再開発で生まれ変わった駅前と、古きよき街並みが共存
「東中野」駅はJR中央・総武線、コリアンタウンとして有名な「大久保」と、サブカルチャーの町として有名な「中野」の間に位置しています。東中野一帯は都心に近いため比較的早い段階で住宅街として形成されてきましたが、もともと駅前は線路の北側、南側ともに細い道があるだけで、ロータリーや駅ビルのないコンパクトな駅でした。
そんな「東中野」駅が変わり始めたきっかけは、都営大江戸線が開通です。都営大江戸線が開通したことをきっかけに通り沿いの歩道が拡幅され、通り沿いに中高層のマンションが建築され始めました。なかでも2007年に竣工された地上31階建ての商業・賃貸住宅複合施設「ユニゾンタワー」は東中野のランドマークとなっており、マンションのなかにはスーパーや飲食店、スポーツジムなどが作られています。最盛期の勢いほどないものの現在でも戸建て・マンションの建設がされており、空き地もちらほら見られます。今後も徐々に開発が進んでいくことでしょう。
一方、変化を続ける開発エリアとは違い、変わらないのが東中野の街並みです。通り沿いから一歩入ったところは閑静な住宅街となっており、戸建てや低層のアパート・マンションが立ち並びます。駅の北西に伸びる商店街「東中野銀座商店会」は飲食店や病院、薬局、金融機関など、生活に密着した店が多く、4月の桜まつりなどの年間行事も盛んに行われており、東中野らしい地域に密着した商店街です。また、「東中野駅前飲食店会」、通称「ムーンロード」も有名で、一歩足を踏み入れると昭和の雰囲気が漂う様々な飲食店が軒を連ねています。
駅周辺の開発で変わり続けながらも、変わらないゆったりとした雰囲気の街並み。そしてその生活利便性の高さが、昔も今も変わらずに人たちを魅了し続ける理由といえるでしょう。
新宿まで2駅! 各方面の路線も利用可能で、あらゆる交通手段に対応
「東中野」駅からはJR中央・総武線と都営大江戸線の2路線が利用可能です。中央・総武線はその名の通り、東京の“中央”を通る路線です。また、大江戸線は「地下の山手線」ともいわれるように、東京の都市部を環状に通る路線です。ともにビジネス街へのアクセスがよいため、都心で働く会社員から人気の高い路線です。
また、「東中野」からは日本一のビッグターミナル「新宿」駅まで2駅と近く、都内各地への素早いアクセスが可能です。「新宿」からはJR山手線が使えるので「池袋」、「渋谷」などの主要エリアへはもちろんのこと、多種多様な路線を利用することで通勤や通学、プライベートで利用するほとんどの場所へ快適に移動できます。
電車での移動手段以外にも、いくつかの主要道路が走っていて、車での移動はもちろん、バスも頻繁に運行していて、さらには自転車の移動も非常にしやすいエリアです。オフィスまでの通勤も、休日のちょっとしたレジャーも、どこに行くにも便利な東中野は、都心で働く単身者に需要の高いエリアでもあります。
築古物件が多いが、コンスタントに新築物件の供給も
■「東中野」駅周辺の賃貸市場
「東中野」駅の賃貸市場を分析していきます。まずは賃料相場と築年数の比較です(図表2)。23区平均と比較すると、賃料相場は23区の3,339円/m2に対し、東中野は3,573円/m2です。築年平均の比較を見てみると、23区平均の21年に対して「東中野」駅の築年平均は27年と全体的に古い建物も多いエリアですが、新築物件もコンスタントに供給されており、新築物件が賃料相場を引き上げています。
次に重回帰分析で「築年数」「徒歩分数」「面積」の3つの変数が賃料にどの程度影響を与えているかを分析します。「■徒歩・築年・面積による賃料の重回帰分析結果一覧」(図表2)を見てみると、東中野駅の単身者物件の月額賃料は「d.切片」の43,695円からスタートし、徒歩1分ごとに「a.徒歩」の684円ずつ、築年数1年ごとに「b.築年」の725円ずつ値下がり、面積1m2ごとに「c.面積」の2,428円ずつ値上がることがわかります。
「賃料に対する影響割合の比較」(図表2)から東中野駅の賃貸市場の傾向を分析すると、築年による賃料下落「b.築年/d.切片」、賃料のばらつき(市場の幅)を表す「e.標準偏差/d.切片」ともに23区平均よりも高い水準です。
■東中野の居住者特性
東中野の居住者特性を見ていきます。まずは単身者世帯の比較(図表4)です。東京都ならびに中野区の人口のうち単身者世帯の割合をみると、東京都全体で約45%、中野区で約60%です。中野区は都心に出やすく、通勤・通学に便利なため、全体的に単身者の多いエリアです。東中野の単身者割合も約64%と高く、単身者の需要の高いエリアであることがわかります。
次に対象エリア内の居住者の年齢構成(図表5)をみると、20代、30代が突出して多く、20~49歳の割合の合計で約54%と若い世代が5割以上を占めています。中央線らしい「ゆるい」文化とビジネス街・繁華街への出やすさ、そして賃料のお手頃さが若者からの指示の高い理由でしょう。また、男女比率は全体としては50:50と半々ですが、単身者の多い若い世帯でみると男性比率の高いエリアです。
人口減のなか「入居者ニーズの見極め」が賃貸経営の鍵
■借家数(供給)が伸びる一方、人口(需要)の減少が予測される中野区
「東中野」駅の所在する中野区は23区の西部に位置しています。区内は低層中層の住宅街・マンションが密集したエリアが多く、渋谷区・新宿区・豊島区など繁華街・ビジネス街と隣接していることから、都心のベッドタウンとして機能しています。
住宅・土地統計調査「借家数の変化」(図表6)によると、2008年から5年の間に23区全体で約190千戸の賃貸物件が増え、同調査による「空き家の変化」(図表7)を見ると、空き家数も5年の間で全体的に増えています。中野区を見てみると、供給にあたる借家数は5年の間に7.1%減少しているものの、空き家数は95.7%増と前回の調査時と比べるとおよそ2倍になっています。
エリア別に貸家の住宅着工数(図表8)を見ると、東京都と23区の各年の増減は相関していることがグラフから読み取ることができます。中野区の供給傾向も東京都や23区の増減と似たような動きを見せています。中野区の着工数も2006年以降、低い水準で抑えられており、2015年の供給も比較的低い水準に収まると推測されます。
人口の推移(図表9)を見てみると、中野区の人口は年々増加していることがわかりますが、東京都によると中野区は2020年あたりから徐々に減少を始めると予測されています。供給が増え、需要の減少も予想される中野区は、希少性の高い物件や差別化された物件など、入居者のニーズを見極める知識が必要なエリアといえるでしょう。
◆まとめ
JR中央・総武線「大久保」と「中野」の間にある「東中野」駅一帯は、都営大江戸線が開通したことをきっかけに開発が進められてきたエリアです。通り沿いの歩道が拡幅され、通り沿いに中高層のマンションが建築され始めました。現在でも何か所かで戸建て・マンションの建設がされており、今後も徐々に開発が進んでいくことでしょう。
一方、変化を続ける駅前とは違い、変わらないのが東中野のゆったりとした雰囲気の街並みです。通りから一歩中へ入れば、戸建てや低層マンションが中心の閑静な住宅街。駅の北西に伸びる商店街「東中野銀座商店会」は飲食店や病院、薬局、金融機関など、生活に密着した多くの店が軒を連ねています。また、「東中野駅前飲食店会」、通称「ムーンロード」も有名で、昭和の雰囲気が漂う様々な店が軒を連ねています。
不動産市場に目を向けると、東中野の賃貸市場は築年による賃料の下落傾向、賃貸市場のばらつきを表す標準偏差の値が大きいことが特徴です。また、借家数(供給)が伸びる一方、人口(需要)の減少も予測されており、入居者のニーズを見極める知識が必要なエリアといえます。