乱立するコインパーキング、市場はすでに飽和状態
コインパーキングも、手放しで行える投資として知られています。しかも建物を建てる必要がないので、アパート・マンション投資よりも初期投資が少なくて済むというメリットもあります。
さらに、空き家を解体して整備する場合でも、コインパーキングの運営会社との契約次第では、解体費用や機械代など全ての初期投資を負担しないで済む方法もあります。
また、こちらも賃貸物件同様に運営会社と一括借り上げ契約を締結すれば、日々のメンテナンスをする必要はなくなり、毎月の売上も安定して入ってきます。私たちの会社も、まさに理想の投資先だと思い、約15年前にこの事業に参入しました。
きっかけは、当時駅前で管理していた100台規模の月極駐車場を他社に奪われたことでした。ある日突然、オーナーから電話があり、「管理を他社に変えたい」と言われたのです。
当時の担当者は、慌ててオーナー宅へ話を聞きに行きました。すると「月極だと空きスペースが出ればその分の収入はなくなる。だから毎月空きが出ないか冷や冷やしている。しかし、今回管理してくれるコインパーキングの運営会社は、一括借り上げをしてくれるので安心できる。だから変えたい」ということでした。
この理由に私たちは返す言葉がありませんでした。しかし、同時に「これからは月極ではなく、日銭が稼げるコインパーキングの時代だ」と感じたのです。このような経緯で、現在は6カ所、169台分のコインパーキングを管理・運営しています。
ところが、コインパーキング市場も、すでに飽和状態です。皆さんも駅前だけでなく、住宅街にも乱立する駐車場に気づいているのではないでしょうか。
実際にコインパーキングは急増しています。国土交通省の『駐車施策の最近の動向』を見ると、2007年のコインパーキング車室数は約69万室でした。それが2011年には約91万室になり、2015年には約118万室と8年間で約1.7倍に膨れ上がっています。その間の自動車保有台数は約8000万台でほとんど変化がありません。
車の数は増えていないのに、パーキングの数は急増している。明らかに需要と供給のバランスが崩れているのです。このことを私たちは実体験として痛切に感じています。一例を挙げると、管理をしているコインパーキングは、30台収容可能という比較的大規模にもかかわらず、駅から徒歩1分という好立地。周辺相場通りの12時間500円という価格設定で、いつも満車状態でした。
ところが4年ほど前、近くに他社のコインパーキングができました。価格は12時間400円。こうなったら私たちも価格を下げるしかありません。そして、その後も毎年1~2件の割合で周辺にコインパーキングが増えていったのです。
主な理由は、共働き世帯の増加でした。駅から徒歩圏外の世帯でも働く女性が増え、子どもを幼稚園・保育園に送った後に駅の近くのパーキングに車を停めて通勤しているのです。しかも、これらを日常的に利用する人たちは、価格に非常にシビアです。駅から徒歩1分で500円と2分で400円なら400円の方を選ぶのです。
通勤用にコインパーキングのニーズが高まる→パーキングが増える。この流れに比例して駐車料金は、どんどん下がっていきました。5年前まで12時間500円だったものが、現在は300円。回転率は変化しないので、売上は6割になってしまいました。
それでも地主の場合は、土地代がかかっていないので、なんとかやっていけるかもしれません。しかし、皆さんの多くは、投資家または会社の経営者として新たな投資先を探しているので土地は所有していないでしょう。
私たちは、土地から購入した投資目的のコインパーキングも経営していますが、平均利回りは4%程度です。この数字では旨味はありません。
しかも現在、賃貸物件投資において大きな壁となっている融資審査は、コインパーキングではさらに厳しい状況です。賃貸物件の場合は、がんばって探せば新築で利回り7%以上、中古で10%以上の物件をなんとか見つけることができます。
しかし、コインパーキングでこの数字はあり得ません。つまり、投入資金の回収期間がより長くなります。そのため金融機関は融資に前向きになれないのです。それでも私たちは、どうにか融資を受けることができました。キャッシュフローはこのようなイメージです。
★融資金額 :1億円
★融資期間 :9年
★金利 :1.7%
★返済期間 :9年
★月々の返済額:約100万円
★平均月間売上:35万円
このようなキャッシュフローなので、毎月65万円の赤字になります。しかしながら「月々65万円の9年払い(総額7020万円)で1億円の物件が買える」という目論見で投資をしているのです。
このような余裕のある方法は、ある程度の規模がある企業でなければできませんし、そもそも金融機関が融資をしてくれることは、ほとんどないでしょう。
そしてコインパーキングは、節税対策としても不利です。賃貸物件では、小規模住宅用地の特例を利用して土地の固定資産税を200㎡まで6分の1、200㎡を超える部分に対しては3分の1に軽減する、という節税対策ができますが、コインパーキングでは軽減措置はないからです。
コインパーキング投資で満足しているのは、ほとんどが地主です。「コインパーキングにしなくても十分な収入がある。でも、更地にしておくと草刈などが面倒だから」といった感覚なのです。
また、世論もこれ以上コインパーキングが増えることを望まない傾向があります。コインパーキングが増えている理由の一つとして通勤に利用されている、と書きましたが、その他にも「都市のスポンジ化」があります。これは日本の人口減に伴い空き家が増加し、都市部を中心に穴が開くように使用していない土地が目立つようになっている状態のことです。
本来、生活に便利なインフラや商業施設などが整っている都市部に、複数の未使用地ができると、街の利便性が低下し、行政サービスの効率も悪化します。そして地域の活気が失われていくのです。
この未使用地が、前述の「手軽に始められる」といった理由でコインパーキングになっている例が増加しています。人や交通の流れを考慮せずに無秩序につくられた小規模なコインパーキングは、地域の活性化にあまり貢献できません。むしろ、車の出入りが激しくなることで、地域住民から嫌がられることもあります。
つまり、コインパーキング投資に対しては、「高い利回りは期待できない」「世論からも歓迎されない」といった逆風が吹いているといえます。
利益率が悪く、管理会社も見つけにくいトランクルーム
トランクルームとは、家具や趣味で集めた品、車用品、書籍など普段は使わないが捨てたくはない、といったものを一時的に保管しておく有料スペースです。最近はインターネット通販などの普及でさまざまな商品を手軽に買えるようになりました。その結果、家に収納し切れないものが散らかって困る、といった人が増えてニーズが高まっています。
一般的に自宅外の保管スペースのことをトランクルームと呼んでいますが、厳密に言うと3種類に分かれます。
1.野外コンテナ
幹線道路沿いなどの空地にコンテナを設置して営業しているものです。皆さんが最も目にする機会が多いタイプでしょう。24時間利用可能な手軽さが人気です。
2.レンタル収納スペース
マンションの1室など屋内のスペースを利用するものです。こちらも物件によっては24時間利用可能です。
3.トランクルーム
主に倉庫業者が運営するタイプです。倉庫内のスペースを活用するもので、多くはスタッフが常駐し、利用時間が限定される場合があります。
今回、紹介するのは「1」の野外コンテナタイプです。その理由は無人営業が可能で、マンションや倉庫を借りる手間がない、手放し経営が可能だからです。前述のようにトランクルームのニーズは高まっています。しかも、今後さらに普及するであろうインターネット通販や単身世帯の増加によって、より市場の拡大が期待できます。
しかも、賃貸経営のように借地借家法とは関係ないので、立ち退きの問題もありません。さらに、空き家が増加している昨今では、「コインパーキングには狭い」「飲食店向きの立地ではない」といった他の事業では活用しづらいトランクルーム向きの土地が目立ち始めています。まさにこれから期待できる業種といえるでしょう。
私たちの会社も、そこを見込んで参入し、現在27カ所815室のトランクルーム(野外コンテナタイプ)を経営しています。その経験から、一般的な投資家が成功するには次のような数多くのハードルがあることが分かりました。
●認知されにくい
皆さんの中でも「トランクルームは見たことはあるけど、どこにあったか思い出せない」という人は多いのではないでしょうか。このような例からも分かるように、トランクルームの存在を広く認知させるには時間がかかります。規模にもよりますが、満室にするには2~3年かかるでしょう。
「ならば広告を」と思うかもしれませんが、今のところ賃貸物件のように誰もが知るポータルサイトはありません。そのため、自費でホームページなどを作成しSEO対策を万全に行う必要があります。
ところが、トランクルームの利用料金の相場は、0.5帖で月々4000円前後(地域による)と賃貸物件に比べて圧倒的に安価です。広告費の捻出は、ある程度の資金力がある企業でない限り難しいでしょう。結局は、現場に設置した看板に頼らざるを得ないのが現状です。
●利益率が悪い
前述のようにトランクルームの利用料は、比較的安価です。仮にローンを利用して土地を買って営業を開始し、中規模木造アパート並みの年間200万円の利益を出そうとすれば、おそらく80~100室は必要です。この規模のトランクルームを購入するならば、土地と設備を合わせて8000万円から1億円は必要でしょう。そこまで費やして挑戦する価値があるのか考えものです。
●管理会社が見つかりにくい
本連載で紹介する事業の大前提は「手放し経営」です。従って、トランクルームも敷地内のメンテナンスから利用者募集、集金まで全ての業務は管理会社に任せたいところです。
ところが、その管理会社を見つけるのが難しいのです。理由は客単価が低い割に手間がかかるから。有名ポータルサイトがないので利用者の募集は困難ですし、中には荷物を置いたまま音信不通になる人もいるのでそうなった場合は、持ち主を探さなければなりません。つまり、管理会社にとっては割に合わない仕事なのです。
●建築許可を得るのに手間がかかる
多くの人にとって野外コンテナタイプのトランクルームは、「空き地にコンテナを置いただけの施設」でしょう。しかし、実はトランクルームのコンテナは、法的に建築物扱いとなります。そのため、しっかりと基礎を造って固定しなければなりません。さらに積み上げて設置する場合は、倒壊防止の金具による連結も必要です。
また、このような設備工事の図面を作成し、避難経路も確保して、建築確認申請をしなければ建築の許可は下りません。一般の投資家にとってこれは非常に手間も費用もかかる作業です。
中にはこの手続きをせずに、無許可でコンテナを置いただけの施設もあります。しかし、それは違法なので見つかれば当然、罰せられます。実際に建築確認申請を行わずに建築工事を行ったコンテナ二段積みのトランクルームが、県から使用禁止の命令を受けて撤去した事例もあります。
●融資を利用するのが難しい
トランクルームは、月々の利用料を得るというところからアパート・マンション投資と非常によく似たビジネスモデルです。そのため、かつては開業資金を融資で賄う例が多々ありました。
ところが、現在の金融機関の姿勢はアパート・マンション投資と同等に厳しいものになっています。土地から購入する場合は、利回り8%前後がないと審査の対象になりません。一般的なケースでは、6%前後がほとんどなので、よほど掘り出し物の土地が見つからない限り融資を利用するのは難しいでしょう。
以上のことから、普段、本業に忙しい皆さんの次の投資先探しは八方塞がりの状態ではないでしょうか。
堀越 宏一
株式会社松堀不動産 代表取締役社長