※本連載では、株式会社吉寿屋相談役・神吉武司氏の著書、『社員の能力を劇的に伸ばす すごいご褒美 』(幻冬舎MC)から一部を抜粋し、社長が贈る「ご褒美」によって社員のやる気を引き出し、企業の生産性を高める方法を紹介しています。

社員を「形だけ」「口だけ」で褒めても意味がない

 法則  品物だけでなく、言葉や行動でも感謝を示す

 

働く人のモチベーションは外発的なものと内発的なものに分けられるといわれています。「外発的モチベーション」とは外部の刺激で意欲を出すこと、「内発的モチベーション」とは自ら意欲を生み出すことをそれぞれ意味します。

 

会社での人材育成に限らず、子育てでもそうですが、人を育てる際に最も難しいのは外発的モチベーションを内発的モチベーションにいかに結びつけるか──つまり「本人のやる気を引き出し、自発的・主体的に行動できるようにする」ことではないでしょうか。

 

そんな、自分で考え行動できる人材を育てるためには、伴走者となりながら意欲を喚起し、少しずつ本人が自分でモチベーションと行動を管理できるようにサポートできる人の存在が大切です。

 

従って社員から「ちょっとの頑張りや工夫」を引き出すためにも、最初は外発的な刺激を与えながらやる気を持って働いてもらい、次第に自ら意欲的に取り組んでもらえる「自走の人」を育てていくのが大切です。

 

外発的動機づけは「褒める」「報奨を与える」の二つに大別されます。そのうち、まず大切なのは「言葉による声掛け」です。

 

かつての経営者や役員、管理者のなかには、叱咤激励で厳しく教育することが正しいと考えている人も多くいましたが、最近の人ではほとんどが「褒めること」がモチベーションの向上につながると考えています。

 

しかし、その「褒め方」については、なかなか一筋縄ではいきません。社員のなかには褒めてやる気を出してくれるタイプの人もいれば、檄を飛ばして奮起するタイプの人もいるからです。

 

働く目的は人それぞれで、お金をたくさん稼ぎたい人もいれば、仕事にやりがいを求める人、仕事を通じて成長したい人、コミュニケーションの良い職場で楽しく働きたい人、世の中の役に立ちたい人など、100人いれば100通りの考えがあります。そのため単に褒めるといっても、その喜ぶポイントは個人によって差が出ます。

 

それでも「マズローの欲求階層説」にもあるように、「自己尊重の欲求」や「自己実現の欲求」など、自己の存在や仕事の成果について「認められたい」という承認欲求は多くの人に共通する思いでしょう。

 

ただし、「形だけ」あるいは「口だけ」で褒めても意味がありません。成果を上げた人、成果はなくてもしっかりと頑張ってくれた人に、直接感謝の想いを伝え、ご褒美を与えることが大切です。破格のご褒美をもらい、会社のトップである経営者から直接感謝されたとなれば、社員の自尊心や自己肯定感は自然と高まり、これまで以上に仕事にやる気を出して取り組んでくれるようになります。

口角を上げ社員と接し、よい言葉を伝え、感謝する

人材育成云々は別にしても、やはり私は叱るのは好きではありません。なぜなら叱ったり、怒ったり、愚痴を言ったり、マイナスの言葉を吐いたりすると、口から「苦い空気」が出るからです。その苦い空気を周りの人が吸うと嫌な気持ちになります。だから叱ったり愚痴を言ったりしている人からは、だんだんと人が離れていってしまいます。

 

一方で褒めたり、喜んだり、感謝したり、プラスの言葉を吐いたりすると、口から〝甘い空気〟が出ます。すると周りの人は良い気分になり、褒めてくれる人のところにどんどん人が集まっていくようになります。

 

別にややこしい話をしているわけではありません。試しに口に手を当てて、「ふー」と息を吹きかけてみてください。すると冷たい空気が出ると思います。今度は「はー」と息を吹きかけるとどうでしょうか。暖かい空気が手を温めてくれるはずです。

 

「ふー」と息を吐く際の口の形は叱ったり、悪口を言ったりしている人の表情と似ています。「はー」と息を吐いた際の口の形は褒めたり、喜んだりしている人の表情と似ています。口の形を変えるだけでも空気の温度は変わるのですから、さらにその空気に言葉が乗り、感情まで乗って相手に飛んでいったらどうなるか。相手の心に与える影響までもが変わるのではないかと私は思っています。こんなことは学校では教えてくれませんが、どうもそんな気がするのです。

 

例えば野菜や果物を育てる際、「ありがとう」と感謝したり、音楽を聴かせたりすると育ちが違うそうです。

 

スピリチュアルカウンセラーの尾崎里美氏が行った実験では、食べ物に「ありがとう」と「ばかやろう」という言葉をそれぞれ発し続けると、両者の腐敗のスピードに著しい違いが見られたそうです。

 

「ありがとう」という言葉を伝え続けた食べ物は長持ちした一方、「ばかやろう」という言葉を発し続けた食べ物はすぐ腐ってしまったというのです。この仕組みは科学的に証明されてはいませんが、あながち間違ってはいないとも思います。人間も同じで、どうせなら口角を上げて社員と接し、よい言葉を伝え、感謝し続けられる経営者でありたいものです。

 

一般的に、仕事のモチベーションが高まるシチュエーションとは、給料がアップしたとき、取引先や顧客に感謝されたとき、昇格や責任ある立場に抜擢されたとき、あるいは上司に仕事ぶりを認められたときという意見が多いでしょう。

 

しかし一方で、言葉で褒めるだけではやる気を「維持」してもらうのは難しいというのが私の考えです。言葉による労いにプラスして、何らかの対価を求めるのが人間の素直な欲求だからです。

 

ですから、頑張った社員の待遇は必ず良くしてあげてください。

 

言葉による声掛けで社員の承認欲求を満たすのと同時に、給料アップといった金銭的待遇の改善、さらには社員の活躍や期待に応じた役職、あるいは個人ではなかなか買いづらい高級品などを与えるのです。ただし、これらの処遇が社員自身の期待と一致しなければ、不満が鬱積し、組織にひずみが生じても仕方がありません。そのためにも、普段から一人ひとりに目を配る気持ちで社員のことを見守ること、また世の中の動向にも注意を払うことが大切です。

 

神吉武司

株式会社吉寿屋 相談役

社員の能力を劇的に伸ばす すごいご褒美

社員の能力を劇的に伸ばす すごいご褒美

神吉 武司

幻冬舎メディアコンサルティング

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