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金融機関が資産運用初心者に勧めた「仕組債」とは?
定年退職や相続によって、まとまった額の現金を手にしたとき、資産運用で少しでも増やせたら…と考える人は少なくありません。しかし、投資には知識が必要であり、安易な金融商品の購入は危険です。人に勧められるまま、自分で理解することなく投資しては、後で痛い目に遭いかねません。
今回は、これまで投資と無縁に過ごしてきた会社社長が、金融機関の担当者に勧められた「仕組債」という金融商品で、多額の現金を失った事例を見ていきます。
●年齢・性別・肩書き:70歳 男性 会社経営者
●金融資産:約2億円
●運用開始状況:会社を息子に継承し、時間的な余裕ができたため、退職金を含めた本格的な資産運用を開始
●これまでの運用:本業が忙しかったため、自身の資産運用はまったくしておらず、銀行の預金に預けたままだった
Aさんは運用に関してはまったくの素人で、これまで興味もなかったため、どこから情報を取っていいかわかりませんでした。まずは銀行に相談してみようと思い立ち、担当者に連絡しました。相談を受けた銀行担当者は「グループ会社の証券も含め、いろいろとご提案できますよ」と回答。後日、顧客の同意を取り付け、証券担当者と共同で提案を行いました。
Aさんが提案されたのは「利回り5%の債券」です。その商品はABC電機の株価によって償還金額が変動する特殊な債券で「仕組債」と呼ばれるものでした。
この債券の条件は、
①利率5%
銀行預金が0.001%に比べ考えられない位高い利息が支払われます。
②早期償還
この仕組債の場合、対象株式の価格が当初から5%以上値上がりすると、償還日前であっても債券は償還され、額面金額(=元本)が払い戻されます。
③ノックイン水準
この仕組債の場合は60%に設定されています。対象株価が40%下がらなければ満期償還されます。ノックインした後、株価が行使価格を上回らない場合は大きく値下がりしたABC電機の株で償還されます(ケース⑤の場合)。
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Aさんは、5%の高い利息がもらえることや、株価が40%下がらなければ元本が保証されるといったことから、この債券に魅力を感じました。
早期償還を繰り返し、同じ銘柄で何度も購入したが…
さてAさんはどうなったのでしょうか。
まずは1億円でこの債券を購入しました。Aさんが仕組債を購入したあと、株式市場は堅調に推移し、高い利息を受け取ることができました。しかし、株価が5%以上値上がりしたので早期償還条項にかかり、3ヵ月で元本が戻ってきました。戻ってきた資金を銀行預金においてもゼロに近い利息なので、再度、同じ銘柄の仕組債を購入しました。今度も相場が上昇し、3ヵ月で償還し5%の利息を受け取りました。
こうなると止まりません。Aさんは、担当者に提案されるままに、金額も2億円に増額し再度スタートさせました。この後もしばらく早期償還を繰り返し、高い利息を受け取り続けました。
しかしその後、Aさんは奈落の底に突き落とされるのです。米国株式の大幅な下落を受け日本株式相場が急落するなか、ABC電機の株価がノックイン価格に抵触し、株価の回復を待たずに償還を迎えてしましました。
結局、償還金額は投資元本の60%程度で、2億円の投資金額に対して1億2000万円の償還になりました。それまで受け取った利息の合計は約1000万円程度。1回のノックインによって、コツコツ受け取っていた収益が一瞬で吹き飛んでしましました。
繰り返しの購入=ノックイン価格の水準も上昇
なぜこのようなことになってしまったのでしょうか。検証するポイントは2つあります。
①早期償還条項
個別株だと、相場が堅調に推移していれば5%の上昇はそれほど難しくなく、すぐ早期償還になってしまいます。償還すると、資金が戻ってくるので、繰り返し購入するケースが多く見受けられます。
②ノックイン条項
ノックイン価格が当初株価の60%と設定された場合、担当者から「ここから40%下がる可能性は少ないと思いますよ」などと言われ、「さすがに40%は下がらないだろうね」と根拠のない自信のもと元本保証と勘違いしてしまうことがあります。
同じ株を対象にした場合は、早期償還で次に購入するときには、株価水準が上がっている、つまりノックイン価格の水準も上昇しているのです。その状況で、株価が急落するとどうなるでしょう。ノックイン価格に抵触し、それまで受け取っていた利息収入では賄えない大きな損が発生します。「繰り返せば大きな損失を被る」ということを理解する必要があります。
仕組債は、債券とデリバティブを組み合わせることで利回りを高く見せる商品です。仕組債で組み込まれているデリバティブ取引は、「オプションの売り」というデリバティブ取引でもリスクの高い仕組です。
Aさんは、この失敗でこれまで本業で蓄積してきた資産を大きく減らすことになり、投資からも距離を置くことになってしまったのでした。
冨中 則文
幻冬舎アセットマネジメント IFA事業室 室長
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