いきなりSWOT分析はMECEの点では雑?フレームワーク実践

※本連載では、公認会計士・米国公認会計士の資格を持ち、数々の企業でコーポレートファイナンスを通じて新たなスキームを構築してきた株式会社H2オーケストレーターCEO、一般社団法人M&Aテック協会代表理事および公認会計士久禮義継事務所代表である久禮義継氏が、新時代に中小企業が生き残るための経営戦略を提案していきます。

戦略検討において有効な「思考のステップ」とは

戦略フレームワークの利用マニュアル「実践編」を解説します。戦略フレームワークに振り回されては本末転倒ですので、事故を起こさないように、しっかりハンドルを握り、丁寧に運転していきましょう。

 

[図表1]
[図表1]

 

(1)「木を見て森を見る!」問題の本質を認識することを心がける

よくある間違いが、具体的な問題を把握した際、そのまま具体的な解決策を引き出そうとすることです。拙速なアクションが短期的に効果をあげることはありますが、また同じような問題が発生するケースが多いのです。

 

ですから、一旦問題を抽象化させて、問題の本因を理解して、本質的な解決策を見出した上で、具体的な解決策を探るというステップを取ることが望ましいです。

 

これは、戦略検討において非常に重要なポイントとなります。一つ例をあげてみましょう。

 

舞台はコンビニエンスストアです。

 

[図表2]
[図表2]
 

 

その店舗は、売り上げにも影響が出るほど、万引きに悩まされています。この問題の原因は一見、万引きを見逃してしまう従業員の姿勢や資質に矮小化されがちですが、本質はそこではありません。

 

そこからまず、「教育の不徹底」という本質的な原因をあぶり出します。その教育のための、従業員の管理マニュアルにこそ、何か不備があるのでは考えます。そこには、効果的な予防策がやはり足りてなかったことが分かり、具体的な解決策として「顧客への声がけ」という項目が加わり、実行されることになりました。

 

ちなみに、具体的事象から直接導き出された具体的解決策と、上記ステップを踏んだ結果導き出された具体的解決策が同一、ということも起こり得ます。しかし、それはあくまで結果論に過ぎず、冒頭に記載のとおり、このステップを踏んで問題の本質を捉えようとする姿勢が重要なのです。

「会社がとるべき戦略・戦術」を明確に整理する

(2)「強いスクラムを組む!」前提条件を明確にしてチーム全体で共有する

戦略検討を進めていく場合、市場(業界)の定義、競合の範囲、ターゲット顧客層などの前提条件を明確にして、これらを戦略検討チーム内でしっかりと共通認識しておく必要があります。これらが不十分な状態で検討を進めても、軸の定まらない分析となる恐れが高くなるためです。

 

また、前提条件の明確化は慎重に行う必要があります。当然ながら分析結果は前提条件によって変わってくるため、前提条件を適切に設定しないと、判断を誤る原因となります。

 

(3)「急がば回れ!」結論を出すことを焦らない

特に注意しなければいけないのは、中小企業の経営分析の王様、SWOT分析です(関連記事『中小企業に多い!? 戦略フレームワークの「誤用あるある」3つ』参照)。最も利用されており、一番目に触れる機会が多いフレームワークであることから、関係者の理解も容易です。

 

しかしながら、冒頭からSWOT分析に突入してしまうというケースが散見されます。100%誤りというわけではありませんが、精度やMECE(※1)という点ではちょっと乱暴な気がします。

 

中小企業の場合、非常に慣れ親しんでいるSWOT分析のアウトプットは戦略検討の一つの区切りになります。したがって、適宜PEST分析や3C分析といった他の戦略分析フレームワークも活用しながら、一つ一つ丁寧に積み上げていって結論を導き出した方が望ましいでしょう。

※1 MECE(ミーシーまたはミッシー)とは、Mutually(お互いに)、Exclusive(重複せず)、Collectively(全体に)、Exhaustive(漏れがない)という意味を表します。これはダブりをなくすという効率的側面と抜け漏れをなくすという効果的側面の双方に留意しなければならないというロジカルシンキングの基本概念です。

 

(4)「分析だけで終わらせない!」行動に結びつけるべく最後までやりきる

SWOT分析は現状把握には有用ですが、これから企業が何をどのようにして戦っていくかという観点では明示性にかけるきらいがあります。したがって、もう一歩進んで、クロスSWOT分析を行って、対象会社がとるべき戦略・戦術を明確に整理するのです。

 

クロスSWOT分析に基づき、SWOT分析の結果を「強み × 機会」、「強み × 脅威」、「弱み × 機会」、「弱み × 脅威」の4つのブロックに分けることになります。

 

それぞれのブロック毎に企業が取るべき戦略の方向性を整理すると、図表3のようにまとまります。

 

[図表3]クロスSWOT分析に基づく企業のとるべき戦略の方向性の整理
[図表3]クロスSWOT分析に基づく企業のとるべき戦略の方向性の整理

 

 

久禮 義継
株式会社H2 オーケストレーターCEO
公認会計士久禮義継事務所 代表

株式会社H2オーケストレーター・CEO
一般社団法人M&Aテック協会・代表理事
公認会計士久禮義継事務所・代表
 

1994年、同志社大学経済学部在学中に公認会計士第2次試験合格。1995年、同校卒業後、中央監査法人に入所。1998年、日本興業銀行ストラクチャード・ファイナンス部へ出向。2000年、同法人金融部に配属。2001年、ドイツ証券投資銀行本部に転じる。2006年、ミシガン大学ビジネススクールを卒業後、The Bridgeford Group(ニューヨーク)にて勤務。2007年に帰国し、JPモルガン証券投資銀行本部、みずほ証券グローバル投資銀行部門、Deloitteなど数社を渡り歩く。2013年、NEC経営企画本部に転じ、2019年独立。これまで、規模・地域・業種を問わず数兆円超(企業価値)のM&Aアドバイザリー、民事再生法を活用した事業再生スキーム(国内初案件)におけるM&Aアドバイザリー、事業法人グローバルIPOにおける共同主幹事(2002年国内最大案件)、特殊法人の民営化関連アドバイザリー、退職給付信託や各種証券化スキームの開発等、投資銀行業務における重要案件を幅広く担当した経験を有する。NECでは、上級役員の参謀役として経営の中枢に携わり、中長期戦略・グローバル戦略の立案・実行部隊として、ダボス会議事務局、グローバルアライアンス推進、新規事業開発、中期経営計画立案などに従事。公認会計士、事業承継士、米国公認会計士(未登録)。著書に『流動化・証券化の会計と税務』(中央経済社)、「スモールM&Aの教科書 −売買当事者が安心して取り組める実務知識−」(中央経済社)など。

著者紹介

連載令和時代に生き残る!中小企業のための新しい経営戦略

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