職住近接志向の強い「ミレニアム世代」の人口が多い
■人材確保面での優位性
全国の失業率は2%台と低い水準。加えて、将来の労働人口の減少は避けられない状況だ。このため、人材採用が企業の大きな経営リスクになっている。労働需給が逼迫する中、企業が人材を確保しやすい都市・地域への移転を決定・検討することは、自然な流れであろう。そのような観点からも、オフィスマーケットとしての横浜の優位性が浮かびあがってくる。
通勤・通学時間の実態をみると、神奈川県の平均は1時間45分と全国で最も長い(図表1)。また、横浜市では、人口の11%に相当する約40万人が東京23区へ通勤・通学している(図表2)。
■人材確保面での優位性約40万人のミレニアル世代
ミレニアル世代(25歳~32歳)に最も近い区分の25-34歳の人口データを見てみると、横浜市では43万人(図表3)。東京23区の136万人に次いで多く、政令指定都市の中では最多。
ミレニアル世代は、ワークライフバランスを重視する傾向が特に強い。特に、通勤にかかる時間を短くしたいと考える人が多い。2015年に行ったミレニアルサーベイでは、74%が通勤時間を重視すると回答した(図表4)。
横浜市在住のミレニアル世代にとって、横浜のオフィスエリアで働くことは、ワークライフバランスのとれる職住近接を可能とすることを意味している。
■人材確保面での優位性理工系学生や技術系人材が多い
将来の研究開発を担う世代を育てる環境が整っていると言える。神奈川県では、就業者に占める専門的・技術的職業従事者の割合が20%と全国1位(図表5)。さらに、県内に理学部、工学部の大学キャンパスが20箇所所在し、これは東京都に次いで多い。そのうち、東京工業大学、横浜国立大学、慶応大学など12キャンパスが横浜市に所在する(図表6)。
オフィス賃料の予想上昇率は全国でもトップクラス
■今後2年間で横浜オールグレード賃料の上昇率は10.5%と予想
横浜オールグレード賃料は、2018年Q1から2019年Q1の1年間で4.6%上昇した。2019年Q1から2020年Q1の2年間では10.5%の上昇と、全国でも高い上昇率が予想される(図表7)。
横浜では、2020年に2棟、貸室総面積計2万5000坪の新規供給が予定されている。「みなとみらい」エリアで竣工する「横浜グランゲート」はソニーによる1棟借りで満室竣工することが確定しており、もう1棟も高い稼働率で竣工する見込み。内定している面積の多くは郊外からの移転であるため、二次空室の発生は限定的と考えられる。
一方、東京では、2020年に予定されている大量供給の影響で空室率が徐々に上昇、賃料は緩やかに下落すると予想される。東京と横浜の賃料格差は過去平均と比べやや縮小する見通し。それでも5,000円/坪程度の差があり、横浜の割安感は続くだろう。
■東京より高い利回りに投資家の関心は高い。需給タイトな状況が続く
オフィスの投資家期待利回りは、東京大手町で3.43%と2007年以降の最低水準にある。横浜の期待利回りは4.65%と東京を上回る水準。地方都市と比較すると、大阪(4.86%)、名古屋(5.15%)を下回ってはいるが、東京に近接する主要都市として利回りの高さに対する投資家の関心は高い(図表8)。
近年、東京都心の不動産投資市場では、需要の高さに比べて供給が圧倒的に少なく、利回りは低下傾向が続いている。少しでも高い利回りを求め、投資家の関心は東京以外の都市へ拡大。中でも、東京近郊のマーケットである横浜に対する関心は高い。実際、直近の横浜における投資額は増加傾向にある。2017年と2018年の年間平均投資額を、2013年から2016年までのそれと比較すると、全国の投資額は減少したのに対し、横浜での投資額は+250%と大きく増加した(図表9)。
横浜のオフィス賃料は、2019年Q1から2021年Q1にかけて、10.5%上昇するとCBREでは予想している。投資家にとっては賃料のアップサイドが引き続き見込める魅力的な投資マーケットになるだろう。ただし、所有ビルの老朽化等をきっかけに、事業会社が自社利用目的で賃貸オフィスビルや区分所有床の購入を検討する動きも今後増えるとみられる。従って、横浜の不動産投資市場は需給タイトな状況が続く可能性が高い。