今回は、クリニック開業における旧医院のカルテの保管方法や、増加を続ける患者への対応策等を見ていきます。※勤務医よりさらに忙しく、すべての責任がのしかかる「開業医」。しかしそこには、自らの創意工夫が収益につながる楽しさや、やりがい、手ごたえといった「経営者」だからこそ感じられる醍醐味があります。本連載は、中内眼科クリニック院長・中内一揚氏の著書である『つぶれないクリニック』(兵田印刷工芸株式会社出版部)より一部を抜粋し、開業医をめざす医師に向け、「つぶれないクリニック」経営の方法を紹介します。

新規開業で電子カルテ利用なら「倉庫」は不要だが…

現在では使い易さ、インパクト、情報量を考えて電子カルテを選択するのが賢いでしょう。医院を継承するときに一番問題となるのが、旧医院カルテの保管・取扱いではないでしょうか。無駄なスペースは極力減らしたいものです。

 

●院内カルテ庫の省スペース化 

 

新規開業で、電子カルテからスタートする医院であればカルテ庫は必要ありません。

 

継承開業で紙カルテから電子カルテに移行する場合は最低5年分の紙カルテを置いておき、そのうち直近2年分を院内に、それ以前の分を倉庫に置いておくとよいです(法律では、診療完結の日から5年間の保管が義務付けられていますが、医療訴訟が増えているため、可能なら10年分置いておくと安心です)。院内にはカルテラックが一つあれば足りるようにしましょう。

 

新規初診の患者さんは電子カルテのみなので一番楽なパターンです。継続再診の患者さんは紙カルテを出してもらって、内容をサマリーしたものを電子カルテに記載し、終われば紙カルテは倉庫行きにします。特に分厚いカルテの人はしばらく院内に保管し、数回参照するとよいでしょう。旧院からの患者さんで、前回の受診から時間が経ちすぎて紙カルテがない初診の患者さんがいますが、これはレセコンのデータ移行で、最終来院日や以前につけられた病名だけは分かります。

 

大学病院などで、紙カルテを電子カルテに移行した経験のある先生は多いでしょう。クリニック規模では、あれほど大変ではありませんが、やることは同じです。とにかくサマリーを書いて、人力で移行すること。しかし、労力と時間には限界があります。まずは、前院長が覚えているような、今までの経過が複雑な人や、よく来院している人のカルテから処理しましょう。あとは、実際に診察に来られたときに重要なところを抜出し、その日の診療に支障が出ないように間に合わせます。入力が間に合わないときは、旧カルテのスキャンをして、情報として取り込みをすればいいでしょう。半年~一年、旧カルテを出せば、あとは自然に必要なくなっていきます。

 

カルテを処分する場合は、業者に頼むか、自分で直接ゴミ処理場に投棄しに行くかですが、個人情報の塊ですから、普通ゴミには捨てられないので要注意!

 

電子カルテの場合、クリニック規模では5年や10年でサーバーが一杯になることはまずありませんので、今のところ廃棄に関してはあまり議論されていません。

 

旧電子カルテから新電子カルテに移行するときは、会社が違うとまず自動では無理です。残念ながら紙カルテと同様、サマリを書くしかありません。ただし、レセコンデータは、移行できることが多いですので互換性のあるソフトを選ぶのが良いでしょう。

 

●カルテ番号

 

カルテ番号は前院の続きでも、新しく始めてもよいです。特に決まりはありません。例えば、前院のカルテ番号が20212番で終わっているならば、新規は20213番から始めてもよいですが、番号が近いと新規か継続かわかりにくいので、30001番から始めればどうでしょう。そうすれば30000番台以降の患者さんは新規開業してからの方だということがすぐに分かります。

 

もっと変えたければ00001Aなどもありですが、カルテソフトとレセコンソフト両方での患者番号検索が面倒にならない文字列で管理するのが大事です。

「適正な患者の数」を割り出し、コントロールを

外来を続けていけば、普通は少しずつ来院患者数は増えてきます。科によっても異なりますが、一時間に診ることのできる患者さんの数には限りがあります。それを大幅に超えている場合は、きっと診ているようなものになってしまっているので、医院の利益にはつながっても、患者満足度は下がってしまいます。

 

また、その日はなんとかやり過ごすことができたとしても、翌日に繰り越された疲れが、肉体と精神をむしばんでいきます。自分のキャパをどうしても超えてしまうときは、予約の数を厳密にコントロールする(私は完全予約制はキライなのでしませんが)、昼間の検査枠に時間のかかる人を集めて診る、などの対策が必要かと思います。

 

私の場合、一日の適正人数は40~50人です。40人以下だと経営が心配だし、受付や検査員が暇そうにします。また60人を超えると、急に忙しくなったように感じて、全員の息が上がるようになります。そんなとき私は、疲れた顔を見られたくないという気持ちで必死で口角を上げて外来をしています。ドライアイのせいか、涙が急に溢れて、顔を洗わないと耐えられない時もあります。基本的にいつも全力投球のせいでしょうか。

 

ほとんどの先生にとって外来は体力との闘いだと思います。一日50人以上を毎日、丁寧に診れる先生は、それだけで職人と言えます。手術をしている先生であれば、さらに疲れが増してきます。たまに100人くらい診ているというツワモノもいますが、自分の経験からは、かなり流れ作業的になっているのではと思います。

 

[図表] イラスト:竹田明日香
イラスト:竹田明日香

バイトの医師には、自分のクリニックを任せられない!?

では、二診制あるいは代診を立てればいいじゃないかと思うのですが、そのなり手がいないというのが現状です。自分のクリニックを任せてもいいやと安心して見ていられる先生を抱えている医院はそれほど多くはないのです。

 

何故か。少し意地悪な発言ですが、人間(とくに私)は決められたサラリーの中では、それなりにしか働かないということです。給料が一緒なら、しんどかったら嫌だし、楽なら嬉しい。バイト先では診察室で発表の準備をしたり論文を書いたり、ネットをしたりして安息の日々を過ごしているのが大半の雇われの医者です。

 

大病院では残業代にはカウントされないので、給料の出ているところでデスクワークができると、精神的に守られた感じがします。しかし自分の医院となるとそうはいきません。時間があるかぎり、病名チェック、掃除、仕入れチェック、紹介状の返事、提出書類の記入など、なんやかんやとやることがあって、メールの返信の隙間時間を見つけるのが大変なくらいです。気ままにネットをする時間なんてありません。

 

自分が責任者かそうでないか、それだけでこんなにも気分が違うものなのか。これが開業してからの感想です。

 

代診の医師がいれば少しは身体も休まるでしょうが、勤務してくれる医師の性格や知識はどうなのか、任せて大丈夫なのか、患者さんは満足して帰っているのか、悩ましいですね。人選もさることながら、内容の濃い外来を求めるならば、患者さんの人数に応じてボーナスを出したり、手術や処置をした場合は手当を支給したりと、やる気を引き出す工夫が必要でしょう。

 

また、二診制を実行するのは、分院化するのと同じくらい難しいと思います。自分の横で、診察スタイルの違う医師が外来をするというのは、色々と気になりますし、ノータッチを貫くにしても限りがあると思います。一番の問題は、自分ほどには働かないですし、患者さんも院長の診察を受けたがるので、高い給料を払うだけのメリットは、代診よりも薄れてしまうからです。それでも忙しすぎる医院になってしまったとき、その選択肢が待っています。

 


中内 一揚

中内眼科クリニック 院長

 

つぶれないクリニック

つぶれないクリニック

中内 一揚

兵田印刷工芸 出版部

大学附属病院勤務から開業に成功した医師が実践してきた「クリニック運営のコツ」が満載! オンリーワンの医院になる方法/患者に信頼されるコツ/スタッフのやる気を引き出す/セーフティネットをはろう… 病院経営をス…

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