(※写真はイメージです/PIXTA)

税務調査で申告漏れやミスなどが発覚した場合、追徴課税の対象となります。令和4事務年度では、所得税1件あたりの平均追徴額は約219万円、個人の消費税の税務調査による追徴課税の平均額は132万円となっており、合計すると税務調査1件あたりの平均追徴課税額は約351万円にのぼります。どのような事例で追徴課税となるのか、また、支払えない場合はどうなってしまうのか。税理士法人松本が解説します。

追徴課税が払えない場合、どうなる?

税務調査によって追徴課税となった税金が払えない場合はどうなってしまうのかについて解説します。

 

■放置すると、最悪の場合は「差し押さえ」

結論から言うと、追徴課税の支払いを免れることはできません。「追徴課税が払えないから」と言って放置していると、最悪のケースでは財産の差し押さえに合う可能性もあるのです。

 

追徴課税を期日までに支払わないと「滞納」と呼ばれる状態になります。支払いの滞納を続けていると、税務署から督促状が届き始めます。督促状が届いても無視を続けた場合、税務署は差し押さえ可能な財産があるかの調査に入り、「催告書」と呼ばれる差し押さえする旨の通告書が送られた後に、財産が差し押さえられることとなります。

 

差し押さえられる財産には

・預貯金、給与

・売掛金、有価証券、保険金などの金融資産

・土地、建物や家屋などの不動産

・自動車、高級装飾品などの動産

などが挙げられます。

 

不動産や動産などが差し押さえられた場合、競売によって安価に売却されるため、実際の価値よりも低い価格で処分されてしまいます。また、追徴課税の支払いを滞納すればするほど、7.9~14.6%の延滞税が発生し、支払いはより困難になってしまうでしょう。

 

■「自己破産すれば支払いをゼロにできるのでは?」と思いきや…

「追徴課税以外にも支払えない債務があるから、自己破産すれば支払いをゼロにできるのでは」と考えたくなりますが、追徴課税を含む税金の支払いは、自己破産しても免責にすることができない点も注意が必要です。

 

自己破産は、クレジットカードの支払いや消費者金融からの借金、ローンの返済などを免責にすることができる手続きです。しかし、追徴課税を含む所得税や住民税などの税金は、自己破産をしても免責にできない「非免責債権」であることが法律で定められています(破産法253条第1項)。

 

自己破産すると他の支払いを免責にできても、一定期間はブラックリスト入りすることとなるため、新たな借金やローンを組むことができなくなってしまいます。借り入れができないことに加えて多額の追徴課税の支払い義務は残るため、更に苦しい状況に陥る可能性があるため注意が必要です。

税務調査で追徴課税となる事例

所得税や法人税の税務調査で追徴課税となりやすい事例には、以下のようなケースが挙げられます。

 

●「申告漏れ」が見つかった場合

本来申告するべき売上などの申告漏れが税務調査で発覚した場合です。申告漏れを指摘されやすい事例としては

 

・計算ミス、計上間違い

・前年度に計上するべき売上を次年度で計上していた(期ズレ)

・会社の資産を使用して得た個人的な収入を計上しなかった

・シェアリングサービスなどインターネットを利用した収益

 

などが挙げられます。税務調査は所得税や法人税だけでなく、消費税や相続税、印紙税などにおいても申告漏れを疑われる可能性があるため注意が必要です。

 

●「使途不明金」とみなされた場合

接待交際費の水増しや個人的な旅費などの経費計上について、証拠となる資料や説明が不充分な場合に経費と認められず、使途不明金とみなされてしまう場合です。

 

・個人的な飲食代を接待費として計上した

・帰省した際の旅費を交通費に計上した

・自身の買い物を会社の備品や消耗品として計上した

 

などは指摘を受けやすいでしょう。

 

●そもそも「無申告」だった場合

税務申告自体をしていない無申告の状態も、税務調査で発覚すれば追徴課税の対象となります。「申告していないから調べられることはないだろう」と思っていても、税務署では独自のルートやシステムを使い、無申告者をリストアップすることが可能です。

 

税務調査で申告漏れや経費の水増し、無申告などが判明した場合、延滞税や過少申告加算税、無申告加算税などが追徴課税として課されることとなります。悪質な所得隠しや虚偽申告とみなされた場合、更に重い重加算税が課せられる場合もあるのです。

追徴課税が払えない場合の対処法

追徴課税の支払いは、原則として法定の期日までに一括払いすることとなっています。しかし、どうしても支払えない場合には、状況に応じて以下のような対処法を取ることも可能です。

 

●救済措置を活用する

追徴課税が支払えない場合、事前に申請をすれば以下の猶予制度が活用できます。

 

・納税の猶予:

納税期間を延長し、支払いを待ってもらえる制度です。納税の猶予が認められた場合、1年間の分納が可能となり、猶予期間中の延滞税も減免されます。ただし、納税の猶予を受けるためには相当の理由が必要となります。自然災害や病気、盗難、廃業などにより経済的に困窮している場合や、法定の納付期限が修正申告で税金が確定した日より1年以上遅い場合などに「猶予申請書」と「修正申告書」の両方を提出し申請することができます。

 

・換価の猶予:

既にある財産の差し押さえや、新たに差し押さえの予定となっている財産について差し押さえを待ってもらえる制度です。換価の猶予が認められた場合、1年間の分納が可能となり、猶予期間中の延滞税も減免されます。換価の猶予を受けるためには、追徴課税以外の税金の滞納がなく、一括で税金を納付することによって事業の継続や生活が困難になると認められる場合に、法定納付期限の6ヵ月以内までに申請書を提出する必要があります。

 

いずれの猶予制度も原則として担保が必要となっていますが、要件によっては担保がなくても申請できる場合があります。

 

●法人の場合は自己破産でも免責にできる

個人が自己破産しても税金が免除されることはありませんが、法人が自己破産した場合、手続きが完了すると会社が消滅するため、法人税などの追徴課税は免責にすることができます。ただし、合同会社や合資会社などで無限責任を負っている場合や、代表者として納税保証書を発行している場合は支払い義務が残るため注意が必要です。

 

●専門家に相談する

長期にわたる申告漏れや無申告による脱税では、延滞税に加え無申告加算税や重加算税などがペナルティとして課せられるため、追徴額が多額となってしまうケースも少なくありません。追徴課税が払えずに困る前に適正な申告、納税をすることが大切ですが、現在払えずに困っている場合は、税務調査や追徴課税への対応実績が豊富な税理士へ早めに相談しましょう。

「適正な申告・納税」に勝る方法はない

税務調査で追徴課税が払えなくなってしまっても、基本的に支払いを免れることはなく、期日を過ぎても支払わずに督促状も無視していると、最悪の場合財産の差し押さえにまで発展する可能性があります。

 

税務調査による追徴課税は、売上の計上漏れや記帳間違い、計算ミスや使途不明金などが発覚した場合はもちろん、無申告が発覚した場合にも発生します。法人の場合は自己破産で支払いを免責できる可能性がありますが、個人の場合は自己破産しても免責にできないため、適正な申告、納税や税理士などのプロによるサポートを早めに受けるようにしましょう。

 

 

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴税額ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

 

税理士法人松本

税務調査特化税理士法人として全国6ヵ所(渋谷、錦糸町、新宿、横浜、柏、大阪)にオフィスを構え、“成功報酬型”税務調査サポートを提供する税理士事務所では国内No.1の規模を誇る。国税局に勤めていた、いわゆる「国税OB」が複数名所属。税務調査相談実績は累計1000件以上。一般業種より税務調査が厳しいと言われる風俗業界の税務に10年以上特化し、追加徴税額ゼロ円の実績も多数。

 

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