銀行の実態は「羊の皮を被った狼」?
30年続いた平成という時代が終わり、新天皇の即位に伴う改元「令和」となりました。さまざまなメディアが「平成の30年とは何だったのか?」という振り返りの特集を組んでいます。筆者が思う平成30年間は「情報忙殺社会」だと考えています(我々が情報に追いかけられるというイメージです)。
『朝日新聞』の記事「SNSの時代、格闘は続く」(2017年1月9日付朝刊)によると、人類が創出した情報量は2000年に62億GB(ギガバイト)だったものが、2011年には1兆8千億GBに激増し、2020年には44兆GBと飛躍的な情報量が流通すると記載されています。
ひと昔前に比べて、私たちはおびただしい量の情報をインプットしているのですが、その情報の「質」が改めて問われています。フェイクニュースや誤報等、世間をミスリードする情報が溢れる中、これからは情報の取捨選択力がより一層求められます。特に「お金」まわりの情報の重要度はより増していくのではないでしょうか。
それらと関連したトピックとして、これまで日本経済の成長と共にその勢力を拡大し、国力を支えた銀行等の金融機関を取り上げたいと思います。昨今、国のゼロ金利政策で目も当てられない程に景気が悪い銀行が溢れ、それに乗っかる形の銀行批判の記事も増えていますが、これまでの国内の個人、企業の成長をある程度支えてきたこともまた事実です。
しかし銀行の実態は端的にいうと「羊の皮を被った狼」です。例えば経営者の多くが運転資金等で融資を受けますが、その多くがマル保(※1)案件で、銀行は一切損をしないものです。そして個人において住宅を購入する際にはローンを利用するのが一般的ですが、こちらは抵当権(※2)が設定されているのが一般的です。イザというときには、抵当権を実行、競売により貸金を回収するので、自分たちは一切腹を痛めずに悠々とお金儲けをしてきました。
※1 信用保証協会の保証がついた融資。主に中小企業が金融機関から融資を受ける場合に利用できる。無担保、無保証人でも融資を受けられるため資金調達がしやすくなるという利点もある。
※2 住宅ローンなどの融資を受けた人が、万が一返済できない(債務不履行)事態に陥った場合に土地や建物を担保とする権利。
「羊の皮」とは世間一般のイメージです。多くの人が、「銀行=お金のプロ、投資のプロ」という認識をもって銀行を頼りにしてきました。しかし、いわれるがままに融資を受けた人々の一部は、会社が倒産したり、自己破産せざるをえない状況に追い込まれたりと、悲惨な結果に至るケースも少なくありません。
銀行員は投資のプロではなく、セールスマン
では、なぜ人々は銀行に頼らざるをえなくなったのでしょうか。
【中小企業経営者の場合】
『Forbes JAPAN』の「日本長者番付 2018」において上位50名は全員経営者でした。こうした世間のイメージもあり、富裕層=経営者と見られがちですが、中小企業においてはやや事情が異なります。売上好調であっても、利益が出ない、あるいは出にくい会社はたくさん存在しており、日々の資金繰りに精一杯というのが現状です。
一般的にわかりやすい尺度として、売上を目標にする会社が実に多いですが、これは大きな過ちといえます。これはどういうことでしょうか。売上の金額がそのまま会社の内部に残るならいいですが、そんなことは100%ありえません。
売上から原価を引いた「売上総利益」が手元に残るキャッシュの大元「粗利」と呼ばれるものです。さらにその粗利から経費や人件費、借金の利息、儲かっていれば法人税などが支払われます。しかし売上は増えても利益が上がらない。もしくは赤字になる…。詳しい説明は省きますが、重視すべきは「売上」より「粗利」です。粗利が高ければ、少々の売上減にも耐えられますが、粗利が低ければ、1割の売上減でもすぐに響きます(ここを理解していれば後述する負のスパイラルには陥りません)。
さらに、摩訶不思議なことに売上が増えると、それを維持するための運転資金が必要となり、資金繰りに迫られようになります。そのためにはやはり銀行に頼らざるをえません。銀行としても、企業の売上が増えることで、自分たちの「融資」という商売にプラスになるので、経営者にさらなる売上増を求めるのです。経営者も銀行に迫られるまま、売上を増やそうとしますし、それにつられて運転資金を借りてしまう…という負のスパイラルに陥ってしまいます。
【個人の場合】
「現状を固定したものと考えるのでなく、日に新たに変化していくものととらえるというような柔軟な心から、新たな創造が生まれてくるのではないかと思います。そしてそういう柔軟な心はどこから出てくるのかというと、それはやはり素直な心になるところから養われてくるのではないかと思うのです」
※ 出典『松下幸之助成功の金言365』(PHP研究所)
経営の神様として今なお多くの富裕層が慕うパナソニック創業者の松下幸之助氏の言葉です。
素直さは万般に通じるからこそ、人の話に真摯に耳を傾けること(傾聴)の姿勢はとても大切です。しかし、この世の中には、不可能なことを可能なことであるかのように宣伝し、人をダマしてお金を儲けるあくどいビジネスが数多く存在します。
例えば「ローリスク、ハイリターン」、「宝くじの当選番号教えます!」、「セレブ女性のお手伝い」などです。この他に私の知る限りでも、「原野商法」、「海老の養殖」、「和牛オーナー」、「ダチョウへの投資」など、怪しげな投資商法がいまだに多く存在しています。将来の保証、安心が欲しいからと、これらの話を素直な心で聞いてはいけません。
では、銀行等の金融機関であればいいのでしょうか。実際に銀行は、投資信託や確定拠出年金等の販売を通じて、皆さんのお財布の中身(通帳残高)を虎視眈々と狙っています。それを知らずに人々(情報弱者)は、世間のイメージ(羊の皮)を信頼し、資産運用の相談などをしてしまうのです。将来の不安を解消するため、前述した投資商品などよりはるかに信頼度が高い(かのように見える)金融商品などを勧められるままに購入します。覚えておくべきは、銀行員は投資のプロではなく、売るプロ(セールスマン)という事実です。
もし彼らが投資のプロであるならば、窓口販売などに立つことなく、自身でビジネスを立ち上げたり、投資商品を運用して、悠々自適な暮らしを送っているはずです。それをしていないのは、やはり売るプロであって投資のプロではないからでしょうか。
自分で考えることを放棄してはいけません。令和時代は、個人でも会社経営者であっても、正しい情報を取捨選択し(情弱から脱し、「質」の高い情報を得るスキルを身につける)、大切なお金の運用することが、一層求められる時代に入ったといえるでしょう。
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