「分け合う」意識が会社に利益をもたらす
所有と経営が一体化したオーナー企業の場合、会社を「自分のもの」と勘違いしている経営者がいます。だから利益が出れば自分のものと錯覚し、できるだけ自分の懐に入れたいと思ってしまうのです。
しかし会社の利益は社員の努力の賜物であり、経営者だけの力で稼ぎ出したものではありません。それを経営者が独り占めしようとするのは社員から利益を奪う行為そのものであり、そんなことを続けていては社長個人の私腹が肥やされるだけで会社の利益は足りなくなっていきます。
ここに「三つのみかん」があるとしましょう。この三つのみかんを家族4人の間で奪い合うと必ず一つ足りなくなります。反対に4人みんながちょっと遠慮し、半分ずつ分け合うと必ず一つ余ります。つまり奪い合うと足りなくなり、分け合うと余るのです(図表2)。
奪い合う家族は常に誰か一人が我慢し、かつ足りない状況が続きます。一方の分け合う家族はみんながうれしい気持ちになるうえに、みかんが一つずつ余り続けます。この〝一つの蓄積〟の力は大きく、1日や2日ではそれほどでもありませんが、10年や20年も経てばぼう大な量が余ることになるわけです。
一方、奪い合った結果のみかん一つの不足分も同様、年数を重ねるほどに取り返しのつかないほどのマイナスの蓄積となり、やがて家族を苦しめるようになっていきます。
これを会社経営に置き換えた場合、経営者が多く奪えば社員の取り分はそれだけ少なくなり、会社の利益も目減りして一向にたまっていきません。
経営者が分け合う意識を持ち、利益を分配することでみんなが喜び、かつ利益が会社にどんどん蓄積されていくのです。
神吉武司
株式会社吉寿屋 相談役