ケチらず、たくさん、何度も出して印象づけると効果的
法則1 ご褒美は「金額」「量」「回数」ともにたくさん出す
私は社員にご褒美を出す際は、ケチらずにたくさんの量を渡してきました。金額や量ももちろん回数も同様です。年に一度だけ10万円を渡すのであれば、5回に分けて2カ月に一度、2万円ずつ渡していくほうが効果的です。
ご褒美は外発的動機づけに該当しますが、残念ながら外からの刺激は少しずつ忘れてしまうのが人間の性です。年に一度の10万円の報奨も当然ながらうれしいものですが、それ一度だけだと喜びの感情が薄れてしまいかねません。
そうではなく、毎月のように何かしらのご褒美がもらえる計画を立てておけば、社員の記憶に残り続けるために、みんなよく働いてくれて利益も勝手に伸びていくのです。
確かに赤字で苦しい時期にはご褒美を継続的に出すのは難しいでしょう。その場合は期末にタオル1本を渡して奮起を促すことに加えて、例えば毎月社員を何名かでも食事に誘うなど、日々頑張って働いてくれている社員を継続的に労(ねぎら)う工夫をされるといいでしょう。
量ということで言えば、以前、「夏休みプレゼント」として社員のお子さん(0歳から大学4年生までの206名)全員に、メッセージを添えて「じゃがりこ」12個入りケースをプレゼントしました。一家に1箱ではありません。1人に1箱です。
そうしなければ兄弟の多い家庭では年上の子どもが独り占めをしてしまい、下の子が悲しい思いをするかもしれないからです。全員にプレゼントすることで、子どもたち全員に喜んでもらいたかったのです。
なぜ、「その商品で最高のもの」を選ぶのか?
【事例】 果物や野菜をプレゼント
全社員に配るご褒美は複数あるなかで一例を挙げると、「果物や野菜のプレゼント」があります。3月には「高級福岡あまおうイチゴ」2パックを、4月には「大玉すいか」2玉を、9月には「最高級梨」1ケースを、それぞれ全員の家に送っています。
さらにここ3年は、〝幸せ野菜〟と称して10月には「淡路の玉ねぎ」10キロと「北海道のじゃがいも」6キロをそれぞれの家庭に送っています。
対象者は社員や準社員だけでなく、まだ働き始めて半月にも満たないアルバイトも含めた〝全員〟です。「そこまでする必要はない」という考えもあるかもしれませんが、たとえ半月であっても縁があって当社に来てくれた大切な人に変わりはありません。その感謝の気持ちとともに、これからもずっと働いてほしいとの願いを込めて渡しています。
そのほか果実プレゼントでは5月に静岡の最高級マスクメロン2玉を10名に、7月には最高級桃1箱を10名にそれぞれプレゼントしています。
これらの品々をお渡しする際に大切にしているのは、〝その商品で最高のもの〟を選ぶことです。次項で説明する高級車としてベンツやレクサスの支給を思い立ったのも、手を出しやすい車よりもプライドを持って乗ってもらえると考えたからでした。
もちろん車のような高額商品だけでなく、前述のような果物も同様です。スーパーで気軽に買える果物ではなく、一般的な商品の何倍もするような最高級のものを選りすぐってきました。自宅用で高級な果物を買う機会は少ないはずですから、社員と家族の皆に喜んでもらえるのです。
以前、静岡のマスクメロンを配った際にもらったお礼状の一つに「子どもがおいしいおいしいと言いながら最後の最後までかぶりついていました」と書いてあるのを読み、思わず笑みがこぼれました。そうしたちょっとした幸せを、すべての社員にできる限り多く味わってもらいたいのです。
法則2 「ご褒美」は時代によって変化させる
ご褒美の内容は時代に応じて変えてきました。例えば、今のように車離れが進む前の時代には、売上高ナンバーワン、前年対比ナンバーワンの営業社員に高級車のベンツまたはレクサスを営業車として支給していた時期もあります。高級車は憧れの象徴ですから、夢を持って営業活動に励んでほしいとの願いを込めたのです。
売上高ナンバーワンだけでなく、前年対比ナンバーワンを加えたのにも理由があります。一部の優秀な人だけでなく、例え売上が少なくても努力した社員が達成できる目標にしたかったからです。そうすることで全社員にやる気を持って働いてもらい、これまで以上に能力を発揮してほしいと考えました。
あるいは業界内で個人所得日本一を目指し、年間優秀社員に所得3000万円、年間優秀準社員に所得1000万円をそれぞれ支給したこともあります。これまで当社では笑顔や会社の美しさ、挨拶などさまざまな面で一流を目指してきました。その一環として社員の待遇でも一流になるべく、業界で日本一の所得を実現することにしたのです。
正社員に3000万円という高額所得も驚かれると思いますが、こだわったのは準社員への1000万円でした。ここまでお伝えしてきたように、一部の社員への高額報奨ではなく、できるだけ多くの社員に公平に分配することを大切にしているからです。
神吉武司
株式会社吉寿屋 相談役