街中でよく見かける「コインランドリー」。しかし、その利用率は日本の全世帯のわずか5%と、マーケットとしては成熟していない「ブルーオーシャン」のビジネスです。手軽で低リスクなコインランドリー経営は、個人投資はもちろん、中小企業が経営の安定を図る一手段としても活用可能です。本連載は、株式会社ジーアイビー代表取締役である鈴木衛氏の著書、『デキル経営者だけが知っている “稼ぐ”コインランドリー経営』より一部を抜粋し、コインランドリービジネスのメリットと可能性を紹介します。

ヒントは、ターゲットである「主婦」の行動

コインランドリービジネスが成長市場であることは間違いない。コインランドリー事業をとりあえず始めればうまくいくかもしれない。しかし、それだけで新規事業を始めるのは経営者としては間違っていると私は思う。

 

なぜなら、事業には入口と出口がある。特にこの手の資産形成ビジネスは、流行りすたりがない分、長期にわたり確実に収益を上げ最終段階で振り返った際に、この事業進出が失敗なのか、成功なのか、大成功なのかを初めて認識する。失敗はないにしてもいかに大成功に近いものにするかという考えが、経営者には必要ではないだろうか。

 

また、成長市場であるため、競合が今後多く存在してくるということになる。そういう状況になる前にいかに手を打っておくかということが重要となる。つまり市場が成熟した時にどのポジションにいるか、コインランドリーであればどこに出店しているかがカギとなる。

 

ターゲットは主婦であるため主婦が車で立ち寄りやすく駐車しやすいこと。また、コインランドリーは時間短縮ビジネスのため時間短縮に効果的で、ついでに主婦のやりたいことがしやすい場所。そして、リピート商売のためいかにリピート率を上げるか、その上、後発出店の競合に負けないこと。

 

その結論が「スーパーやホームセンターなどの商業施設」への出店である。

利用者のほとんどは、洗濯の間に「買い物」をしている

私がコインランドリーについて研究しているとき、コインランドリー利用者がどういう動きをしているかの情報を集めた。それは、コインランドリーを利用中はほとんどの人が、店舗内で待つことはなく、洗濯している間にスーパーやホームセンターで買い物をしているということであった。

 

ここで重要なのは、コインランドリー提供者の私たちの視点ではなく、利用する主婦の視点でものを考えることだ。このことはすべての事業に当たり前に言えることだが、これがなかなか難しい。

 

 

主婦の視点からの発想はこうだ。洗濯中の退屈な時間になにをして埋めようではなく、洗濯中の空き時間を有効に使う方法を考えているということだ。もっと言えば、洗濯中に何かをするのではなく、何かをしている間に洗濯をするという考え方をしているといったほうが良いだろう。主役はコインランドリーではない。

 

つまり、私たちが考えるべきは、コインランドリーを利用することを主役にするのではなく、あくまでコインランドリー利用を、何か日常的で重要なことのわき役にすることができないかという視点である。その主役を主婦が週に何回も行う買い物に持ってきた。それが結論である。

 

例えば、スーパーマーケットの駐車場にコインランドリーがあったらどうだろう。買い物をしている間に洗濯が終わる。一カ所で家事が二つ片付く。これはメリットが大きい。

 

じっと洗濯を待つだけの手持ち無沙汰な時間が買い物の時間になる。毎日買い物に行くスーパーなら、ついでに毎日洗濯ができる。

 

洗濯にかける時間も実質的に短くなり、時間短縮ビジネスがさらに効果を増す。コインランドリーにかかる実質的な時間は、洗濯物を入れる時間と乾燥した衣類を取り出す時間だ。合計してもおそらく数分だろう。洗濯と乾燥が終わるまで待つ時間が買い物する時間に変わるということは、洗濯にかける時間が数分になるということなのだ。このことを認識したことにより、成功するコインランドリーのビジネスモデルがみえた。

 

それは、郊外にある大型のスーパーやショッピングセンターと組み、その敷地内に出店するというビジネスモデルである。

リピートのしやすさ・駐車スペースの確保・競合不在

 メリット①  便利でリピートしやすい

 

たまに顧問先の経営者に、「先生のところはいいですね、毎月の売上がある程度確定していて入金される」と言われることがある。確かに税務顧問やコンサルティングは、月額を決め毎月口座引き落としをして売上が成り立っている。この安定感は、本当にありがたいことだと思う。

 

通常の事業では、毎月1日売上ゼロからスタートする。そういう意味ではリピート売上ほど強い売上はない。

 

コインランドリーも同じである。飲食店のように今日はこの店に行こうとか、来週はここにしようという発想が、コインランドリー利用者にはない。たいてい、行きつけのコインランドリーを利用している。

 

ちなみに、集客にかかるコストを比べると、新規の利用者を集めるためのコストは、リピート客を呼ぶコストの5倍になると言われる。

 

これを、マーケティングの世界で1対5の法則という。コストを抑えることも経営安定につながる重要なポイントだ。その点から見てもリピート獲得は非常に重要といえるだろう。

 

 

リピートで重要なのは便利さとリピートしやすい環境だ。便利さについてはいうまでもないだろう。買い物と洗濯が一カ所でできる。移動時間が短縮でき、洗濯を待っている時間がなくなる。

 

これがとくに響くのが、共働きしている夫婦だ。共働き夫婦は家事のために使える時間が少なく、時間を有効に使いたいと思っている。週末には食料品や日用品などをまとめ買いしたいと思っている人も多いだろうし、その際にたまった洗濯物を片付けられたら非常に便利だ。

 

そういう人はスーパーとコインランドリーの組み合わせを便利だと感じてくれるだろう。休日の楽しみとして、ショッピングセンターを見て回りたい人は、ショッピングセンターとコインランドリーの組み合わせに価値を感じてくれるはずだ。

 

リピートしやすい環境についても、郊外型の店舗は駐車場が大きいため車で通える。駐車場が広いため、満車になることが少なく、停めやすい。また、商圏の規模はコインランドリーよりもスーパーの方が広い。ショッピングセンターはさらに広い。

 

これも重要なポイントだ。商圏が広いほど見込み客の数は増え、リピートしてくれる人の数も増えやすくなるのである。

 

 メリット②  十分な駐車場スペースを確保できる

 

利用する側の視点から見ると、まずまとまった量の洗濯物を持ち込んだり、布団やシーツなど大物を洗いたいという需要がある。そのため、車で持っていけるのが便利であり、駐車場がある店がよい。

 

街中のコインランドリーはそこが難点だ。たまに街中に駐車場つきのコインランドリーを見かけることがあるが、土地が狭いせいもあって駐車場が2台分くらいしかない。しかも、かなり高い確率で駐車場は埋まっている。

 

店側から見ると、これは強烈な機会損失だ。店内に空いているマシンがあるにも関わらず、車が停められないからお客さんが別の店に行ってしまう。まさかコインランドリーを使うために、コインパーキングに停める人はいないだろう。

 

先にも述べたように、コインランドリーの稼働率は12~14%くらいだ。10台くらいあっても、暇なときは1台くらいしか動いていないため、残り9台をどうやって稼働させるかが重要だ。そう考えると、なおさら駐車場が少ないことによる機会損失は痛い。

 

そこで見えてくるのが、十分な土地が確保できる郊外に出店するという戦略だ。土地が広ければ店舗も駐車場も大きくできる。さらに都市部と比べて土地代も安くなるから、損益分岐点も下がる。

 

商圏内での需要獲得という点から見ても、コインランドリーのメインターゲットとなるのは共働きの家庭や子供を持つ家庭だ。そのため、一人暮らしが多い都市部や、高齢者ばかりの地方より、都市部の通勤圏である郊外が良い。女性の利用者の比率が高くなると考えれば、駐車場が広く、あまり運転に自信がない人でも停めやすい駐車場を作ることもポイントになるだろう。

 

車で来る人を想定し、車で利用しやすい場所に出店する。駐車場を用意して利便性を高める。そういう環境が利用者のリピートしやすい環境であり、それこそが商業施設なのである。そのような環境で出店することがコインランドリーの基本戦略といえるだろう。

 

 メリット③  競合不在

 

商業施設との提携には、もう一つ大きな効果がある。それは、スーパーやショッピングセンターの商圏の中で、同業他社と競争する必要性がほとんどなくなるということだ。

 

一つの施設の敷地内にコインランドリーが二つあっても仕方がない。つまり、施設内に良い店が一店あれば十分であるため、その場所に出店することさえできれば、その後の運営が安定しやすくなるのだ。

 

どれだけ素晴らしいサービスを提供していても、競合が多いほど経営は厳しくなる。例えば、飲食業は衣食住関連であり、安定した収益が見込めるが、とにかく競合店が多い。美容室も生活密着型だが、やはり店舗数が多く、競争が激しい。

 

そういう環境で生き残っていくためには差別化の努力が必要であり、他者(社)との差別化になる優位性を持っていない場合は値下げ競争に巻き込まれやすくなる。マーケティング用語でレッドオーシャンといわれる状況だ。

 

資格制度などがあり、参入障壁が高かったとしても事情は同じだ。美容師もそうだが、税理士などの士業や歯科医のような仕事でも、競合が多ければ経営は苦しくなり、供給過多が原因で廃業に追い込まれることがあるのだ。

 

その点、商業施設内のコインランドリーは競合について考える必要がほとんどない。施設内の需要は独占可能だし、施設の外にあるコインランドリーに対しても、スーパーやショッピングセンターでの買い物需要と組み合わせることで圧倒的に有利に戦うことができる。ショッピングセンターの商圏が半径3㎞くらいだとしたら、そのエリアがブルーオーシャンとなる。この先行者利益は大きい。

 

 

 

 

鈴木 衛

株式会社ジーアイビー代表取締役

 

デキル経営者だけが知っている  "稼ぐ"コインランドリー経営

デキル経営者だけが知っている "稼ぐ"コインランドリー経営

鈴木 衛

幻冬舎メディアコンサルティング

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