外国人観光客が増加している閑静な住宅街
「豪徳寺」駅は東京の南側、世田谷区に位置しています。静かな環境の住宅街として発展しているエリアで、招き猫の発祥地という説もある「豪徳寺」をはじめ寺院が点在しており、外国人の間でもひそかに人気の観光地です。
日本一のビッグターミナル「新宿」や若者に人気の「下北沢」などにアクセスしやすい立地ながら、駅の周辺には心地よい静けさと緑広がる住宅街が広がっています。低層住宅地になっており、戸建てや単身者向けの集合住宅が多い地域です。
周辺には豪徳寺商店街や山下商店街などの昔ながらの商店街があり、その他、スーパーのトップ、くすりセイジョー、コンビニ、銀行が揃っています。飲食店はやや少ない印象ですが、日常生活を送る上で不便は感じません。休日のショッピングに「下北沢」や「三軒茶屋」へ乗り換えなしで行くことができるのもポイントでしょう。
駅名にもなっている「豪徳寺」は招き猫発祥の地ともいわれており、数多くの招き猫が祀られています。ここ、豪徳寺では招き猫は招福猫児(まねぎねこ)と称され、商売繁盛・幸せを招く縁起物として、参拝客や外国人観光客が訪れます。「豪徳寺」の他、「世田谷八幡宮」、「世田谷城址公園」などがあり、歴史を感じる街並みが広がっています。
交通環境にも恵まれた「豪徳寺」
「豪徳寺」駅は小田急小田原線が通っており、東急世田谷線「山下」駅への乗り換えも可能です。急行こそ停まりませんが「新宿」駅までは各駅停車で約15分、また、「下北沢」駅で京王井の頭線に乗り換えれば「渋谷」駅も約15分と、ターミナル駅まで素早いアクセスが可能です。また、「代々木上原」からは東京メトロ千代田線に乗り入れており、表参道・大手町方面にもダイレクトにアクセスができます。
落ち着いた住環境と利便性の両立が幅広い層から支持を得る理由でしょう。
経年による賃料の下落率が高いエリア
「豪徳寺」駅周辺の賃貸市場
豪徳寺駅の賃貸市場を分析していきます。まずは賃料相場と築年数の比較です(図表2)。23区平均と比較すると、賃料相場は23区の3,339円/m2に対し、豪徳寺は3,171円/m2。平米単価の平均値、中央値、最頻値ともに23区平均よりも低い水準です。都心からやや離れたエリアということもあり、賃料相場はやや低めなエリアです。
次に重回帰分析で「築年数」「徒歩分数」「面積」の3つの変数が賃料にどの程度影響を与えているかを分析します。「●徒歩・築年・面積による賃料の重回帰分析結果一覧」(図表2)を見てみると、豪徳寺駅の単身者物件の月額賃料は「d.切片」の59,110円からスタートし、徒歩1分ごとに「a.徒歩」の607円ずつ、築年数1年ごとに「b.築年」の923円ずつ値下がり、面積1㎡ごとに「c.面積」の1,701円ずつ値上がることがわかります。
「賃料に対する影響割合の比較」(図表2)から豪徳寺駅の賃貸市場の傾向を分析すると、豪徳寺は築年による賃料下落「b.築年/d.切片」、標準偏差の割合「e.標準偏差/d.切片」の割合は23区平均より高く、賃料の変動可能性の高いエリアといえます。リノベーションによる効果の期待できる市場といえます。
豪徳寺の居住者特性
豪徳寺の居住者特性を見ていきます。まずは単身者世帯の比較です。
東京都ならびに世田谷区の人口豪徳寺の居住者特性のうち単身者世帯の割合(図表4)をみると、東京都全体で約47%、世田谷区で約50%です。世田谷区は住環境の良い落ち着いたエリアが多いため、東京都の中でも家族世帯も多いエリアです。
一方、豪徳寺の単身者割合は54%と世田谷区の中でも高い水準。人口数でみると2010年から2015年で約2,000人増加しており、そのうち約半数が単身者の増加です。
また、対象エリア内の居住者の年齢構成(図表5)をみると30代と40代が多く、全体の33%を占めます。住環境の良く落ち着いて暮らせる豪徳寺は、ミドル世代の単身者から家族世帯まで、幅広い層から支持を得ています。
単身者数は増加傾向にあり大きな変動リスクは低い
借家数(供給)、人口(需要)ともに伸びる世田谷区
豪徳寺駅の所在する世田谷区は東京23区の南西部に位置し、都区のなかでは都心から遠い場所にあります。「成城」に代表される閑静な住宅街や、「シモキタ(下北沢)」「サンチャ(三軒茶屋)」「ニコタマ(二子玉川)」など世代を超えて人々を魅力するエリアが多いのが特徴です。
住宅・土地統計調査「借家数の変化」(図表6)によると、2008年から5年の間に23区全体で約190千戸の賃貸物件が増え、同調査による「空き家の変化」(図表7)を見ると、空き家数も5年の間で全体的に増えています。世田谷区を見てみると、供給にあたる借家数は5年の間に約7.9%減っているのに対し、空き家数は約38.3%増えています。賃貸住宅の供給が高まるなかで、いかに居住者のニーズを捕まえるかが求められるエリアといえます。
エリア別に貸家の住宅着工数(図表8)を見ると、東京都と23区の各年の増減は相関していることがグラフから読み取ることができます。世田谷区の供給傾向も東京都や23区の増減と似たような動きを見せおり、2000年頃から着工数の増加が見られ、2006年以降は低い水準で抑えられていることがわかります。2009年以降はまた増加傾向がうかがえ、2016年も東京都と同じく増加傾向と予測できます。
人口の推移(図表9)を見てみると、世田谷区の人口は年々増加していることがわかります。東京都によると世田谷区の人口は2025年以降に徐々に減少を始めますが、2040年の段階でも2005年人口比で約106%と高い水準を保っています。一方、世田谷区の単身者数も2035年まで増加傾向と予測されています。
豪徳寺においては2010年から2015年で単身者数・率ともに増加しており、今後も単身者需要は一定数見込めるといえます。
まとめ
「豪徳寺」駅は東京の南側、世田谷区に位置しており、静かな環境の住宅街として発展しているエリアです。また、招き猫の発祥地という説もある「豪徳寺」をはじめ寺院が点在しており外国人の間でもひそかに人気の観光地です。
周辺には豪徳寺商店街や山下商店街などの昔ながらの商店街があり生活がしやすく、日常生活で不便は感じません。日本一のビッグターミナル「新宿」や若者に人気の「下北沢」「三軒茶屋」にアクセスしやすいのもポイントでしょう。
不動産市場をみると、築年により下落傾向が高い一方、賃貸市場の幅・ばらつきを表す標準偏差が高く、リノベーションの効果が期待できる市場です。供給も増えているため油断はできませんが、今後も単身者数は増加傾向と予測されており、大きな変動リスクは少ないエリアと予測できます。