下町らしさと都会らしさ、国際色で醸成された街
「麻布十番」は東京の中心、港区に位置しています。もともとは周辺のテレビ局や大使館の関係者などの隠れ家的遊び場、ハイソな街として知られていました。2000年に地下鉄が開通したことにより交通利便性が高まり、住みたい町としても人気のあるエリアになりました。
麻布十番には「麻布十番商店街」という江戸時代から続く商店街があります。夕方になると人が並ぶ庶民的な居酒屋やおしゃれなカフェ、和菓子屋など、下町らしい店とセンスのよい店とが並んでいます。夏の納涼祭りでは地元の店や屋台が出店、ステージでは様々なライブが行われ、活気のある一面も見せてくれます。
また、麻布十番といえば、国際色が豊かな街としても有名です。周辺に各国の大使館が点在し、街を歩いていると外国人の多さに気が付きます。街行く人は、どことなく優雅で余裕のある出で立ち。落ち着いた大人の街であることが感じられます。
下町らしさと都心のおしゃれさ、そして国際色の豊かさ。その独特な雰囲気が麻布十番という街を醸成しています。
都営大江戸線と東京メトロ南北線がクロスする「麻布十番」
「麻布十番」駅は都営大江戸線と東京メトロ南北線の2路線が利用可能です。この2線を利用すれば、都心の主要オフィス街には直通で移動できる交通利便性の高いエリアです。
都営大江戸線は地下の山手線といわれるように、東京の都市部を環状に通る路線。東京メトロ南北線は都心を縦断している路線です。2路線とも都心の主要なオフィス街へのアクセスがよく、この2線を利用すれば「永田町」や「飯田橋」、「新宿」、「浜松町」方面など、都心の主要オフィス街に直通できます。また、「六本木」が徒歩圏内なので、「六本木」で働く人からも人気の高いエリアです。
「賃料相場」と「賃料の変動可能性」が高いエリア
「麻布十番」駅周辺の賃貸市場
麻布十番駅の賃貸市場を分析していきます。まずは賃料相場と築年数の比較です(図表2)。23区平均と比較すると、賃料相場は23区の3,339円/m2に対し、麻布十番は4,499円/m2。高級住宅街というだけあって、平米単価の平均値、中央値、最頻値ともに23区平均より高く、都内でも非常に高い賃料相場のエリアです。
次に重回帰分析で「築年数」「徒歩分数」「面積」の3つの変数が賃料にどの程度影響を与えているかを分析します。「●徒歩・築年・面積による賃料の重回帰分析結果一覧」(図表2)を見てみると、麻布十番駅の単身者物件の月額賃料は「d.切片」の43,516円からスタートし、徒歩1分ごとに「a.徒歩」の782円ずつ、築年数1年ごとに「b.築年」の1,731円ずつ値下がり、面積1m2ごとに「c.面積」の4,249円ずつ値上がることがわかります。
「賃料に対する影響割合の比較」(図表2)から麻布十番駅の賃貸市場の傾向を分析すると、麻布十番は築年による賃料下落「b.築年/d.切片」、標準偏差の割合「e.標準偏差/d.切片」の割合が非常に高く、賃料の変動可能性の高いエリアといえます。都心の繁華街や開発が盛んなエリアに多く見られる特徴で、リノベーションによる効果の期待できる市場といえます。
麻布十番の居住者特性
麻布十番の居住者特性を見ていきます。まずは単身者世帯の比較です。
東京都ならびに港区の人口のうち単身者世帯の割合をみると(図表4)、東京都全体で約47%、港区で約51%です。港区は住環境のよいいわゆる“お屋敷街”といったエリアが多いため、東京都の中でも家族世帯も多いエリアです。
一方、麻布十番の単身者割合は55%と港区のなかでも高い水準。単身者は割合こそ減っているものの、数でみると2010年から2015年で約3,400人増加しています。
また、対象エリア内の居住者の年齢構成をみると(図表5)30代と40代が多く、全体の40%を占めます。賃料相場も高く、大人の街というイメージから、40代前後の年齢層が多いエリアになっています。
空き家数は増えているが賃貸経営に大きなリスクはなし
人口(需要)が増える一方、空き家も増加する港区
「麻布十番」駅の所在する港区は東京都の南東部に位置し、「新橋」や「虎ノ門」などのビジネス街や、「青山」「赤坂」などの商業エリア、「六本木」などの歓楽街など、さまざまな表情を持った街です。
住宅・土地統計調査「借家数の変化」(図表6)によると、2008年から5年の間に23区全体で約190千戸の賃貸物件が増え、同調査による「空き家の変化」(図表7)を見ると、空き家数も5年の間で全体的に増えています。港区を見てみると、供給にあたる借家数は5年の間に約7.8%減っているのに対し、空き家数は約18.2%増えています。
エリア別に貸家の住宅着工数(図表8)を見ると、東京都と23区の各年の増減は相関していることがグラフから読み取ることができます。港区の供給傾向も東京都や23区の増減と似たような動きを見せおり、2000年頃から着工数の増加が見られ、2006年以降は低い水準で抑えられていることがわかります。2009年以降はまた増加傾向がうかがえ、2016年も東京都と同じく増加傾向と予測できます。
人口の推移(図表9)を見てみると、港区の人口は年々増加していることがわかります。東京都によると港区の人口は2040年まで増加すると予測あれています。また、単身者数についても2035年まで増加傾向と予測されています。
麻布十番においても2010年から2015年で単身者数は増加しており、今後も単身者需要は一定数見込めるといえます。
まとめ
「麻布十番」はもともと周辺のテレビ局や大使館関係者などの隠れ家的遊び場、ハイソな街として知られていました。2000年に地下鉄が開通したことにより交通利便性が高まり、昔ながらの下町っぽさを残したハイソな街として、さらに「住みたい街」としても人気のあるエリアになりました。「麻布十番商店街」の下町らしさと、町全体の落ち着き、そして国際色の豊かさ。その独特な雰囲気が麻布十番という街を醸成しています。
賃貸市場に目を向けると賃料相場も高く、リノベーション効果が期待できます。また、港区は今後も人口数、単身者世帯数ともに増加傾向と予測されています。借家数も増加しているため安心はできませんが、賃貸経営をする上で大きなリスクのないエリアといえます。