資産形成型ビジネスとして「低リスク」
当たり前のことだが事業には優秀な収益の上げ方がある。それはいかに固定費を抑え粗利益率を上げるかということだ。固定費が多ければ売上が下がった時に大きな赤字を出す。また、売上がいくら多くても粗利益が少なければ、売掛金が大きいため多額の運転資金が必要となるとともに貸し倒れを食らった時の打撃も大きい。
優秀なビジネスモデルの典型例は、システム開発やゲームを開発している企業に多い。当たりはずれはあるもののゲームなどは一度開発すれば、利用者が勝手にダウンロードして売上金を支払ってくれる。原価はほとんどゼロで利益率は90%を超える。
コインランドリー事業をスタートするためには、店舗やマシンを揃えるための資金がかかる。初期費用の金額は店の規模や出店する場所によって変わるが、だいたい2000万から4000万円くらいだろう。決して安いとはいえない。しかし、投資額の面で不動産ビジネスと比べると、資産形成型ビジネスとしては低リスクだ。
コインランドリーも粗利益率が高い。原価を構成するのは、水道光熱費のほか洗剤代であるが、おおよそ25%程度で75%程度が粗利益率となる。固定費は人件費がないため基本的に家賃のみで、人がある程度いる場所にいかに安い家賃で出店するかがカギとなる。自分や会社が土地持ちで遊休地になっている場合はその場所を使うことによって賃料を抑えることができるが、できれば立地が良い場所を選んで借りることが好ましい。
このようにコインランドリー事業は、固定費が少ないため損益分岐点が低くなり、赤字になりにくい上に、粗利益率が高いために損益分岐点を超えた後の利益の出方が素晴らしい。そして、コインライドリーの利回りは平均9~15%くらいであるから、7〜10年くらいで初期投資が回収できる。
利回りが良いということは、初期費用の回収期間が短くなるということだ。例えば、月当たりの売上が80万円、各種コストが50万円だった場合、最終利益は月30万円、年間360万円である。初期費用が4000万円だったとすれば、11年ちょっとで回収でき、それ以降は年360万円の利益を丸々受け取れることになる。
さらに売上が月額25%程度上がって100万円となれば、粗利益は月額15万円増加して年間540万円となり最終利益は50%増加する。仮に売上が月額50%程度上がり120万円となれば、粗利益は月額360万円増加して年間720万円となり、最終利益は100%増加する。これが粗利益率の高いビジネスの強みだ。
おおよその表面利回り10~15%、20%を超える店も
ここまで見てきた通り、コインランドリーが中小企業の安定経営に結びつくことがよくわかってもらえたと思う。では、なぜこの魅力的な業界が、事業としてまたサービスとしても今まで注目されてこなかったのだろうか。
事業として注目されなかった理由は、ズバリ「誰も儲かると思っていなかった」の一言に尽きる。コインランドリーの機器の稼働率は12~14%で機器はそれほど稼働しない。
しかも利用者は昔のようにコインランドリー店舗内で待つ人は少なく、洗濯している間にスーパーなどで買い物を済ませている。買い物が終わるとコインランドリーに洗濯物を取りに来て自宅に帰る。だから店内に利用者がほとんどいない、駐車場に車もたいして停まっていない。
このような状況で誰が儲かると思うのか。誰も思わない。しかし、私は決算を通じて実数値を見ている。目に見える印象と実態が違うことをよく認識している。
昼だけ行列ができるラーメン屋さんが全然儲からないことや、逆に隙間産業で長い間収益を上げ続ける事業も知っている。このコインランドリー事業を調べていくうちに、先に書いた記念刻印メダルビジネスと完全にリンクした。
誰も儲かると思わない→競合が現れない→事業が安定して寿命が長い。
それではこのコインランドリー機器の稼働率12~14 %でどれぐらいコインランドリーが稼ぐのかというと、おおよそ表面利回り10~15%、中には20%を超える店も存在する。この稼働率でこの利回りであるから、このビジネスがどれほどの可能性を秘めているかおわかりいただけるであろう。
鈴木 衛
株式会社ジーアイビー代表取締役