都市近郊では、7500万円~1億円くらいが目安
実際にコインランドリーを土地から購入して開店するには、いくらくらいかかるのでしょうか。これは土地の価格に大きく左右されますが、私たちが多く出店している都市近郊では、大体7500万円から1億円くらいが目安になります。
この2500万円の差の理由は、主に土地の広さです。コインランドリーに最適な広さは100~200坪前後ですが、広ければ駐車スペースも機械の台数も増やすことができます。「機械の平均稼働率が12~16%なのに、そんなに多くの駐車台数や機械が必要なのか?」という疑問もあるでしょう。確かに、コインランドリーの駐車場が満車になった様子を見たことがある人は、非常に少ないはずです。
しかし、雨の日の土曜・日曜や地域の運動会があった翌日などは満車になることもあり得ます。また、機械に関しては、雨が降ると洗濯は家で行い、乾燥だけコインランドリーを利用するケースも多々あるので、乾燥機が順番待ちになることも珍しくありません。そのため、乾燥機は店の規模に対して多めに設置するのが得策です。
競合店に勝つためには、「いつ行っても車が停めやすい」「いつ行ってもすぐに使える」という安心感が重要なのです。では、実際の規模感を把握するために7500万円店舗と1億円店舗のモデルケースを紹介しましょう。
●7500万円店舗のモデルケース
総予算7500万円でコインランドリーを開店させる場合、売上目標は月間100~150万円です。土地の広さは100~120坪程度で6台以上の駐車場が最低条件になります。価格は坪単価20万円で2000万円といったところでしょう。ただし、これに加えて基本的には地盤改良工事費を見ておきましょう。この具体的な費用は地盤調査の結果次第ですが、大体100万円程度です。
しっかりとした地盤改良工事を行う場合、地盤にコンクリートの柱を流し込む柱状改良が主流ですが、これだと売却の際の撤去が困難になります。後々のことを考えれば、いざというときに抜き取りやすい鋼管杭を使用した方がいいでしょう。このようなコインランドリーならではの工事は、経験豊富な建設業者へ依頼することが必須です。
建物は平屋の30坪前後になります。費用はその他、内装や外装工事などを含めると、3000万円強といったところでしょう。大きくすればそれだけ設置できる機械の数が増えますが、欧米と違い日本ではそこまでのニーズがまだありません。費用対効果から考えると、30~40坪くらいの広さがベストといえます。
建物の注意点は基礎や地盤の補強以外は、通常の店舗と変わりません。しかしながら、通常の店舗と同じでは差別化ができないので、子育て世代のママたちに受け入れられやすいデザインやメンテナンスのしやすい部材選びにはこだわるべきでしょう。
機械は、国内最大クラスである35㎏の洗濯乾燥機が2台必要です。35㎏あれば、シングルの羽毛布団であれば2枚、2~3帖のカーペットが1枚洗えて乾燥もできます。
一般的なコインランドリー店の洗濯乾燥機の最大サイズは、27㎏が主流です。これでは羽毛布団はシングルでも1枚しか洗えません。コインランドリーの最大の魅力は、布団やカーペットなどの大物を洗えて乾燥までできることです。35㎏の洗濯乾燥機は、価格が27㎏よりも1台当たり50万円ほど高くなりますが、競合店との差別化のためにぜひ揃えておきたい設備です。
これらの機械を合計するとおよそ2000万円強になり、土地、建物、機械の合計が約7500万円となります。
●1億円店舗のモデルケース
1億円の予算が用意できるならば、駐車場20台クラスの店舗を開店させることができます。売上目標は月間130~200万円です。敷地面積は200坪弱で、価格は3500万円前後といったところでしょう。
駐車スペースは多ければ多いほどいい、と思うかもしれませんが、前述のように昨今のコインランドリーのニーズは、週末のまとめ洗いや羽毛布団などの大物洗いです。駐車した場所から店舗までの距離があまりに遠いと、それだけでお客様から敬遠されてしまいます。特に腕力の強くない女性からは避けられる傾向があるので、20 台が最多クラスといえるでしょう。
建物はニーズの高い乾燥機の数を増やすので、その分広くなります。予算7500万円の場合は30坪前後でしたが、こちらは40坪前後になります。建築費は、土地と同じく3500万円前後になります。
機械に関しては、前述のように乾燥機の数を増やします。具体的には3台を6台にします。乾燥機は、家で洗濯と脱水をしてから使用する人もいます。さらに雨の日は順番待ちも珍しくありません。「あそこは雨の日に行くといつも使用中」というイメージは絶対に避けたいところです。予算を増やせるなら、駐車スペースと同時に乾燥機増設に注力しましょう。
その結果、機械代が約2500万円となり、トータル約1億円の店舗を開店させることができます。この7500万円店舗と1億円店舗の詳しい内訳は、下記の図表で確認してください。
金融機関では「事業」扱いとなるコインランドリー
簡単に開店費用に関して説明しましたが、7500万円、さらに1億円といえばかなりの大金であり、ほとんどの人にとって現金で用意するのは難しいのではないでしょうか。また、一度賃貸物件投資のレバレッジ効果を知った人にとっては、融資を受けられない投資の魅力は、ほぼゼロに等しいはずです。
しかし現在、各金融機関は投資に対する融資に積極的ではありません。特に賃貸物件に関しては、2017年前半、金融庁が各金融機関に過剰なアパートローンへの融資を懸念する意向を通達しました。
そして2018年に入りスルガ銀行のシェアハウスに対する不正融資が発覚。金融庁はさらに不動産投資向け融資への監視を強化しています。その結果、皆さんはいくらいい賃貸物件が売りに出されていても融資が受けられないために、みすみすチャンスを逃している状況のはずです。
では、コインランドリーに対する融資はどのような状況なのでしょうか。実は、ほとんどの金融機関ではコインランドリー投資を賃貸物件への投資と同様に「事業」として扱います。つまり融資の対象となるのです。
その理由はいくつかありますが、やはり賃貸物件同様に土地と建物を担保として評価できることが大きいでしょう。金融機関としては、たとえ経営に失敗しても「1円も回収できない」ということがないからです。
さらにこれも賃貸物件同様に、オーナーが必ずしも経営のエキスパートである必要がないところも金融機関にとっては魅力です。運営を管理会社やフランチャイザーに任せてしまえば、素人オーナーでも安定した経営が実現できるので、審査のハードルをグッと下げることができるからです。
そして、何といっても最大の魅力は、賃貸物件のように競合がひしめき合っていないブルーオーシャン市場の上に、金融庁が融資に対して目を光らせていないことです。
金融機関も本音を言えば利益を上げるためにどんどん融資をしたい。しかし、賃貸物件は市場が飽和状態で、何より金融庁が厳しい監視をしています。そのようなときにコインランドリーは、金融機関にとってまさに願ったり叶ったりの融資対象なのです。
このような背景から、私たちのお客様の中には、金利0・85%で9000万円のフルローンを借りた実績もあります。ただし、このお客様の場合は、すでに4棟のアパートを安定経営していた実績が評価されての融資でした。それでもアパートならば、いくら銀行の担当者ががんばっても7000万円までしか借りられなかっただろうとお客様は話しています。
以上のようにコインランドリーは、賃貸物件と同様に融資を受けることによるレバレッジ効果を十分期待できる投資対象です。とはいえ、一つだけネックがあります。それは金融機関の審査部門にその魅力を正確に伝えることが難しいということです。
基本的に金融機関の担当者は、自身の営業成績を上げるために積極的に話を聞き、理解しようとしてくれます。それが仕事だから当然でしょう。ところが、その担当者から上司、審査部門と伝言ゲームが続く際に、だんだんとテンションが下がっていき、最終的に審査が通らないことが多々あるのです。
審査部門としては、コインランドリー投資を取り扱うことが初めてのケースがほとんどです。よほど勝てる=返済可能な根拠が揃っていないとOKを出せないのでしょう。この対処方法として、最もハードルが低いのが、すでにコインランドリーに対する融資実績がある金融機関を見つけることです。融資実績があるならコインランドリー投資の手堅さも熟知しているので話が早いでしょう。
しかしながら、そのような金融機関は、極めて少ないのが実状です。なぜなら、今まで数多くのコインランドリーを開店させてきたフランチャイザーや機械の販売代理店などは、資金力のある地主をメインターゲットとしてきたため、金融機関との付き合いが希薄だからです。コインランドリー投資に対して、複数の融資を通した実績があるのは、おそらく知る限り私たちだけでしょう。
自力で融資を受けるならば、かなり詳細でリアルな事業計画書が必要になります。基本的に金融機関は、審査部門だけでなく窓口となる担当者までも、コインランドリーに対して明るいイメージを持っていません。まだまだコインランドリーは「苦学生や男性の単身者が通う暗くて薄汚れた空間」という印象が一般的なのです。
これを打ち破るには、「清潔でおしゃれな店内」「大きくて簡単に操作ができる機械」「万全のセキュリティ体制」「競合店の状況と勝てる根拠」「商圏の市場調査結果」などを完璧にプレゼンする必要があります。
私たちの実績では、このプレゼンに成功すれば、金融機関の態度は一変します。急に「ぜひ私どもの銀行で」という姿勢になるのです。こうなったらこちらのペースです。複数の金融機関を競合させて金利交渉も可能。前述のお客様のようにアパートなどの安定した経営実績があるのなら、金利1%以下のフルローンも十分狙えます。
ただし、人によっては、そこまで良い条件が出ない場合もあります。比較的多いのが、「担保価値のない機械代は融資できない」というケースです。このような場合は、最低でも現金で2000万円ほど用意しなければなりません。
融資がつきやすい人、つきにくい人の違いとは?
コインランドリーは、金融機関へのプレゼン次第で賃貸物件よりもはるかに融資がつきやすい投資対象です。とはいえ、当然ながら融資がつきやすい人(法人含む、以下同)とつきにくい人がいます。主な融資がつきやすい人は次の二種類です。
1.複数の賃貸物件を安定経営している投資家
金融機関が融資をする・しないを判断する決め手は、「確実に返済してもらえるか否か」です。当たり前のことですが、返済できそうにない融資申し込みを受け入れるわけにはいきません。その判断材料として、担保の有無や預貯金の額などがあるのですが、それらと並んで大きな影響を与えるものに個人の信用があります。
ほんの2~3年前まで、一部上場企業の社員や公務員の信用は絶大でした。そのため、年収の10倍近い賃貸物件投資にも比較的容易に融資がつきました。ところが、最近は、あまりにもサラリーマン大家が増えたことなどから、それらの人に対する融資審査は、大変厳しいものがあります。
一方、以前と変わらず融資がつきやすいのが、すでに融資を受けて複数の賃貸物件を安定経営している投資家です。このような人たちは、堅実な返済実績を積み上げているので、金融機関から見れば上得意のお客様です。その実績は、たとえ新規の金融機関でも評価されます。また、複数の賃貸物件を安定経営しているということは、実務は管理会社に任せていても物件を見極める力はしっかりあると見なされます。
これはコインランドリーに関しても同じで、運営のノウハウを持ち合わせていなくても、しっかりとした事業計画が立てられており、管理を外部に委託できるようになっていれば、実績のある投資家が手堅い新規事業を行うと認められるのです。
さらに、追加の賃貸物件への投資では、供給過多などによってリスクが大きくなっていますが、ブルーオーシャン市場のコインランドリーへの投資ならばリスクの分散にもなります。これも評価される大きなポイントでしょう。
2.安定経営を続けている中小企業の経営者
信用度の高い投資家と並んで融資がつきやすいのが安定経営を続けている中小企業の経営者です。理由は投資家とほぼ同じです。安定経営を続けていれば、金融機関からの借入れに対する長年の返済実績もあるでしょう。これは大きな評価ポイントです。
また、中小に限らず企業にとって新規事業への参入は、常に取り組まなければならない必須項目です。一つの事業だけにしがみついているのは、市場や社会変化の影響を受けやすく、非常にリスクが大きいからです。そういった意味で経営ノウハウがなくても参入しやすく、土地と建物という担保があるコインランドリー投資は、金融機関にとって融資したくなる新規事業といえます。
堀越 宏一
株式会社松堀不動産 代表取締役社長