今回は、クリニックで雇用するパート医師や常勤スタッフ、非常勤スタッフの給料の目安等を見ていきます。※本連載は、中内眼科クリニック院長・中内一揚氏の著書である『つぶれないクリニック』(兵田印刷工芸 出版部)より一部を抜粋し、開業医をめざす医師に向けて実践的な経営方法や体験談を紹介します。

お釣りや両替のために、現金はどの程度用意すべきか

レジの中にはお釣りが必要です。では、お釣りはいくらくらい用意しておけばいいのでしょうか。

 

開院当初は、レジの中の合計が3万円になるようにしていました。しかし、日が経つに連れてそれでは足りなくなって、今は5万円で廻しています。もっと経営規模が大きな医院ではさらに多くのお釣りが必要でしょう。用意の一例ですが、3万円分のお札(千円20枚、五千円2枚)、約2万円分の小銭(500円×20枚、100円×50枚、10円×100枚、5円×50枚、1円×50枚)。半端な分は、千円札や100円玉などで補充します。とにかく、朝に5万円でスタートして、レジを締めるときに、総額がいくらになったかで、その日の売り上げが分かるという寸法です。

 

千円札、5千円札はしょっちゅう足りなくなるので、毎週両替に行きます。すぐに出入金ができる医院の近くにある銀行がマストでしょう。レジ以外にも予備で5万円分くらいは千円札を用意しておきましょう。小銭は棒金といって、銀行では50枚を一本にラッピングしたものを扱っています。以前は大手の銀行では500枚くらいまで無料で応じてくれたのですが、最近は1日50枚までと制限があって不便です(銀行によって異なるのでご確認を)。

 

入金は、日々の窓口収入を銀行に入金するだけの簡単な仕事に見えますが、結構奥が深いです。

 

もし1円まで小銭を入れることのできるATMがあって、ほぼ毎日入れに行けて、両替はすべて窓口で用意してもらうというのであれば、それほど煩雑ではありません。しかし、銀行で両替するのにも手数料がかかる時代になってしまいましたので、ある程度の小銭やお札は自前で用意するしかありません。

 

入金の方法ですが、銀行の通帳が売上金の記録(税務署に見せる帳簿)となりますので、記録を残すため、その日ごとに細かく伝票を書いて入金します。銀行窓口には嫌がられますが、午前、午後に分けてもいいです。売り上げの合計金額さえ合っていれば、総額で入金することに問題はありません。例えば、一日3万円の収入があったとして、1週間で6日働いて18万円の入金をするときに、伝票は6枚必要だけれども、1万円で18枚でも、1000円で180枚でも構わないのです。自前で両替を作るということは、できるだけ、万札に替えた状態で入金するということです。

 

私のところでは毎日の売り上げを金庫に保管して、数日に一回銀行に入れに行くのですが、この作業は家人以外にはなかなか頼みにくいと思います。私は家内に一任していますが、他の医院の売上げを受付さんとおぼしき人が入れに来ていたが、3人で行動していたのを目撃したと。要するに、一人に任せてしまうと、どこで背任が起こるか分からないので、数人で監視する必要があるのだということです。頼まれる方も嫌ですよね。

人件費の目安は、一ヶ月の売上の「20~25%」程度

給料のことは会計事務所が入っていると思うので、任せておいても良いのですが、経営者としてのだいたいの金額を摑んでおきましょう。

 

①パート医師

 

一コマ(9~12時など)あたりの金額で契約していることが多いです。現在では相場は4万円前後だと思われます。そこに通勤手当を乗せるのが普通です。処置手当を上乗せすると、外来中に処置が出ることが多くなります。スルーしやすいのでシュライバーさんにチェックをお願いしましょう。時間給が高いので、よほど忙しくなければボーナスはなしで良いと思われます。

 

②常勤スタッフ

 

月額が決まっているので、何時間でも働かせていいかというと大間違い。月額は、約160時間勤務したときに発生する金額がもとになっています。逆に、それを超えて働いた分は超勤手当をつけないといけないので、開院時間の長い医院は、ところどころで常勤さんに休みを取ってもらったり、早上がりの日を作ったりして、勤務時間を調整します。年に10日前後の有給休暇も発生しますし、ボーナスも年に二ヶ月分は必要。また、社会保険料もかかるので、結構高くつきます(本人の手取りも天引きされますが、医院も厚生年金を半額払わないといけないのです)。パートさんよりも高給で雇われていることを認識してもらって、医院の柱になってもらう必要があります。また派遣会社を介すると、契約時に年俸の20~30%の手数料を取られます。

 

③パートスタッフ(受付さん、シュライバーさん、検査員さん、看護士さんなど)

 

時給が1000円までのパートさんであれば、月に80時間くらい働いて、月に7~8万円。たいがい年間100万円以内に収まるので、あまり税金や社会保険料のことは気にする必要はありません。時給1500円以上の専門職のパートさんになると、月に10万円くらいは働くことになるので、年間120~130万円程度になり、夫の扶養から外れるとか社会保険をどうするか、ややこしくなります。また、機嫌よく働いてもらうために、年に二回程度ボーナスを支給することが多いですが、総額を見てどうするか考えましょう。

 

一ヶ月に出る売上(儲けではない)の20~25%くらいが人件費としては妥当と言われています。「金は天下の回り物」ですから、自らが院長として稼いだ分は、ある程度給与として社会(スタッフ)に還元することが求められています(涙)。

 

 

中内 一揚

中内眼科クリニック 院長


つぶれないクリニック

つぶれないクリニック

中内 一揚

兵田印刷工芸 出版部

大学附属病院勤務から開業に成功した医師が実践してきた「クリニック運営のコツ」が満載! オンリーワンの医院になる方法/患者に信頼されるコツ/スタッフのやる気を引き出す/セーフティネットをはろう… 病院経営をス…

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