利便性が高く住みやすい「山手線の穴場」
「田端」は東京の北側、北区に位置しています。北区唯一の山手線の駅ですが、北区に馴染みのない方はあまり耳にしたことのない駅かもしれません。しかし、利便性の割に賃料に割安感があり、その住みやすさから2017年の『穴場だと思う街(駅)ランキング』では7位にもランクインしている駅なのです。
田端は北と南で大きく印象の変わる駅です。JR田端駅北口にはアトレヴィ田端が直結しています。アトレヴィ田端が完成したおかげで北口駅前は随分と賑やかになりました。アトレヴィ内には、カフェや飲食店、成城石井などが入っており、日常生活に不便はありません。アトレヴィのTSUTAYAは田端で唯一の書店なので、多くの人で賑わっています。
西日暮里寄りの武蔵野台地の上に作られた南口側は戸建てが中心の街並み。北口と打って変わって非常に落ち着いた雰囲気で、山手線の駅というには少し寂しい感じもするぐらいです。しかし、石畳の敷かれた駅前通りと、「不動坂」をはじめとした多数の坂が、街に昔懐かしく風流な印象を与えてくれます。
その他、戸建ての街並みの中にある有名なビストロや洋食店、田端の町の回覧板『TABATIME』(WEBマガジン)などがあり、「田端」にはさまざま魅力が溢れています。
都会というには少し物足りない。でも、それを補う味のある街並みや地域の繋がりを大事にする取り組み。そんな絶妙な住み心地が「田端」の魅力なのかもしれません。
北区唯一の山手線!幹線道路も多く、交通手段の多さが魅力
「田端」駅はJR山手線と京浜東北線の2路線が利用可能です。JR山手線が使えるので「東京」、「池袋」、「新宿」、「渋谷」などの主要エリアへはもちろんのこと、山手線で4駅の「上野」まで出ることにより、東京メトロ銀座線/日比谷線も利用可能です。また、「上野」からは新幹線も利用することができ、「日暮里」駅からは成田空港へ最短36分でアクセスできる「成田スカイアクセス」が利用可能です。成田への玄関口として、出張などで遠方に行く方から支持されています。
京浜東北線はいわゆる「南北縦貫路線」であり、都心の主要な通勤路線の一つです。都内はもちろん、埼玉方面から神奈川方面への移動に便利です。通勤や通学、プライベートで利用するほとんどの場所へ快適に移動できます。
山手線内でも「賃料相場」が安い田端エリア
「田端」駅周辺の賃貸市場
田端駅の賃貸市場を分析していきます。まずは賃料相場と築年数の比較です(図表2)。23区平均と比較すると、賃料相場は23区の3,339円/m2に対し、田端は3,182円/m2。田端は山手線内でも賃料相場の安いエリアです。
次に重回帰分析で「築年数」「徒歩分数」「面積」の3つの変数が賃料にどの程度影響を与えているかを分析します。「■徒歩・築年・面積による賃料の重回帰分析結果一覧」(図表2)を見てみると、田端駅の単身者物件の月額賃料は「d.切片」の56,465円からスタートし、徒歩1分ごとに「a.徒歩」の267円ずつ値上がり、築年数1年ごとに「b.築年」の788円ずつ値下がり、面積1m2ごとに「c.面積」の1,501円ずつ値上がることがわかります。駅から離れるごとに賃料が上がっていますが、隣接した駅のほうが相場が高く、周りの相場に引っ張られていると考えられます。
「賃料に対する影響割合の比較」(図表2)から田端駅の賃貸市場の傾向を分析すると、田端は築年による賃料下落「b.築年/d.切片」は平均的、標準偏差の割合「e.標準偏差/d.切片」の割合はやや小さく、賃料の変動可能性の低いエリアといえます。古くから形成されている住宅街に多い傾向で、安定した賃貸市場といえます。
田端の居住者特性
田端の居住者特性を見ていきます。まずは単身者世帯の比較です。東京都ならびに北区の人口のうち単身者世帯の割合(図表4)をみると、東京都全体で約47%、北区で約51%です。北区は、東京都の中でも家族世帯も多いエリアです。一方、田端の単身者割合は56%と北区の中でも高い水準ですが、2010年から2015年の推移をみると、単身者割合・数ともに微増といったところです。
また、対象エリア内の居住者の年齢構成(図表5)をみると20代と30代が多く、全体の33%を占めます。65歳以上の年齢層が多い北区の中でも、田端は若い世帯の多いエリアです。
「供給>需要」の傾向を示す田端エリアの不動産市場
都心部に比べ増加率が低い借家数(供給数)、人口増加が期待できる大きな再開発もなし
「田端」駅の所在する北区はその名の通り、東京都の北部に位置しています。大きな繁華街や観光名所などはありませんが、「赤羽」、「王子」、「十条」など、歴史のある町が多い区です。
住宅・土地統計調査「借家数の変化」(図表6)によると、2008年から5年の間に23区全体で約190千戸の賃貸物件が増え、同調査による「空き家の変化」(図表7)を見ると、空き家数も5年の間で全体的に増えています。北区を見てみると、供給にあたる借家数は5年の間に約6%増え、空き家数も約18%増えています。
エリア別に貸家の住宅着工数(図表8)を見ると、東京都と23区の各年の増減は相関していることがグラフから読み取ることができます。北区の供給傾向も東京都や23区の増減と似たような動きを見せおり、2000年頃から着工数の増加が見られ、2006年以降は低い水準で抑えられていることがわかります。2009年以降はまた増加傾向がうかがえ、2016年も東京都と同じく増加傾向と予測できます。
人口の推移(図表9)を見てみると北区の人口は年々増加していることがわかります。東京都によると北区の人口は2025年まで増加傾向と予測されています。また、単身者人口も2025年まで増加傾向と予測されています。その後減少を始めますが、2035年の段階でも2000年比で約130%と高い水準を維持しています。
田端においても2010年から2015年で単身者数は増加しています。再開発は予定されていないため大きく増加する要因はありませんが、その利便性から今後も単身者需要は一定数見込めると予測できます。
まとめ
「田端」は東京の北側、北区に位置しています。JR田端駅は北口にアトレヴィ田端が直結しています。アトレヴィ内には、カフェや飲食店、成城石井などが入っており、日常生活に不便はありません。西日暮里寄りの武蔵野台地の上に作られた南口側は北口と打って変わって落ち着いた街並み。喧石畳の敷かれた駅前通りと、「不動坂」をはじめとした多数の坂が、街に昔懐かしく風流な印象を与えてくれます。
賃貸市場に目を向けると、賃料相場は山手線の駅の中でも割安なエリアです。また、築年による影響も平均的で、賃料を表す標準偏差も平均よりやや低く、安定した賃貸市場といえます。
一方、不動産市場全体で見ると需要よりも供給のほうが多く、物件選びには注意が必要です。居住者のニーズを捉えた物件選びをする知識が必要なエリアといえるでしょう。