※本連載では、株式会社吉寿屋相談役・神吉武司氏の著書、『社員の能力を劇的に伸ばす すごいご褒美 』(幻冬舎MC)から一部を抜粋し、社長が贈る「ご褒美」によって社員のやる気を引き出し、企業の生産性を高める方法を紹介しています。

なぜ「ご褒美」に「見返り」を求めてはいけないのか?

お金や物を渡した相手から見返りを求めるのはなぜでしょうか。それは相手から奪う気持ちがあるからです。「自分はしたのだから、自分もしてほしい」。それは相手のために行動しているように見えて、実は相手から何かを奪おうとしていることにほかなりません。

 

経営者の方には、ぜひ、相手から奪おうとするのではなく「分配する意識」を大切にしてほしいと思います。そもそも「ご褒美」は、社員が稼いでくれた利益の一部を返しているだけなのですから、受け取った社員が感謝を述べるどころか「ご苦労様でした」と経営者が社員に労(ねぎら)いの一言をかけるのが筋のはずです。それを「社員に与えてやったのにお礼の一つもない」と憤るのは経営者の思い上がりもいいところです。

 

以前、臨時賞与で500万円を渡した社員が私に言いました。「500万円もいただいたので明日からさらに頑張ります」と。それに対して私はこう言いました。

 

「ちょっと待ちなさい。500万円分も頑張ろうと思ったら体が持たないでしょう。そもそも今から頑張ってもらうために渡したのではなく、これまでの実績に報いるために渡したのです。だから頑張る必要なんてありませんよ」

 

するとその社員は「気持ちがすっと楽になりました」と言ったのです。私にはそんな気持ちはなくても、社員のほうは対価が求められていると感じていたのでしょう。

 

この社員のほかにも、「報奨をもらったので頑張ります」と書いた手紙をくれる社員はたくさんいます。しかし、あくまでも報奨は「今までの頑張りに対する労(ねぎら)い」なので、本当はそれ以上頑張る必要はありません。それでも社員の気持ちは前向きになり、結果としてより一層仕事に励んでくれるようになるのは事実です

 

経営者は、利益を社員に配った時点で忘れることです。もしも覚えていたとすると、顔を合わせてもお礼を言わない社員に対して「なんと失礼なやつだ」と腹が立ち、次から心良くご褒美を出せなくなるかもしれません。

 

仏教でも執着が苦の根本原因だと説いています。渡したことに執着せず、今以上に社員を幸せにすることだけを考えていれば、忘れた頃に結果として返ってくるかもしれません。それを期待するわけではありませんが、社員の幸せを一心に願う経営者の思いが〝良い会社〟をつくっていくのは確かです。

社員の能力を劇的に伸ばす すごいご褒美

社員の能力を劇的に伸ばす すごいご褒美

神吉 武司

幻冬舎メディアコンサルティング

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