実は「コインランドリーに適した土地」は余っている
コインランドリーに限らず店舗経営の成否は、立地によって大きく左右されます。そのため一般的に商売に適した土地は早い者勝ちです。その情報の多くは、広く公開されることなく人脈などによって先取りされてしまうのが実情でしょう。
しかし、コインランドリーに向いた土地に限っては、状況が大きく異なります。実はコインランドリーに最適な土地は余っているのです。
その理由は、コインランドリーに向いた土地の広さが、他の業種から見ると中途半端だからです。コインランドリーに適した土地の広さは、100~200坪です。ここに延床面積30坪前後の建物を建てると、大体6台から20台の車を駐車することができます。
昨今のコインランドリーは、1週間分の洗濯物をまとめて洗ったり、羽毛布団を洗ったりするような使い方が多いので、徒歩で来店する人はほとんどいません。つまり、駐車スペースは必須なのです。とはいえ、洗濯や乾燥を開始したら終了するまでの時間は移動して他のことをするお客様が大半なので、それほど大きな駐車場は必要ありません。6台から20台くらいがちょうどいいのでしょう。
一方で世の中の商業用地のニーズは、だんだんと大型化しています。特にコインランドリーの開業に適した郊外エリアは、スーパーとドラッグストアといった大型複合施設が増えています。また、飲食店も大型チェーン店がメインとなり、2~3時間は滞在する複数の女性客や高齢者の社交場となるケースが目立ちます。
そしてコンビニは、トラックや運転に慣れていない女性客でも停められやすいように余裕のある駐車場が好まれます。さらに郊外であれば外周りの営業マンや建築関係者などがゆっくりと弁当を食べるために広めの駐車場があるコンビニに人気が集中するようです。
このような大型店舗用地に適した土地の広さは、少なくても300坪以上です。幹線道路沿いでこれくらいの広さの土地は競争が激しく、よほど地主や不動産会社との強いコネクションがない限り見つけることは難しいでしょう。運よく見つけられたとしても、人気ゆえに購入するにしても借りるにしても割高なはずです。
ところが、幸いにもコインランドリーには、それほど広い敷地は必要ありません。そしてロードサイドで立地条件はいいものの、大型店舗に向かない100~200坪の土地は、現在、比較的見つかりやすい状況です。
かつてこのような商業用地の多くは、個人経営の飲食店や衣料品店、小規模なコンビニなどがテナントとして入っていました。ところが、大型チェーン店の進出で売上が落ちて撤退。次のテナントを見つけても、同じ理由で再度撤退、または家賃を滞納していくケースもあるので、地主は頭を抱えています。
ならば賃貸住宅にしようと考えても、交通量の多いロードサイドは住宅地には向きません。そのため地主たちは「もう活用方法がないから売りたい」と考えているのです。
コインランドリー投資を始めるのなら、融資などの理由で、土地は借りるのではなく購入するのが正解です。開店に向いた土地が余っている。しかも借地としてではなく、売地としてという現状は非常に恵まれているといえるでしょう。
土地を購入して建物を新築すれば、賃貸も売却も容易に
私たちがお勧めするコインランドリーの開業方法は、土地を購入して建物を新築するものです。この方法にはさまざまなメリットがあり、その一つとして出口戦略が容易だということがいえます。
コインランドリーは、間違いなく最も手堅い投資対象の一つです。しかし、100%成功するというわけではありません。圧倒的に強力な競合店の出店や個人的な事情で撤退を決断しなければならないこともあるでしょう。
そのようなときに築浅の建物であれば、貸すにしても売却するにしても比較的容易に相手を見つけることができます。また、内装設備が洗濯機や乾燥機といった機械だけなので、移動させてしまえばすっきり何もない空間となります。次に始める業態が何であれ、柔軟に対応できるはずです。従って自分で業態を変えて開業する場合も容易です。
そして、コインランドリー用の洗濯機や乾燥機などの機械は、中古品として売ることも可能です。実はコインランドリー市場の成長に伴いこれらの市場はかなり整備されており、きちんとした手順を踏めば買い叩かれることはほとんどありません。試しにインターネットで「コインランドリー 中古 買取」といったワードで検索してみてください。信用できそうな買い取り業者が複数見つかります。
例えば、洗濯乾燥機の中でも人気サイズである27㎏モデルの新品価格は10年落ちでも購入価格の半値程度(100万円前後)で売却することも十分可能です。また、20年落ちでも1~2割程度で売却することが可能でしょう(機種や程度による)。従って、新品価格の総額が2500万円の機械なら、20年後でも250万円から500万円の現金になるのです(撤去費除く)。
さらに、時間が経って機械としての価値がなくなったとしても、鉄やステンレスといった素材としての価値は残ります。この買取相場は大体1トンで3万円程度です。1店舗分の機械の総重量は7~8トンですから20数万円になる計算です。決して見過ごせない金額でしょう。
貸しやすいし、売りやすい。しかも土地も機械も価値が落ちにくい。このような出口戦略が容易なところもコインランドリー投資の魅力です。
競合店の出店には、商圏でベストな店舗を作って対抗
高利回り、成長市場、出店が容易、相続や事業継承対策にもなる。さらに出口対策も立てやすい。まさにいいこと尽くめのコインランドリー投資。しかし、当然ながら全くリスクがないわけではありません。
最も大きなリスクは競合店の出店でしょう。これは自分ではどうしようもありません。対策としては、その商圏でベストな店舗を作ることです。どの専門家から見ても「このエリアに出店しても勝てない」と思わせるような店舗をあらかじめ作ってしまえば競合店は出店してきません。
「ベスト=完璧」な店舗と聞くと非常にハードルが高く感じるかもしれません。確かに飲食店などの場合は、飽きられたり、味覚が人それぞれだったりで、これがベストと決めることは難しいでしょう。しかし、コインランドリーの場合は、目的が「洗濯物がきれいになること」だけなので飽きられることはありません。
そして、ベストを決定づける項目が「駐車場の台数」「駐車のしやすさ」「機械の台数」「機械の容量」「立地」「清潔さ」など簡潔です。この項目さえ完璧であればいいのです。特に立地は重要です。実はコインランドリーに最適な立地は非常に限られています。主な条件には次のようなものがあります。
●主婦の方々が毎日使うスーパーなどへの通り道
●車が入りやすい広い間口
●車が6~20台駐車できる広さ
●反対車線からも入りやすい中央分離帯がない道路沿い
●街路樹や歩道橋などで看板が隠れることがない場所
これだけの条件を満たす立地は、おそらく商圏内で数える程しかないでしょう。その上でベストな機械を揃え、清潔さを維持できれば、たとえ競合店が参入してきても負けることはありません。逆にどれか妥協した項目があれば狙われてしまいます。マーケティングに長けた専門家であれば、あえて目の前に出店し、潰しに来るでしょう。
とは言え、それはこちらが出店する際も同じことが言えます。すでに周辺住民に認知度がある店舗の近くに、あえてベストな店を出店すれば、多額の広告費を負担しなくても最初から多くの集客を期待することができます。
堀越 宏一
株式会社松堀不動産 代表取締役社長