今回は、これまで非常にハードルが高かった、コインランドリーの商業施設への出店について見ていきます。※街中でよく見かける「コインランドリー」。しかし、その利用率は日本の全世帯のわずか5%と、マーケットとしては成熟していない「ブルーオーシャン」のビジネスです。手軽で低リスクなコインランドリー経営は、個人投資はもちろん、中小企業が経営の安定を図る一手段としても活用可能です。本連載は、株式会社ジーアイビー代表取締役である鈴木衛氏の著書、『デキル経営者だけが知っている “稼ぐ”コインランドリー経営』より一部を抜粋し、コインランドリービジネスのメリットと可能性を紹介します。

事業開始当時は、商業施設との交渉がことごとく難航

商業施設にコインランドリーを出店することは簡単にできるのだろうか。実はここが、とんでもなく難しかった。郊外型の大型スーパーやショッピングセンターは世の中にいくつもある。家賃を払えば出店できそうなものである。

 

事業開始当時、コインランドリーの出店を各商業施設に交渉に行った。商業施設の風当たりは非常に厳しかった。商業施設の開発担当からは、コインランドリーなんか儲かるんですか、途中で撤退されても困る、そんな微々たる家賃では貸せない、排水による土壌汚染は大丈夫か、うちはもうクリーニング店があるから駄目だ、今の時期忙しいので来年来てくれませんか、といった具合にほとんど相手にされなかった。

 

それでも、コツコツと開発担当者のところに通い、ランドリーの便利さと商業施設との相性の良さを伝え続けた。徐々に担当者も聞く耳を持つようになり、ようやく第一号店がオープンした。

 

ある中部エリアでかなりの店舗を保有するスーパーの開発部長も、初めは理解をしてくれなかったが、私たちの熱心さに負け、一店舗だけ出店を了承してくれた。その店の駐車場にコインランドリーがオープンして一か月ほどすると、その開発部長から電話が入った。電話の内容はこうだ、「コインランドリーいいね。お客さんが便利なところにコインランドリー作ってくれたって大喜びで、店長がお礼を言いたいといっている。ほかにも何店舗か相談したいから来てくれないか」というものだった。

 

最近ではもっと面白い話がある。中部の大手商業施設の開発担当者から連絡が入り、「ほかの商業施設には御社のコインランドリーがたくさん出店しているのに、私たちのところにはなぜ話を持ってきてくれないのか」、という内容であった。その商業施設は、3年前にお願いに行き、門前払いをされた商業施設だった。今では私たちの会社としか契約しないことを約束してくれ、多くの店舗で話が進んでいる。

 

 

この3年間で商業施設のコインランドリーへの認識は大きく変わった。一番初めに私たちが出店したある大手ショッピングモールは、今後全ての新店の開発には、コインランドリーを入れていく方針が決まった。

 

今では、私たちのもとに一か月に数件、2020年までの新規開発店舗の図面が届くまでに至っている。まだまだ全国には地元に密着した未開発の商業施設がたくさんあり、今後も全国的に開発交渉を進めていく。

エリアにおける商業施設の立ち位置等、検討項目は多数

商業施設への出店は、コインランドリー経営には非常に強力なものになる。しかし、当然のことだが商業施設だから無条件に出店するというわけではない。

 

エリアに関しては、商圏の世帯数、昼人口、夜人口、世帯の平均年齢、家族構成、世帯の平均所得、近くに独身寮はあるか、など徹底的に調査する。

 

また、その商業施設がそのエリアでどういう立ち位置なのか、競合の商業施設との力関係はどうか、売上規模は、月間のレジ通過人数など、検討する項目は非常に多い。

 

次に競合コインランドリーがどのくらいの距離に、どの程度の規模のランドリーなのか、機器の台数は、価格は、新しさは、駐車場の台数は、これらも非常に重要なポイントだ。

 

そうして私たちが出店したいと考える商業施設を洗い出し、交渉が始まる。ここからが実はハードルが非常に多い。まずは、行政の関係の立地法・都市計画法のハードルである。

 

立地法は「大規模小売店舗立地法(大店立地法)」のことで、昔の大店法のことである。売り場面積1000平方メートルを超える店舗が対象となり、駐車場台数確保の規定から様々な取り決めがある。当社のコインランドリーは、基本的に駐車場5台もしくは6台ほどをつぶしてコインランドリーを建築する。商業施設は、立地法の規定ぎりぎりで駐車場を確保していることが多いために、駐車場台数を減らすと立地法に抵触してしまう。

 

次に都市計画法であるが、これには各エリアの用途区分が規制されている。つまりお店を作っていい場所、住居しか建築ができないエリアなど詳細に用途地域の規定がされているのだ。用途地域は第一種低層住居専用地域など13種類があるが、コインランドリーは工場扱いになるため、出店できる用途地域が限られる。

 

 

商業施設への出店の険しい道のりは、これだけではない。商業施設のほとんどは土地を地権者から借り、定期借地契約を結んで事業を行っている。そこにコインランドリーを出店するのであれば、当然地権者の転貸承認が必要となる。地権者が会社の場合もあれば、中には16名の地権者がいる場所もある。一人でも地権者が反対すれば出店は難しくなる。

建築で頭を悩ませるのが「水道」の問題

また、コインランドリーは水を使う。建築で頭を悩ますのがこの水道の問題である。コインランドリーは業務用の機器のため、給水も排水も普通の引き込みでは間に合わない。この引き込みにコストがかかる。引き込みの距離は15mから100mを超える場所もあり、ここにコストがたくさんかかる。資産形成ビジネスであるコインランドリーに初期コストは非常に重要であり、この引き込みにコストがかかりすぎる場合は、出店をオーナーに勧めることができず断念せざるを得ない。

 

ようやくこれらをクリアして商業施設に出店申し込みをするのだが、本部に申し込みが回って家賃が決定される。この家賃が高ければ、損益分岐点が高くなり収益が上げにくくなる。これまでの苦労から、喉から手が出るほどの物件でも、オーナーのためにあきらめざるを得ない。

 

これまで私たちは4000店舗以上を調査してきた。その中で様々なハードルを乗り越え、しかもこの店舗なら確実に収益を上げられると考えた店舗は、なんと調査した店舗の3~4%程度。いかに商業施設への出店が難しいことか理解していただけるであろう。

 

先にもお話ししたように、最近では新店の開発情報がたくさん当社に入ってくる。2022年までの情報で40店舗以上の情報を現在保有している。新店開発のタイミングから話が進めばこのようなハードルはほとんどなくなる。

 

 

 

鈴木 衛

株式会社ジーアイビー代表取締役

 

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    幻冬舎メディアコンサルティング

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