※本連載は、弁護士法人Martial Arts代表、弁護士・堀鉄平氏の著書、『弁護士が実践する 不動産投資の法的知識・戦略とリスクマネジメント』(日本法令)から一部を抜粋し、ワケあり物件(凹みがある状態)を法的知識を駆使して安価で手に入れ売却する「オポチュニティ型」と呼ばれる投資手法を紹介していきます。今回は、不動産の売買において隣地との将来的なトラブルを避ける上でも重要な、土地の「境界」を確定する方法について見ていきます。

境界紛争が筆界の確認なのか、所有権界の話なのか?

◆凹みの戻し方

境界が未確定であることが凹みですので、要するに境界を確定できればよいわけです。

 

戻し方①立会いによる境界確定

まずは、立会いを拒否している隣地所有者に対しては、いきなり筆界特定制度等を利用するのではなく、立会いをすることの意義を説明して説得することです。立会いを拒否する理由は、境界確定の不安、境界確定の必要がない、境界に納得しないこと等と思われますので、公図、地積測量図、区画整理図、配分図、現況測量図等の資料を提示して境界位置が妥当なものであることを示します。

 

既存の境界標があるのであれば、もちろんそれを示します。また、境界の立会いは後日の紛争防止のためにお互いにとって有意義なものであること、代理人を立ち会わせることも可能であること等も告げてあげるとよいでしょう。

 

測量図には、確定測量図と現況測量図があります。確定測量図は、敷地を取り巻く隣地の所有者が境界線と境界点について合意している測量図です。合意の証しとして測量図を添付した「筆界確認書」をつくります。筆界確認書がある確定測量図があれば、境界標がなくなっていても復元できます。これに対して現況測量図は隣地の所有者の意思とは関係なく土地の所有者の主観に基づいて測量しただけで、境界標を改めて設置できません。

 

戻し方②法的手続による境界確定

隣地所有者の立会いが拒絶されたり、合意できない場合には、(2)で紹介した筆界特定制度や境界確定の訴え(境界確定訴訟)を提起することになります。筆界特定の結果に不服があれば境界確定訴訟を提起することもできますし、筆界特定の申請をせずにいきなり境界確定訴訟を提起することもできます。

 

また、当事者間の争いが所有権界の争いであれば、所有権確認訴訟を提起することになります。

 

したがって、境界紛争の内容が筆界の確認の話なのか、所有権界の確認の話なのかを見極めて、適切な手続きをとる必要があります。例えば、単に隣地との境界が明らかでないという場合は筆界の確認であり、一方、隣地の所有者が自分の土地内と称して建物をはみ出して建てている場合は所有権界の確認となります。

 

戻し方③筆界と所有権界の一致

筆界と所有権界が一致しない場合、当事者間の所有権の合意は第三者を拘束しないので、後に当該土地が売買された場合、買主との間で、売主の担保責任や錯誤が問題となり得ます。したがって、所有権界が決まった際に筆界とずれている場合は、筆界を所有権界に合わせるべく、両土地を合筆し、新たに所有権界に沿って分筆し、登記する必要があります。

 

例えば、[図表2]のような土地Xと土地Yの筆界が点A・Bを結ぶ直線であり、甲と乙の所有権界が点D・Cを結ぶ直線で確定した場合、土地Xを点D・Cを結ぶ直線により分筆登記をして、点A・B・C・D・Aで順次囲まれた土地について甲から乙へ所有権移転登記を行うことになります。

 

この場合、土地Xの所有者甲が判決などに応じて、速やかに分筆登記を申請して、所有権移転登記申請に協力してくれればよいのですが、甲が何ら行わないときには、乙は判決を代位原因として、所有権移転登記請求権に基づく債権者代位権を行使することにより、甲に代わって土地Xの分筆登記を行うことになります。

 

[図表2]筆界と所有権界の一致
[図表2]筆界と所有権界の一致

 

以上のように、境界未確定の場合でも、必要な手順を踏んでいけば、確定できないということはおよそありません。したがって、境界未確定の土地は、一般の方が手を出しづらいがために価格が相場より下がることになりますが、このような手順が面倒でない人にとってはお買い得と言えます。

 

 

堀鉄平

弁護士法人Martial Arts/代表 弁護士

 

弁護士が実践する 不動産投資の法的知識・戦略とリスクマネジメント

弁護士が実践する 不動産投資の法的知識・戦略とリスクマネジメント

掘 鉄平

日本法令

本書は、弁護士業務のかたわら、不動産投資家としても成功をおさめている著者が、その両方の視点から、不動産の投資・経営に有益な法律知識と、それを活かした資産拡大の方法について解説した、類を見ない1冊。法律に馴染みの…

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