油断すると貯蓄ゼロ⁉ 開業医の金銭管理が難しい理由

今回は、医院経営に関するお金の動きについて見ていきます。※本連載は、中内眼科クリニック院長・中内一揚氏の著書である『つぶれないクリニック』(兵田印刷工芸 出版部)より一部を抜粋し、開業医をめざす医師に向けて実践的な経営方法や体験談を紹介します。

気持ちに余裕を持つためにも、開業資金は多めに借りる

医院の経営にはアイデアが必要です。成功しているときには、どんどん前へ前へ。サッカーのボールを奪ってカウンターアタックのような動きが必要ですし、それが可能なシステムを作りあげるように努力しないといけません。

 

でもアイデアなんてそう簡単には出ませんよね。まじめにコツコツやる。それだけでも前進です。必ず上向いてきます。通常は小さな投資(10~100万円)で始められることがほとんどです。忙しくなってきたら受付さんを増やす、検査員をバイトで増員する、回転のいい商品(サプリなど)を多めに入荷するなどです。そのうちにパッとひらめく瞬間があります。その感覚を大事にして下さい。

 

ただ、大きな投資(100~1000万円)となると、それが一過性のブームなのか、それとも今後も流れに乗っていくのか見極めないといけません。医院にとっての少し大きな投資とは、パートさんから常勤雇いに変える、新しい機械の購入、フロアを改装する。さらに大きな投資(1000万円~)になると、診察ブースを増やす、医師を雇って複診制にする、医院を移築・新築するなどでしょうか。そして最後は分院化、病院化でしょう。もう手放しでも運転できる、宣伝はあまり頑張らなくても患者さんが目標数来てくれる、というタイミングになったときでも、常に次にどうしたいのか考えないといけません。

 

アイデアを練るためには気持ちに余裕がないといけません。医院のプール金は1000万円くらいあったほうが、大らかな気持ちになれます。開業資金は多めに借りておきましょう。

開業医は「自分の稼ぎの詳細」が分かりにくい

サラリーマンは自分の給料がどのくらいか知っています。勤務医の皆さんのもとにも毎月給与明細が送られてくるでしょう。それをみて、今月はどのくらい使っても大丈夫という判断をしていると思います。もちろん、たくさんの病院・医院をかけもちでバイトしている場合、総額がわからなくなっている人もいますが、それでもだいたい月にこれくらいはもらっているという感覚はあるでしょう。

 

しかし、雇用する側になると、その感覚は希薄になります。自分の給与明細は作らなくてよい(作れない)ので、従業員の給与は把握していても、自分がいくら稼いでいるのか、本当にざっくりとしか分からなくなるのです。簡単に言えば儲けは、医院の1ヶ月の総売上から、従業員給与と経費を引いたものですが、実感が湧きません。

 

その理由について医院のお金の流れを紹介してみます。

 

開業すると毎月月末締めで、その翌月10日までに1ヶ月分のレセプトを請求します。請求先は国民健康保険(国保)と社会健康保険(社保)の2ヶ所です。これは医院の窓口で患者さんから受け取った以外の診療報酬を受け取るのに必ず必要な作業です。

 

例えば、高齢者で窓口負担が1割の保険証を持っている場合、医療費が1万円かかると、会計では1000円をいただいて、残りの9000円を2ヶ月後に国あるいは保険組合から受け取るということになりますが、保険割合によってレジに入ってくる金額が異なります。売り上げはレセプトコンピュータの中の数字で分かりますが、返戻されると削られることがあります。すぐに手元に入ってくる現金と、実際にもらえる総額との間に時間的なズレがあるので、自分の給料というものが怪しくなるのです。

 

なので頭を切り替えて、自分は国からお金をもらえる公務員でもあるけれど、日雇いのバイトもしているのだと考えるのが良いです。では、これらをどのように管理していけば良いでしょうか。

「貯蓄口座・支払口座」の二つを用意して財政管理を

国保や社保からいただく保険収入の明細書は2ヶ月遅れで届きますが、そのお金は開院前に借金をした銀行の口座に振り込むように指定されていることがほとんどです。これがマザータンクとなります。これは、大きな出金をすることに使う口座です。

 

日々患者さんからいただく診療報酬の一部(1割~3割が多い)と自費診療で得た収入は、医院用の口座に貯めていきます。しょっちゅう行く必要があるので医院近くの銀行が良いでしょう。その通帳は、会社の経理簿と同じような働きをするので、あまり頻繁に出し入れすると、経理簿としての意味が失われてしまいます。

 

ですから、従業員の給与支払いなどに使う支払口座も別に持っておきましょう。振込手数料の節約のため、従業員の大半が口座を開いている銀行にします。その口座を、電子カルテ保守料、ホームページ管理料、セコムなどの保安料、薬問屋、機械屋の引き落としなど、医院経費の引き落としに使うのです。さらに自分の家計用の口座はまた別に持っておきます。クレジットカード引き落としや、電気代、水道代、こどもの教育費などの生活口座です。

 

まとめると、自分の口座でも大きなお金を動かす貯蓄口座と、小さなお金を動かす支払口座の二つを用意して、大きな口座から小さな口座に必要資金を毎月動かしていくというのが、財政の柱となります。生活口座に動かす分が自分の給料のイメージですが、いくら動かしたら良いのかよく分からないというのが、最初の一年くらい続きます。さすがに二年目からは、いくら診療報酬があれば、だいたいこのくらい給料をもらっているのと同じだなと感覚で分かるようになるのですが、日銭が貯まるからといって、自分が金持ちなんだと錯覚してどんどん使っていると、実は貯蓄は0だったということもあるのです。注意しましょう。稼いだ分は、きっちりと税金で持っていかれるのがこの国の仕組みです。4月末に税金を払ってなお、残っている残高をみてようやく一安心して下さい。その後も、矢継ぎ早に予定納税があり、目が点になります。

 

さて、4月から半年くらい仕事をした秋口の9月くらいに税理士・会計士に頼んで、納税額の予想をたててもらいます。あまり多くの住民税が発生しそうな場合は、ふるさと納税などを活用すべきだと思います。さらに、経費あるいは控除で認められる出費や貯蓄をするのが、最善の使い方です。例えば中小企業年金は毎月7万円まで、医師国民年金基金や確定拠出年金は合わせて月68000円までかけることができます。他にも貯蓄型の生命保険で積立てを行うのが良い方法です。定期預金も利率は低いですが、月に15万円くらいのものを3年積み立てると500万円位になるので、いざというときの味方になります。

 

ちなみに眼科の場合は、コンタクトレンズ会社を立ち上げて、コンタクトレンズの販売・売り上げに関しては、そちらの会社の通帳で管理することになります(最近は、地方によってコンタクトレンズの扱い方が違ってきています。お住いの地域の眼科医会の方針を参考下さい)。これは、名義も会社名ですので、会社の財政を管理する経理簿になりますから、手元にあっても、自由に出し入れすることのできない近くて遠い存在になります(医療法人もこれに近い)。

 

 

中内 一揚

中内眼科クリニック 院長


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1971年 大阪市生まれ。幼少期は富田林市で自然に触れて過ごす。
1990年 大阪星光学院中学高等学校卒業、神戸大学医学部入学。
1996年 大阪大学医学部付属病院眼科入局。
大阪労災病院、松山赤十字病院、大阪鉄道病院勤務を経て、眼科専門医取得。大阪大学医学部大学院感覚機能形成学に入学し人工網膜の研究で博士号取得。大阪警察病院にて、形成外科の勉強を始め、聖隷浜松病院眼形成眼窩外科に国内留学。その後シンガポールナショナルアイセンターに留学。
2009年 帰国、兵庫医科大学病院眼科にて眼形成外来を開始。
2016年4月 中内眼科クリニック開設。
2017年4月 兵庫医科大学非常勤講師退任

著者紹介

連載新米開業医のための「つぶれないクリニック」運営の超基本

つぶれないクリニック

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中内 一揚

兵田印刷工芸 出版部

大学附属病院勤務から開業に成功した医師が実践してきた「クリニック運営のコツ」が満載! オンリーワンの医院になる方法/患者に信頼されるコツ/スタッフのやる気を引き出す/セーフティネットをはろう… 病院経営をス…

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