眼科クリニック院長が教える「医師ならでは」の保険加入の実情

今回は、医師ならではの保険加入の実情とともに、加入すると安心な保険について見ていきます。※本連載は、中内眼科クリニック院長・中内一揚氏の著書である『つぶれないクリニック』(兵田印刷工芸 出版部)より一部を抜粋し、開業医をめざす医師に向けて実践的な経営方法や体験談を紹介します。

診療医なら全員が加入している「医師賠償責任保険」

●医師賠償責任保険

 

診療をする医師でこれに入っていない人はいないと思われます。1億円もしくは2億円の保証が受けられる割に掛金は安いです。医師会経由で入るとさらに掛金が安い代わりに100万円以下は免責(支払ってもらえない)なので、医師会からは、100万円以下の請求があった時のために小さな保険にも加入をさせられます。何かあった時に医師会の訴訟担当の先生は頼もしく、専任弁護士もつけてくれます。また、自費診療でも厚生労働省が認めているものは、保険でカバーされるという話です(内容によるので保険会社に要相談)。

 

しかし、美容手術は免責なので、美容外科の先生は、美容外科学会が立ち上げた賠償責任保険に入っています(掛金は同じくらいですが、保証限度額が100万円と安い。限度額が高いものは掛金はとても高い)。

 

●看護師や検査員などスタッフの保険

 

医院の中でおきた不可抗力な事故についての賠償は、先ほどの保険でカバーされています。例えば、患者さんが椅子に座ったら椅子が壊れて怪我をしたとか、電源コードに足を取られて眼鏡が壊れた、などです。

 

しかし、スタッフが何かの原因で事故を起こし、それに対して被害者が、医院ではなくスタッフを加害者として賠償を請求した場合も想定しましょう。そんなことってあるの?とも思いますが、もし雇った人に問題児がいたらどうしますか。怖いですね。スタッフにかける保険も経費になりますので、心配であればかけておいて下さい。

 

●労災保険

 

労働者がいる環境なので、当たり前ですが、労災保険には入らないといけません。正社員だけでなくパートやアルバイトの人にも適用されます。雇用保険とは別物です(雇用保険は週20時間以上の労働者に架せられるので、パートさんは月80時間前後の方は悩みどころです)。労災は、誰にでも起こります。通勤中の事故など、これこそ不可抗力と言えることに対して、お見舞いの言葉だけでなくお金が支給されるのですから、費用も安くて素晴らしいシステムです。

 

ただし、経営者は入れないので要注意。最近では、経営者も労災に入れるという逆保険が登場していますが、加入するのに手数料が必要で、全スタッフ数分の年会費も取られるために入っている人は少ないようです。

火災保険で、災害時の医療機器の損害をカバー

●火災保険

 

医院の機器は高い物が多いです。近年は自然災害も増えていますし、運が悪ければ隣のビルの火災で消火の水をかぶる、なんてこともあるかもしれません。気をつけたいのは、機械を安く見積もって保険料をけちった場合。もし、2000万円の機械ですと申告していたのに、保険会社が調べて、時価が2000万以上あった場合は、半額の1000万円までしか保証されません(一部保険と見なされる)。壊れたら買い替えできないような高い機械は、ちゃんと申告をして保険料を払っておいたほうがいいと思います。減価償却といって、機械の価値は毎年下がりますが時価ではなく新価で保障してくれるかどうか、また最近は掛け金の限度額まで出ることもあるので商品の内容は保険屋さんに確認して下さい。

 

●電子カルテの保険

 

あまりの暑さに電子カルテのサーバーがダウンして診療ができなくなった。水害でパソコンが水に浸かってデータがダメになった。パソコンは保険で買い替えできますが、残念ながら災害による休業補償はなく、データ損失も今のところ保険では補償されていません。

 

停電時にサーバーコンピューターがシャットダウンするまでの間は電源を供給する「無停電装置」というものがありますが、これもわずか10分ほどで切れてしまいます。今のところ自己防衛するしかありません。年に一度くらいハードディスクにデータのバックアップを取っておきましょう。またクラウド型カルテであれば自院の被害は問題ないですが、ネット回線が切れたり、元のデータがやられたら? 恐いですね。

 

変わったところでは、カルテから個人情報が抜き出されたことに対する賠償保険というのも登場しています。個人的には電子カルテの事故を補償する保険を切望します。

 

 

中内 一揚

中内眼科クリニック 院長


1971年 大阪市生まれ。幼少期は富田林市で自然に触れて過ごす。
1990年 大阪星光学院中学高等学校卒業、神戸大学医学部入学。
1996年 大阪大学医学部付属病院眼科入局。
大阪労災病院、松山赤十字病院、大阪鉄道病院勤務を経て、眼科専門医取得。大阪大学医学部大学院感覚機能形成学に入学し人工網膜の研究で博士号取得。大阪警察病院にて、形成外科の勉強を始め、聖隷浜松病院眼形成眼窩外科に国内留学。その後シンガポールナショナルアイセンターに留学。
2009年 帰国、兵庫医科大学病院眼科にて眼形成外来を開始。
2016年4月 中内眼科クリニック開設。
2017年4月 兵庫医科大学非常勤講師退任

著者紹介

連載新米開業医のための「つぶれないクリニック」運営の超基本

つぶれないクリニック

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中内 一揚

兵田印刷工芸 出版部

大学附属病院勤務から開業に成功した医師が実践してきた「クリニック運営のコツ」が満載! オンリーワンの医院になる方法/患者に信頼されるコツ/スタッフのやる気を引き出す/セーフティネットをはろう… 病院経営をス…

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