即時償却すると、どの程度節税できるのか?
近年、コインランドリーは節税としても注目を集めている。理由は投資金額の一部を即時償却することができ、大きな節税になるからだ。しかも借入をして投資してもこの制度が使える。使う制度は「中小企業経営強化税制」。概要は次の通りだ。
青色申告書を提出する中小企業者等が、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき、対象設備を取得し、その指定する事業に使用した場合に、即時償却、又は7%税額控除(資本金3000万円以下もしくは個人事業主は10%)を受けることができる制度。
※中小企業者等とは、以下の法人等である。
①資本金もしくは出資金の額が1億円以下の法人
②常時使用する従業員数が1000人以下の個人事業主
③資本金もしくは出資金を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1000人以下の法人
これに基づき、金額に条件はあるものの、機械装置や建物付属設備、器具備品などが一括経費になる。大きく分けてこの制度は2種類があって、工業界からの認定をメーカーが受けて発行する書類をもって即時償却が行えるA類型と、事業計画などを作成し経済産業局で認定を受けて行うB類型だ。
コインランドリーの事業で即時償却を多く受けるためには、B類型で行う必要があるが、私のグループ会社のコンサルティング会社では、これまで50件余りの申請を行ってきた。これまで、おおよそ投資金額の70~80%が、即時償却対象金額として認められている。
手前みそだが、このコインランドリー経営の節税を日本で初めてフォーマットにしたのは、私だと思う。と言うのもこの「中小企業経営強化税制」の前に、「産業競争力強化法」(平成26年1月20日施行)の時代に、コインランドリー投資をB類型で経済産業局に申請に行った際、窓口の経済産業局の職員が「コインランドリーも対象になるのですか?データを調べても、これまでコインランドリーで申請されたことがなく、確認に時間が欲しい」と言われ、1か月後に初めての認可が下りたからだ。
申請もこれまで100%受理されており、すでに税務調査もクリアしている。申請はかなりの資料を用意しなくてはならないが、私のグループ会社のコンサルティング会社が全て代行しており、希望企業は一回20分程度の面談を経済産業局の職員とするだけで済む。
では、この即時償却によりだいたいどの程度の税金が節税できるのか計算してみる。法人の場合は、仮に4000万円の投資をして、即時償却が2800万円できたとすると、実効税率を30%とすれば約840万円法人税が下がることとなる。単発的な特需に対する対策や、保険の解約による雑収入計上の迎撃に有効的だ。
消費税は支払った分、減額されるため、この節税との合わせ技であれば当然、税効果後の利回りは相当上がる。
個人の場合は、即時償却を「個人事業主」として行う
一方、個人の場合はこの即時償却を個人事業主として行う。給与やほかの所得との相殺(損益通算)もできるが、相殺できる所得の種類が決まっていて、株式売却などの利益とは相殺ができない。
法人と違うところは、個人の場合は税率が収入金額によって異なるため、効果金額がその個人によって変わるという点だ。個人の税率は図表2の通りだが、これに市民税が追加される。市民税の税率は10%であるから、単純に10%を足してもらえば、最終的な税率が出る。
例えば、年間所得3000万円の個人事業主がいたとする。税金を計算すると所得税と市民税を合わせると1210万円。手元に残るお金は1790万円となる。実際は健康保険料や年金などの支払いがあるため、手元に残るお金はもっと減る。
この人がコインランドリーに投資して、計算便宜上2500万円即時償却をしたとする。そうすると3000万円から2500万円が引かれて所得金額は500万円となり、所得税と市民税を合わせても97万円で済む。合計で1113万円分の税金が減少した計算になる。
面白いのは、この投資(税込み4320万円)を全額、銀行からの借り入れで行うと、まず消費税の還付で320万円、所得税の還付(減額)で1113万円。どういうわけか1円も払っていないのに1433万円が手に残るのである。万一、そこまでの所得が、もともとなく即時償却できる金額が余ってしまった場合でも3年間繰り越すことができる。
もともとの収入によって、減税額が変わるが、一応計算してみると図表5のようになる。これはあくまで即時償却2500万円で計算しているので、4000万円の投資で2800万円の即時償却ができれば、この金額はもっと増えることとなる。
このほかに、実は結果的にもっと節税になる方法がある。
未来のコインランドリーを退職金の現物支給として、社長経営者に名義変更する。この方法も私が考案したものだが、この仕組みを税理士さんたちに話すとだいたい舌を巻いてくれる。詳細はセミナーや個別で紹介しているため、ここでは触れないがこの効果は絶大だ。
鈴木 衛
株式会社ジーアイビー代表取締役