紹介で来院した患者は処置後もとの病院に送り返すべし
「がめる」という言葉は、必要以上に集めるとか、黙って自分のものにするという意味で関西などで使われている言葉です。感覚的には、カラオケの「マイク離さーず」に近いかもしれません。
他院から紹介された患者さんが来たとします。その患者さんは、もともと訪れた病院から、理由があってあなたの医院に送られて来たのですから、治すべきところが治ったら、送り返さないといけません。そうは言っても、家からの距離があまり変わらなかったり、治してもらった縁を感じたりなどで、医院に居ついてしまう人がいます。なので、できるだけ送り返しましょうというアドバイスをしておきます。
なぜなら、「あいつのところは、送った患者を全部がめてしまって返さないから、もう次からは送らない」という噂が立ってしまうからです。世間的にというより、地域医師間でのことですが、それでも患者さんを送って下さるのはその地域の先生達なので、評判が悪かったら紹介率は下がってしまいます。
経験的に、一人送り返すとまた一人送って下さるというような、往復書簡のような付き合いになっていきます。返事がこなかったら、ふられてしまったのかな、と思ってその関係が切れるという感覚は理解いただけるでしょうか。
かく言う私も、術後は3ヶ月まで診ますと言って、最初はしばらく「がめて」いたのですが、最近は1~2ヶ月経過を見て悪くなければ、もうあとはそちらで診ておいて下さいと送り返すほうが、術後経過も分かるし、関係性が保てるのでそうしています。一旦患者数は減ってしまいますが、未来につながる投資と考えて、ずるずると引きずるのはやめましょう。
また、どうしても長くかかりそうな場合は、紹介元に手紙を書いて、少し長引く理由がありますので、しばらく当院にて経過を見せていただきますという連絡をしましょう。
1コマの売り上げを1万円上げるために必要な感覚とは?
これは不思議に思われるかもしれませんが、特に日数の取決めはなくて、ある意味、医院の裁量に任されています。なので、3ヶ月くらい来院がないと、初診を請求される場合もあると思います。厚生局からは、同じ病気の場合は引き続きの診察なので、再診として診るよう指導されています。医院側としては原則それに従っているのですが、前回の受診からある程度の日にちが過ぎていれば、前の病気が治った後に、今回は新しい症状で来たはずなので初診と判断している訳です。
ただし、初診とするときには、前回の病名は一旦終了にして、二回目の来院日で新しい病名をつける必要があります。当院では、それがあまりに頻繁にあると受付さんの作業が煩雑になるので、基本的に長期に渡り来院していない人を対象に、初診料を取ることにしています。もちろん、コンタクトレンズ検査料のように、初診は最初の一回だけしか取れない(地域による)と決められているときは、数年に渡って再診のままいくことになります。点数申請についてはいろいろと制約がありますので、分からない場合は保険医協会や地域の医会に確認して下さい。
患者一人あたりの単価を上げるには
この内容は、きっと世の中の開業専門コンサルタントの方が、大勢書いていると思います。非常に商売的になるので、あまり書きたくはないのですが、開業医には常識的な知識でもあるので、少し触れておきます。
一コマ3時間の売り上げを見てみましょう(保険診療と仮定します)
・A先生は30人診て、30000円(一人当たり1000円)。
・B先生は20人診て、25000円(一人当たり1250円)。
・C先生は25人診て、35000円(一人当たり1400円)。
一番多くの患者さんを診るのはA先生です。しかし、総額はC先生が一番高いです。同じ3時間働いて、どうしてこのような差がでるのでしょうか。
A先生は、診る人数が多いので、時間のかかる検査はしません。なので、診るのも早いけれど、総額が安くなります。B先生は、人数が少ないので少し検査をすることができます。ですので、本当は20000円の売り上げのところ、5000円ほど高くなっているのです。C先生は、人数も適正で、検査もして、処置もしていると考えられます。患者さんの人数が一番多いわけではありませんが、売り上げには一番貢献しているということです。
このあたりの感覚があるかないかで、一日の総売り上げが1万円ほど変わってくるのが分かるでしょう。保険診療ですから、実際には5万円ほどの違いが出ているはずです。これを一ヶ月20日間繰り返すと、結構な額の違いが現れるというわけです。
ただし、あまりに商売熱心になると、顔や態度にも表れますし、また後述する個別指導にも呼ばれるという悲しい現実も待っていますので、ほどほどにしておいて下さい。