開業医を窮地から救う「代診医師・メンター・医師会」の力

休めない、一人で判断できない、アドバイスがほしい…。今回は、開業医が陥りがちな危機的状況から脱するための「他力」活用術を見ていきます。※本連載は、中内眼科クリニック院長・中内一揚氏の著書である『つぶれないクリニック』(兵田印刷工芸株式会社出版部)より一部を抜粋し、開業医をめざす医師に向け、「つぶれないクリニック」経営の方法を紹介します。

代診の医師がいれば、院長も心身を休めることができる

代診の良い先生を見つけることはなかなか難しいものです(連載第2回『増える患者、疲弊する院長…二診制・代診の実現が難しい理由』参照)。しかし、いくつもの眼科医院を展開されている先生にお聞きすると、「一人でやっていくよりも、チームでやったほうが楽しいし、安心もする」という答えが返ってきました。

 

通常は、開業して一人だけで外来をされている先生が多いと思います。いろいろと理由はあるでしょう。

 

①雇う余裕なんかない(金銭的、精神的に)

②他の先生と一緒に仕事なんてできるか、何を言われるか分かったもんじゃない。

③代診の先生の技術が不安だ。

④代診の先生のほうが人気が出たらどうしよう・・・。

 

など。

 

ただ、一人院長は、毎日同じ仕事の繰り返しです。他の職員は交代で休めるのに、自分だけは絶対に医院に居続けないといけない重圧。それでも元気な顔をしてやってかないといけない。院長という仕事は我慢の連続です。

 

ここでシミュレーション。代診の先生をアルバイトで一コマ雇ってみたらどうでしょう?最初のうちは、その先生の患者さんは少ないでしょう。自分の体を休めるためにお金を払って時間を買ったという風に思うでしょう。勿体ないと思うかも。でもそれだけではないのです。カルテの使いやすさ、検査の動線、受付・待合の感じなど、自分はいいと思っていても、他人の目線でみたら良くないかもしれない。いろいろと他人目線で気にしてもらって、フィードバックしてもらうことができれば、勉強料と思えるでしょう。

 

また、人間はすべての人とウマが合う訳ではありません。患者さんが100人いたら、こちらが気を遣っても何かしっくりこない人が2、3人はいるでしょう。しかし、意外と他の先生に診てもらうとパチンとはまったりするものです。そういう患者さんはその先生にお任せして、院長は自分で自分の道を切り開けばいいのです。

 

近ごろ流行りのセカンドオピニオンという手も使えます。人間は1回の説明で納得するときもありますが、それではダメで、他の人の意見も聞き、自分の中の意見と合わせて考えて、ようやく納得することもあります。他の医院に行ってもらうこともできますが、医院にもう1人先生を置いて、その先生に診てもらうということは、立派なセカンドオピニオンになると思います。

 

さらにスタッフと医師との距離感も、先生によって変わるので、いつも院長と一緒だとなあなあになってしまう関係が、リフレッシュできるという利点もあります。

 

当院では、週に一コマ元気に働いている元院長と、継承前から雇われている先生の2人に来てもらっているのですが、とても良い感じで回っています。古い医院だと、その先生のファンという患者さんはたくさんいるので、病気を治すというよりは、先生に会って世間話をして、変わりがないか診てもらうという人が多いようです。

 

昔から3人いれば文殊の知恵といいますが、一人では解決できないことでも、それぞれの人の経験や関係者のつてなどを使えば、助かるときも多いと思います。

 

[図表] イラスト:竹田明日香
イラスト:竹田明日香

「自分で手術するか、他院に送るか」の見極めを

開業医では、通常は自分の手に負えない難しい手術をする必要はありません。もちろん、医師的な興味心や義務心から手術をしたくなるのは分かります。ただし、それをした場合にどうなるか分からないという症例を切るのは、やめておいたほうがいいと思います。

 

手術とは受ける側からしたら、上手くいくのが当たり前で、上手くいかなかった場合までは想定していません。上手くいっても、文句が出ることがある案件なので、「上手くいかなかったら、その時に紹介すればいいか」というスタンスでは、ちょっと緩すぎるのです。かつ、上手くいかなかった時に、二回目の手術をするのは難しいですから、一回目は自分でできるけれど、再発のことを考えて最初から送っておく、というような判断をすることも大事です。

 

しかし、手術を受ける患者さんの数というのは、バッティングセンターのボールのようなもので、くさいボールを見逃してど真ん中のボールだけを振って打ち返していたら、足元にボールがたまってしまって、投げられてくるボールはどんどん減ってきます。ストライクゾーンギリギリは振って、なんとか打ち返しておくほうが数は保てます。手術をしてはいけない症例と、手術をしてもいい症例の見極めがとても大事になるのです。かなりの選球眼が必要です。

 

ただ、安心した生活が望みであれば、数は少なくとも、どストライクを振っておくのがいいとは思います。経験的には、直近でした手術の出来栄えなどで、次の手術をいれるかどうかのハードルが上下するので、その日の気分にも左右されるという気がします。

困ったときに相談できる「師匠」を持つ

メンターとは、「師匠」という意味で使われる、腕のいい医師のことです。なかなかそこまで卓越した技術、知識を持つ先生は少ないのですが、一人、二人は困ったときに相談(紹介)できる先生を持ちましょう。

 

手術は、人間の体を切る作業です。どんなに簡単なオペでも、想像していたよりも難しくなるときがあります。また、手技的には完璧でも、仕上がりに納得が得られない時もあります。患者さんに事前に全てのことを説明することは不可能です。起こりやすい合併症などを説明し、承諾書にやや詳しめに書いておくことしかできません。例えるならば、小学生に上がる子供は勉強のために学校に行かせるのに、いじめられて不登校になったり、交通事故にあったりする可能性はゼロではありませんが、そのような不確定要素を事前にすべて説明するのは無理だという話になるでしょうか。

 

しかし、手術では想定外のこと、あるいは想定内でも自分で乗り越えることが難しいことは起こりえます。その時に、気軽に相談できる信頼できる先生が必要なのです。大学病院でも、個人の先生でも構いません。紹介先を確保して下さい。そうでなくては、開業医は手術をしてはいけません。患者さんとの距離が近く、よりフレンドリーな、家族のような関係になります。やりっぱなしには決してできません。

 

逆にメンターのトップである、最終病院と言われる地域最高の病院で手術する先生や、手術の最高評価を得ている先生達はどのような気持ちで手術をされているのでしょうか、頭が下がります。

相談相手を見つけるために、医師会を活用

医師は孤独なものです。ちょっと分からないときに、誰に聞くか。何でも聞ける友人や親戚の医師がいる人は幸せです。ただし、彼らが自分にとって必要な解答を持っているとは限りません。開業医の周りで起こる疑問や不安は、同科の先輩の医師に聞いたほうが解決することが多いです。そこを仲介してくれるのが医師会の役割と考えて下さい。

 

普段から簡単な質問(インフルエンザの予防注射って、どうやって始めるのでしたか? レベル)をちょくちょく聞くようにしておけば、いざ重要な案件(クレーマー対応や医療事故など)が持ち上がったときにも、どうすればいいのか気軽に聞くことができます。医師会の敷居が高いと思われる方は、保険医協会というお助けマン的な組織もあります。

 

 

中内 一揚

中内眼科クリニック 院長


1971年 大阪市生まれ。幼少期は富田林市で自然に触れて過ごす。
1990年 大阪星光学院中学高等学校卒業、神戸大学医学部入学。
1996年 大阪大学医学部付属病院眼科入局。
大阪労災病院、松山赤十字病院、大阪鉄道病院勤務を経て、眼科専門医取得。大阪大学医学部大学院感覚機能形成学に入学し人工網膜の研究で博士号取得。大阪警察病院にて、形成外科の勉強を始め、聖隷浜松病院眼形成眼窩外科に国内留学。その後シンガポールナショナルアイセンターに留学。
2009年 帰国、兵庫医科大学病院眼科にて眼形成外来を開始。
2016年4月 中内眼科クリニック開設。
2017年4月 兵庫医科大学非常勤講師退任

著者紹介

連載新米開業医のための「つぶれないクリニック」運営の超基本

つぶれないクリニック

つぶれないクリニック

中内 一揚

兵田印刷工芸 出版部

大学附属病院勤務から開業に成功した医師が実践してきた「クリニック運営のコツ」が満載! オンリーワンの医院になる方法/患者に信頼されるコツ/スタッフのやる気を引き出す/セーフティネットをはろう… 病院経営をス…

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