考え、本気を出すことなく、赤子の手をひねるかのように機械的に上っ面の知見を振りかざして業務を終える可能性があります。

 

さらに悪いのは、そのような「本気でない」アウトプットが出てきたとしても、企業の実務担当者は検討の目的、問題の所在などが中途半端な理解であるため、経営コンサルタントからの教えが何でも大したものに見えてしまうリスクがあるのです。

 

したがって、企業の実務担当者は、自らが雇う経営コンサルタントが「壁打ち相手」として相応しいかどうかの評価が必要です。逆に、経営コンサルタントから見てもその担当者が「壁打ち相手」として相応しいと思わせることも非常に重要なのです。

 

【STEP4】専門家とのディスカッションから得られたアウトプットを実行に移す

ここまでのSTEPは所詮座学の域を出ていません。実際に現場に出ていき仮説検証を繰り返し、最適解まで導く必要があります。その場合、経営コンサルタントからのアウトプットで腹落ちしていない部分については、無理に従う必要はありません。自らが信じる道を進み、やはり違うということになったら、経営コンサルタントの意見を省みたり、自ら別の道を探ってみればいいでしょう。

 

私がこのSTEPの中で個人的に一番重要だと思うのは、STEP3です。経営コンサルタントとの心理戦です。これはウェットで生々しい話なので専門書などで記されるような内容ではありません。経営コンサルタントに対してマウントを取る必要はありませんが、ガップリ四つに組めるようにする(相応の知識を身に着ける)ことが、必要十分なアウトプットを引き出す上で非常に重要なポイントとなります。

 

さて、いかがでしたでしょうか?

 

途中でも述べたとおり、もちろん使い方次第で、経営コンサルタントは大変力強い存在となりえます。互いに手を取り合って楽しいダンスを踊って、ハイスコアを目指しましょう。

 

 

久禮 義継

株式会社H2 オーケストレーターCEO/公認会計士久禮義継事務所 代表

 

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